フィリピン主要人物名鑑・政治(2026年8月版)
0. この資料の読み方(先に読んでください)
フィリピン政治は2025〜2026年に人事が異常な速度で入れ替わった。上院議長は約1年で4人、下院議長は交代、財務長官・大統領府長官・環境長官・エネルギー長官・運輸長官・予算管理長官がすべて交代している。2024年以前に書かれた日本語記事の人名リストは、ほぼ全て使えないと考えたほうがよい。
注 本資料の役職・日付の多くは英語版Wikipediaの各項目(2026年6〜8月更新分)を照合して構成し、直近の裁判動向は Philstar.com(フィリピン・スター紙電子版、2026年8月24日付一覧)で補った。世論調査の数値は Pulse Asia / SWS / OCTA Research の各社発表を二次的にまとめたものであり、一次資料の原票そのものは未確認である。個別の投資判断・法的判断に使う場合は官報(Official Gazette)や各省庁サイトで再確認すること。
注 「暫定(acting)」「ad interim(暫定任命)」の肩書が非常に多い。フィリピンでは大統領が議会休会中に任命した閣僚は Commission on Appointments(任命委員会)の承認を得るまで正式ではない。承認前に事実上の長官として執務するのは合法だが、肩書が「acting」「ad interim」のままの人物はいつ交代してもおかしくない。
1. 2026年8月の政治地図:3行で
| 論点 | 状況 |
|---|---|
| マルコス vs ドゥテルテ | 2022年の「統一チケット」は完全に崩壊。両家は司法の場で全面対決中 |
| 洪水対策事業汚職 | 2025年夏に噴出。上院議長・下院議長を失脚させ、現職上院議員2名が勾留中 |
| 2028年大統領選 | サラ・ドゥテルテ副大統領が2026年2月18日に立候補を表明済み。ただし弾劾裁判の結果次第で失格 |
2. 大統領府:マルコス一族
2-1. フェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領(Ferdinand "Bongbong" Marcos Jr.)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年月日 | 1957年9月13日(68歳) |
| 在任 | 2022年6月30日〜2028年6月30日(フィリピン大統領は1期6年・再選禁止) |
| 政党 | Partido Federal ng Pilipinas(PFP、連邦党) |
| 配偶者 | ルイーズ「リザ」アラネタ・マルコス(Louise "Liza" Araneta-Marcos、弁護士) |
| 主要政策 | 「Build Better More」インフラ計画、新農地解放法、Maharlika Investment Fund |
| 外交 | 前政権の対中傾斜から米国同盟重視へ転換 |
支持率(2026年、各社発表)— 注 調査会社によって数値が大きく食い違うので、単独の数字を引用しないこと。
| 調査 | 時期 | 支持 | 不支持 | 純支持 |
|---|---|---|---|---|
| Pulse Asia | 2026年6月 | 29% | 50% | ▲21 |
| SWS(Social Weather Stations) | 2026年6月 | 38% | 45% | ▲7 |
| OCTA Research | 2026年3月 | 55% | 26% | +29 |
| Pulse Asia | 2025年12月 | 34% | 48% | ▲14 |
注 OCTA と Pulse Asia の乖離(同年で最大26ポイント)は設問文・サンプル設計の違いによるとされる。「フィリピン大統領の支持率は◯%」と一つの数字で断定する日本語記事は疑ってよい。
注 (2026-08-25 相互照合で追記)SWS の数字は「支持(satisfaction/approval)」と「信頼(trust)」の2系統があり、同じ時期でも値が違う。 同クラスタ「汚職とガバナンス」資料 3-5節は SWS 2026年第2四半期=マルコス大統領の信頼度 34%(サラ・ドゥテルテ副大統領は 57%) と記録しており、上表の SWS 2026年6月=支持38% と 4ポイント食い違って見える。これは矛盾ではなく別指標(trust rating ≠ satisfaction rating/集計期間も四半期と月次で異なる)である。注 どちらか一方を消さず、必ず「支持率」か「信頼度」かを明記して引用すること。 出典:本稿=Pulse Asia/SWS/OCTA 各社発表の二次まとめ、「汚職とガバナンス」資料 3-5節=SWS 2026年第2四半期。
あわせて押さえるべき点:同じ SWS 2026年第2四半期で、副大統領サラ・ドゥテルテの信頼度57%はマルコス大統領の34%を大きく上回る。弾劾裁判の政治的コストを読むうえで重要な非対称である。
2-2. マルコス一族の現職ポジション
| 人物 | 続柄 | 2026年8月時点の役職 | 注記 |
|---|---|---|---|
| サンドロ・マルコス(Ferdinand Alexander "Sandro" Marcos) | 大統領の長男(1994年生) | 下院多数派院内総務(2025年7月28日〜)/北イロコス州第1区選出 | 注 2025年11月、元下院歳出委員長ザルディ・コーから「2023〜25年度予算に総額500億ペソ超の挿入を行った」と名指しされ、オンブズマンが調査対象とした |
| イメー・マルコス上院議員(Imee Marcos) | 大統領の実姉 | 上院議員(2025年再選、12位)/上院副少数派院内総務(2026年7月29日〜) | 弟と決裂。2025年3月26日に与党上院候補者名簿から離脱し、ドゥテルテ陣営「DuterTen」のゲスト候補として当選 |
| ヴィニー・マルコス(Vincent Marcos) | 大統領の三男 | 公職なし | — |
| マーティン・ロムアルデス(Martin Romualdez) | 大統領の従兄 | レイテ州第1区下院議員(2025年再選) | 2025年9月17日に下院議長を辞任。注 訴追の段階について資料間で記述が食い違う(2026-08-25 相互照合で両論併記):①英語版Wikipedia「Martin Romualdez」="In July 2026, the Office of the Ombudsman said that it was filing plunder charges"(2026年7月、オンブズマンが「中心人物」として plunder=不正蓄財罪を提起すると表明)/②「汚職とガバナンス」資料 3-4節=「2026年7月20日にオンブズマン調査が本人を『中心人物』と認定(Rappler)、7月24日に予備調査開始を要請、2026年8月20日時点で本人は訴え却下を申し立てており、正式起訴には至っていない」。「起訴された」と断定せず、「plunder での訴追手続が進行中」と書くのが安全 |
注 「マルコス一族=一枚岩」という前提が2026年には成立しない。 姉イメーはドゥテルテ側、従兄ロムアルデスは訴追対象、長男サンドロも調査対象、という状態である。
3. サラ・ドゥテルテ副大統領と弾劾裁判
3-1. 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | サラ・ドゥテルテ=カルピオ(Sara Duterte-Carpio) |
| 役職 | 第15代副大統領(2022年6月30日〜) |
| 政党 | Hugpong ng Pagbabago(HNP、「変革の団結」)党首 |
| 前職 | 教育長官(兼任、2022年〜2024年6月19日辞任、後任ソニー・アンガラ) |
| 2028年 | 2026年2月18日、大統領選への立候補を表明 |
注 フィリピンでは正副大統領は別々に直接選挙される。したがって「副大統領=大統領の後継者・部下」ではない。サラ・ドゥテルテは大統領の政敵である。
3-2. 2度の弾劾 — 時系列
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年2月5日 | 下院が215名(定数の約70%)の署名で弾劾(フィリピン初の現職副大統領の弾劾) |
| 2025年6月10日 | 上院が弾劾条項を下院へ差し戻し |
| 2025年7月25日 | 最高裁が13対2で「第4弾劾訴状は違憲」と判断。「1年に1件」ルール(one-year bar rule)により2026年2月6日まで新規弾劾を禁止。ただし最高裁は「嫌疑を晴らすものではない」と明言 |
| 2025年8月6日 | 上院が19対4で弾劾条項の記録保管(archive)を議決、第1次裁判は終了 |
| 2026年2月2〜18日 | 禁止期間明けと同時に4件の弾劾訴状が提出、2月23日に下院法務委員会へ付託 |
| 2026年4月29日 | 委員会が53対0で相当な理由(probable cause)ありと議決 |
| 2026年5月11日 | 下院本会議が257対25(棄権9、欠席27)で弾劾訴追を可決。同一人物が2度弾劾された初の事例 |
| 2026年5月18日 | 上院が弾劾裁判所(impeachment court)として招集 |
| 2026年7月6日 | 上院弾劾裁判が開廷 |
| 2026年8月24日 | 公判継続中(出席上院議員は17名にとどまる) |
3-3. 裁判の構造 — 数字を押さえる
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 訴因 | ①公的信任への背信 ②憲法違反 ③汚職 ④収賄(計4条) |
| 争点 | 副大統領府(OVP)および教育省の機密費(confidential funds)の流用、不正蓄財、マルコス大統領夫妻とロムアルデス前議長への「暗殺」発言 |
| 有罪要件 | 上院議員24名のうち16名(3分の2)以上の有罪票 |
| 裁判長(presiding officer) | フランシス・エスクデロ上院議員(Francis "Chiz" Escudero)。注 上院議長ではない。2026年6月3日の上院規則改正で「上院議長以外の上院議員を過半数の議決で裁判長に選出できる」ことが定められ、開廷初日の2026年7月6日に12対8の投票でエスクデロが選出された(2026-08-25 相互照合で補完。旧記載は「初日に多数決で選出」のみで6月3日の規則改正が欠落、「司法制度と法体系」資料は逆に規則改正のみで初日の投票が欠落していた。両者は矛盾ではなく相互補完の関係。出典:英語版Wikipedia「Impeachment trial of Sara Duterte」=規則は2026年6月3日に改正され上院議長以外を過半数で選出可能に、2026年7月6日に12対8でエスクデロを選出) |
| 訴追側 | 下院議員11名+民間弁護士15名。首席はガービル・ルイストロ下院議員(Gerville Luistro) |
| 弁護側 | 弁護士16名。首席はシーラ・シソン(Sheila Sison、Fortun Narvasa & Salazar 法律事務所) |
注 定足数リスクが最大の変数。 上院議員24名のうち、1名(ジンゴイ・エストラーダ)が拘置所収監、1名(ロダンテ・マルコレータ)が拘置所収監、1名(ロナルド・デラロサ)がICC逮捕状で逃亡中——という状況で「24名中16名」を集める必要がある。分母は減らないため、実質的なハードルは極めて高い。
注 有罪の場合の効果は「罷免+公職就任の永久的欠格」であり、これが確定すれば2028年大統領選への出馬は封じられる。無罪または不成立なら出馬は維持される。2026年8月25日時点で結論は出ていない。
4. ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領とICC
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 氏名 | ロドリゴ・ロア・ドゥテルテ(Rodrigo Roa Duterte)、1945年生 |
| 在任 | 大統領 2016年6月30日〜2022年6月30日 |
| 2025年3月11日 | マニラ空港で逮捕、ハーグへ移送。フィリピン大統領経験者として初の国際法廷、アジアの元首脳として初のICC出廷 |
| 現況 | オランダ・ハーグの国連拘置施設(UN Detention Unit)に勾留 |
| 訴因 | 「麻薬戦争」に関連する殺人=人道に対する罪 |
| 手続の進行 | 2025年7月4日に検察が人道に対する罪3件・少なくとも殺人76件で正式訴追 → 2026年2月23〜27日 確認審理 → 2026年4月23日、予審裁判部第Iが全訴因を全員一致で確認し本裁判へ付託(2026-08-25 相互照合で追記。出典:「軍・警察と治安機構」資料 5-2節) |
| 公判開始予定 | 2026年11月30日(ICC発表ベース) |
| 2025年地方選 | 勾留中のままダバオ市長に再選。注 ただし6か月以内に宣誓しなかったため地方自治法上失格となり就任せず |
| ダバオ市長 | 三男セバスチャン「バステ」ドゥテルテ(Sebastian Duterte)が務める |
2026年2月13日、ICC は同事件で8名を「間接正犯(indirect co-perpetrators)」として名指しした。その中にボン・ゴー上院議員が含まれる(本人は全面否認)。
ロナルド「バト」デラロサ上院議員(Ronald "Bato" dela Rosa、元国家警察長官)については、ICC が 2025年11月6日に非公開の逮捕状を発付、2026年5月11日に公開。2025年11月から約6か月間所在を隠し、2026年5月11日に上院議長解任投票のためだけに姿を現し、NBI(国家捜査局)との対峙を経て5月14日に上院から離脱。2026年8月現在も逃亡中。
5. 内閣の主要閣僚(2026年8月25日時点)
| 省庁 | 長官(英語表記) | 就任 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 大統領府長官(Executive Secretary) | ラルフ・レクト(Ralph Recto) | 2025年11月17日 | 前財務長官。妻は女優・政治家のビルマ・サントス(Vilma Santos)。祖父はクラロ・M・レクト |
| 財務(DOF) | フレデリック・ゴー(Frederick Go) | 2025年11月17日(ad interim) | Robinsons Land 元CEO、ゴコンウェイ(Gokongwei)財閥出身。注 任命委員会の承認は2026年7月時点で未了 |
| 予算管理(DBM) | キム・ロバート・デレオン(Kim Robert de Leon) | 2026年5月19日(ad interim) | 注 前任アメナ・パンガンダマン(2022年6月30日〜2025年11月17日)→ローランド・トレド代行(〜2026年5月19日)。DBM公式サイトは長官名を明示しておらず、要再確認 |
| 外務(DFA) | マリア・テレサ「テス」P・ラザロ(Ma. Theresa "Tess" P. Lazaro) | 2025年7月1日 | 職業外交官。前任エンリケ・マナロ(2022年7月1日〜2025年7月1日)。(2026-08-25 相互照合で表記修正。旧記載「テレシタ/Theresa」は誤り。正式表記は Ma. Theresa。出典:英語版Wikipedia「Secretary of Foreign Affairs (Philippines)」/「外交関係の各論」資料も Ma. Theresa 表記。注 生年1959年は本稿では裏が取れないため削除=未確認) |
| 国防(DND) | ギルバート「ギボ」テオドロ(Gilberto "Gibo" Teodoro Jr.) | 2023年6月5日 | 1989年司法試験首席、ハーバードLL.M.。2007〜09年にも国防長官。南シナ海で対中強硬。2026年6月11日、中国が本人と家族に制裁・入国禁止(2026-08-25 相互照合で日付を補完。出典:「軍事・防衛」「外交関係の各論」両資料) |
| エネルギー(DOE) | シャロン・ガリン(Sharon Garin) | 2025年5月23日代行→7月10日正式 | 弁護士・会計士。イロイロの政治一族出身。原発の商業運転を2032年目標と表明(IAEA総会) |
| 環境天然資源(DENR) | ファン・ミゲル・クナ(Juan Miguel T. Cuna、CESO I) | 2026年2月27日(acting) | 注 前任は①トニ・ユロ=ロイサガ(2022年7月12日〜2025年5月22日)②ラファエル・ロティーヤ(2025年5月23日〜2026年2月27日、暫定) |
| 農業(DA) | フランシスコ・ティウ・ラウレル・ジュニア(Francisco Tiu Laurel Jr.) | 2023年11月3日 | Frabelle Fishing 創業家。2022年マルコス選挙戦の最大献金者(3,000万ペソ)。2025年5月の内閣総辞職後も留任 |
| 運輸(DOTr) | ジョバンニ・Z・ロペス(Giovanni Z. Lopez、1980年生) | 2025年9月1日(acting) | 注 前任①ハイメ・バウティスタ(2022年6月30日〜2025年2月21日)②ビンス・ディソン(2025年2月21日〜8月31日) |
| 貿易産業(DTI) | クリスティーナ・アルデゲル=ロケ(Cristina Aldeguer-Roque) | 2024年8月3日(2024年11月28日承認) | アパレル「Kamiseta」創業者。注 2025年11月「500ペソでノーチェブエナ(クリスマス晩餐)が可能」発言で批判 |
| 公共事業道路(DPWH) | ビンス・ディソン(Vince Dizon) | 2025年9月1日(ad interim) | 洪水対策汚職の「掃除役」。全DPWH幹部に辞表提出を指示、地方予算事業の入札を一時停止、不正業者を恒久ブラックリスト化 |
| 内務自治(DILG) | ジョンビック・レムーヤ(Jonvic Remulla) | 2024年10月8日 | オンブズマンのレムーヤ氏の実弟 |
| 経済計画開発(DEPDev) | アルセニオ・バリサカン(Arsenio Balisacan) | 2022年〜 | 注 2025年4月10日にNEDAが「経済計画開発省(DEPDev)」へ改組。「NEDA長官」という古い呼称は現在は不正確 |
| 司法(DOJ) | フレデリック・A・ビダ(Fredderick A. Vida、長官代行 acting) | 2025年10月10日〜 | J.C.レムーヤの2025年10月オンブズマン就任に伴う空席(2026-08-25 相互照合で補完。出典:「司法制度と法体系」資料の記載=「Fredderick Vida 長官代行(2025年10月10日〜)」) |
注 内閣の名簿は日本語ソースの陳腐化が激しい。 特に「財務長官=ラルフ・レクト」「NEDA長官=バリサカン」「エネルギー長官=ロティーヤ」「教育長官=サラ・ドゥテルテ」はすべて古い情報である。
6. 立法府:上院と下院
6-1. 上院議長の交代(2025〜2026年に4人)
| 代 | 氏名 | 政党 | 在任 |
|---|---|---|---|
| 31 | フランシス「チズ」エスクデロ(Francis Escudero) | NPC | 2024年5月20日〜2025年9月8日(2025年7月28日に第20議会で再選されたが、9月8日に解任)(2026-08-25 相互照合で修正。旧記載「2025年7月28日〜」は第20議会での再選日であって就任日ではない。出典:英語版Wikipedia「List of presidents of the Senate of the Philippines」「Francis Escudero」="31st President of the Senate, May 20, 2024 – September 8, 2025") |
| 32 | ビセンテ「ティト」ソット3世(Tito Sotto) | NPC | 2025年9月8日〜2026年5月11日 |
| 33 | アラン・ピーター・カエタノ(Alan Peter Cayetano) | 無所属 | 2026年5月11日〜6月3日(在任23日=史上2番目の短さ)。注 6月3日〜17日は議長ポスト自体が空位で、ガチャリアンが President Pro Tempore として職務代行(2026-08-25 相互照合で追記。出典:英語版Wikipedia「Sherwin Gatchalian」="the post remained vacant, with Gatchalian taking over the position in an acting capacity")。「汚職とガバナンス」資料が「カエタノ→(6月17日)ガチャリアン」と書くのはこの空位期間を省略した簡略表記 |
| 34(現職) | シャーウィン・ガチャリアン(Sherwin Gatchalian) | NPC | 2026年6月17日〜(6月3日から議長代行) |
ガチャリアン議長:1974年4月6日生、ボストン大学(財務・オペレーション管理)卒。バレンズエラ市長(2004〜2013年)、同市第1区下院議員を経て2016年に上院入り。財政委員長・歳入委員長・基礎教育委員長を歴任。2026年6月3日に上院議長代行(President Pro Tempore)に就任後、対抗馬が譲歩して6月17日に正式選出。 ソット元議長は現在 President Pro Tempore(上院議長代行職)、カエタノ元議長は 少数派院内総務(Minority Leader、2026年6月17日〜)、イメー・マルコスが副少数派院内総務。
6-2. 下院
| 役職 | 氏名 | 政党 | 就任 |
|---|---|---|---|
| 議長(第29代) | ファウスティノ「ボジー」ディ3世(Faustino "Bojie" Dy III) | PFP | 2025年9月17日(無投票、253票) |
| 多数派院内総務 | サンドロ・マルコス | PFP | 2025年7月28日 |
| 上級副議長 | フェルディナンド・エルナンデス | PFP | 2025年11月19日 |
| 少数派院内総務 | マルセリーノ・リバナン(4Ps政党リスト) | — | 2022年7月25日 |
ディ議長:1961年8月31日生、イサベラ州の政治一族出身。カウアヤン市長(1992〜2001年)、イサベラ州第3区下院議員(2001〜2010年)、イサベラ州知事(2010〜2019年)、副知事(〜2025年)を経て現在は同州第6区選出。息子イノがエチャゲ市長、息子フランシス(キコ)がイサベラ州副知事。 第20議会下院の勢力:定数318(小選挙区254+政党名簿64)のうち与党連合286議席(Lakas 75、NUP 53、PFP 52、政党リスト45、NPC 34、Nacionalista 17 ほか)、少数派27議席、無所属4、欠員1。注 フィリピン下院は選挙後に与党へなだれ込む「turncoatism」が常態で、政党別議席は政策予測にほぼ使えない。
6-3. 注目上院議員(24名中)
| 氏名 | 政党 | 2026年8月時点の状況 |
|---|---|---|
| ジンゴイ・エストラーダ(Jinggoy Estrada) | PMP | 2026年5月28日にオンブズマンが plunder・汚職罪で起訴、2026年6月1日に逮捕(plunder は保釈不可)。ブラカン州(マロロス/ハゴノイ)の洪水対策事業をめぐり、注 事業規模は約14億ペソ、受領したとされるキックバックは約5億7,300万ペソ(2026-08-25 相互照合で修正。旧記載「14億ペソからのキックバック」は事業総額とキックバック額を混同していた。出典:英語版Wikipedia「Jinggoy Estrada」="approximately ₱573 million in kickbacks"/「汚職とガバナンス」「司法制度と法体系」両資料も5.73億ペソ)。ケソン市ジェイル(パヤタス)収監。6月16日に Sandiganbayan が90日間の予防的職務停止。2026年8月に医療的一時外出(medical furlough)が報じられた |
| ロダンテ・マルコレータ(Rodante Marcoleta) | 無所属 | 2026年7月6日に plunder で逮捕、新ケソン市ジェイル収監。2025年選挙前に7,500万ペソの未申告献金を受領した疑い(plunder の法定閾値5,000万ペソ超)。元SAGIP政党リスト議員(2016〜2025年)、テレビ司会者。ABS-CBN放送免許不更新の主導役 |
| ロナルド「バト」デラロサ(Ronald dela Rosa) | PDP-Laban | ICC逮捕状(2025年11月6日発付/2026年5月11日公開)。逃亡中 |
| ボン・ゴー(Christopher "Bong" Go) | PDP-Laban | 2025年選挙で2,710万票を獲得し、フィリピン上院選史上最多得票(1位)。ICCが2026年2月に間接正犯8名の一人として名指し。CLTG Builders(本人のイニシャル)とダバオの事業約8億1,698万ペソのJV契約が報じられ、父デシデリオがDPWH契約の授権責任者だった点が問題視されている(本人否認) |
| ジョエル・ビリャヌエバ/フランシス・エスクデロ | 無所属/NPC | 2025年10月、洪水対策汚職に関連しロムアルデス、エストラーダとともに法務省の出国監視命令(lookout bulletin)対象 |
| リサ・オンティベロス(Risa Hontiveros) | Akbayan | 野党の中核。2028年大統領選への出馬を「真剣に検討」と表明 |
| バム・アキノ(Bam Aquino) | KANP | 2025年に約2,100万票で2位当選。基礎教育、科学技術、通商の3委員長 |
| カミーユ・ビリャル/マーク・ビリャル | Nacionalista | ビリャル家の兄妹が同時に上院議員。注 一族はオンブズマンの調査対象に含まれる |
7. 洪水対策事業汚職(flood control scandal)— 2026年最大の政治変数
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発端 | 2025年、DPWH の洪水対策事業に架空・水増しが多数あることが発覚 |
| 独立調査機関 | ICI(Independent Commission for Infrastructure)。2025年9月11日、大統領令94号で設置。委員長は元最高裁判事アンドレス・レイエス・ジュニア(Andres Reyes Jr.) |
| ICIの成果 | 2026年2月の「125日報告」で65名をオンブズマンへ送致、66名に出国監視。2026年3月31日に活動終了し、証拠は法務省とオンブズマンへ移管 |
| 政治的帰結 | 下院議長ロムアルデス辞任(2025年9月17日)、上院議長エスクデロ失脚(2025年9月8日)、現職上院議員2名の勾留 |
| 主要業者 | ディスカヤ夫妻(Curlee & Sarah Discaya/St. Timothy Construction)、Sunwest Inc.(ザルディ・コー、101.5億ペソ相当)、Hi-Tone Construction(コー一族)、Genesis88 Construction |
ザルディ・コー(Elizaldy "Zaldy" Co、1970年生) — 2019〜2025年 Ako Bicol 政党リスト下院議員、2022年7月〜2025年1月に下院歳出委員長。一族関連の建設会社が約157億ペソの洪水対策契約を受注したとされる。2025年9月29日に議員辞職し「治療」を理由に渡米、以後逃亡中。注 2025年11月の動画声明で「予算挿入はマルコス大統領とロムアルデス前議長の指示だった」と主張(大統領府は否定)。2026年4月にプラハで書類不備により拘束されたが釈放され、フランスで庇護申請中と報じられた。
ボン・レビリャ元上院議員(Bong Revilla)は2025年選挙で14位・落選。注 2026年1月、洪水対策事業に絡む逮捕状で拘束され、保釈金を納めて釈放。Sandiganbayan で係争中。
8. 司法・独立機関
8-1. 最高裁判所と2026年11月の長官交代
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 現長官 | アレクサンダー・ゲスムンド(Alexander Gesmundo)、1956年11月6日生 |
| 就任 | 2021年4月5日(ドゥテルテ大統領が任命、前任ディオスダド・ペラルタ) |
| 退官 | 2026年11月6日(フィリピンの裁判官は70歳定年。注 本稿執筆時点であと約2か月半) |
| 後任 | 注 2026年8月25日時点で未定。JBC(Judicial and Bar Council)が候補者リストを大統領へ提出し、大統領が任命する。首席陪席判事が自動昇格する制度ではない |
| 首席陪席判事 | マービック・レオネン(Marvic Leonen、2012年11月21日就任、2022年5月14日から首席陪席)。定年2032年12月29日 |
主な陪席判事の定年年:アミー・ラザロ=ハビエル(2026年11月16日)、ヘンリ・ジャンポール・インティン(2027年9月4日)、リカルド・ロサリオ(2028年10月15日)、サミュエル・ガエルラン(2028年12月19日)、アルフレド・カギオア(2029年9月26日)。 注 2026年11月に長官とラザロ=ハビエル判事が10日違いで抜ける。マルコス大統領は任期末(2028年6月)までに最高裁の構成にかなりの影響を与えうる。弾劾関連訴訟が最高裁へ持ち込まれる可能性が高い局面で、この人事は実務上も重要。
8-2. その他の独立機関
| 機関 | 長 | 就任/任期 |
|---|---|---|
| COMELEC(選挙管理委員会)委員長 | ジョージ・アーウィン・M・ガルシア(George Erwin M. Garcia) | 2022年7月22日就任/任期満了2029年2月2日 |
| オンブズマン(Ombudsman) | ヘスス・クリスピン「ボイン」レムーヤ(Jesus Crispin Remulla) | 2025年10月9日就任/7年・再任不可、2032年10月9日まで。前職は法務長官(2022〜2025年)。注 弟が現DILG長官という利益相反の指摘あり。就任直後に前任マルティレスが2020年に閉じたSALN(資産負債純資産申告書)の公開制限を解除 |
| BSP(中央銀行)総裁 | イーライ・M・レモロナ・ジュニア(Eli M. Remolona Jr.)、1952年生 | 2023年7月3日就任(前任フェリペ・メダリャ)。NY連銀14年、BIS 19年(2008〜18年アジア太平洋地域統括)、スタンフォード大博士 |
| 国家警察(PNP)長官 | ホセ・メレンシオ・C・ナルタテス・ジュニア警察大将(Jose Melencio Nartatez Jr.、第32代) | 2026年1月28日(2025年8月から長官代行=OIC。前任ニコラス・トーレ3世は2025年6月2日〜8月26日の85日で解任され、以後2026年1月まで長官職は空席)(2026-08-25 相互照合で補完。出典:「軍・警察と治安機構」資料 4-4節) |
| 国軍(AFP)参謀総長 | アントニオ・G・ナファレテ大将(Antonio G. Nafarrete、陸軍) | 2026年7月21日 |
BSP 金融理事会(Monetary Board)には財務長官フレデリック・ゴーが職権で参加。副総裁はゼノ・アベノハ(金融経済)、チュチ・フォナシエ(金融監督)、マメルト・タンゴナン(決済通貨)、ベルナデット・ロムロ=プヤット(地域業務)ほか。
9. BARMM(バンサモロ自治地域)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 首相(Chief Minister) | アブドゥルラウフ・マカクア(Abdulraof Macacua)、暫定首相(2025年3月〜)。注 生年月日は本稿では確認できない(未確認)。旧記載「1957年9月13日生」はマルコス大統領の生年月日と完全に一致しており、転記事故の疑いが強いため削除した(2026-08-25 相互照合で修正) |
| 経歴 | 通称「サミー・ガンバル(Sammy Gambar)」。1971年にモロ独立運動に参加し、MILF軍事部門 BIAF の参謀長。マギンダナオ・デル・ノルテ州 OIC 知事(2023〜2025年)、BARMM上級大臣(2019〜2023年) |
| 注 対立 | MILF は、マルコス大統領がMILFの推薦なしにマカクアを首相に任命したのはバンサモロ基本法違反だと主張。2026年6月、MILF はマカクアの軍事部門トップ職を停止 |
| 議会選挙 | 2026年9月14日実施予定(史上初のバンサモロ議会選挙)。注 2022年5月から複数回延期され、直近は2026年3月25日署名の共和国法12317号で現行日程に再設定 |
| 議席 | 80議席中72議席を選挙、8議席は分野別代表。過半数は41議席 |
| 前任 | ムラド・エブラヒム(Murad Ebrahim、MILF議長)が暫定首相を務めた |
注 本稿公開の約3週間後に選挙がある。 ミンダナオ関連の事業計画では、9月14日以降に情報を更新すること。
10. 主要な地方政治王朝(2026年8月時点)
| 一族 | 地盤 | 現職 |
|---|---|---|
| マルコス(Marcos) | 北イロコス州 | 大統領、上院議員(イメー)、下院議員(サンドロ)。注 一族内で分裂 |
| ドゥテルテ(Duterte) | ダバオ市 | 副大統領サラ、ダバオ市長セバスチャン、ダバオ市第1区下院議員パオロ、同第2区下院議員オマール(孫)、ダバオ市副市長リゴ(孫)。前大統領はハーグ勾留中 |
| ロムアルデス(Romualdez) | レイテ州 | 下院議員マーティン(訴追中)。大統領の母イメルダの実家筋 |
| アロヨ(Arroyo / Macapagal) | パンパンガ州 | グロリア・マカパガル=アロヨ元大統領(2001〜2010年)がパンパンガ州第2区下院議員(2022年〜)。注 2023年5月に上級副議長へ降格、同11月に副議長職を解任。マルコス大統領は彼女を「secret weapon」と称した一方、ドゥテルテ前大統領との関係は悪化。長男マイキー・アロヨが同選挙区の前任、長女エバンヘリナ・アロヨ=ベルナスが駐オーストリア大使(2022年12月〜) |
| エストラーダ/エヘルシト(Estrada / Ejercito) | サンフアン市 | ジョセフ「エラップ」エストラーダ元大統領(1998〜2001年)。長男ジンゴイ上院議員(勾留中)、異母弟JVエヘルシト上院議員(洪水対策疑惑で名前が挙がる) |
| ビリャル(Villar) | ラスピニャス/マニラ首都圏南部 | 上院議員マーク+カミーユ(兄妹)。注 シンシア・ビリャル元上院議員は2025年にラスピニャス下院選で市議マーク・アンソニー・サントスに敗北し、アギラール=ビリャル家の30年支配が途切れた |
| レビリャ(Revilla) | カビテ州 | ボン・レビリャ(2025年落選、洪水対策事件で保釈中)、妻ラニ・メルカド=レビリャ(カビテ第2区下院議員)、息子ジョロ/ブライアン(下院議員)、息子ラム(カビテ州副知事)、父ラモン・レビリャ・シニア(元上院議員・俳優) |
| カエタノ(Cayetano) | タギッグ市 | アラン・ピーター上院議員(現・少数派院内総務)、妹ピア上院議員、弟リノ(元タギッグ市長・下院議員) |
| ビナイ(Binay) | マカティ市 | ナンシー・ビナイがマカティ市長(2025年6月30日〜、得票56.30%で1位)。注 上院議員(2013〜2025年)→市長に転身。姉アビゲイル(アビー)は3期満了の前市長、父ヘホマール・ビナイは元副大統領。同家から5人目のマカティ市長 |
| ディ(Dy) | イサベラ州 | 下院議長ボジー・ディ、息子イノ(エチャゲ市長)、息子キコ(州副知事) |
| レムーヤ(Remulla) | カビテ州 | オンブズマンのJ.C.レムーヤ、DILG長官ジョンビック・レムーヤ(兄弟)。父フアニート・レムーヤ・シニアは14年間州知事 |
| アキノ(Aquino) | タルラック/全国 | 上院議員バム・アキノ。コラソン、ベニグノ3世の両元大統領を輩出 |
| アンパトゥアン(Ampatuan) | マギンダナオ | 2009年マギンダナオ虐殺で有罪判決を受けた members を含む。注 地域政治への影響力は大きく後退 |
注 フィリピン憲法第2条26項は「政治王朝の禁止」を掲げるが、具体化する立法(enabling law)が制定されていないため事実上機能していない。「約250家族が政治を握る」という表現がよく引用されるが、注 この数字の出所と算定基準は本稿では確認できていない(未確認)。
「アヤラ(Ayala)」は事業一族であって政治一族ではない。注 日本語記事でアヤラ、シー(Sy/SM)、ゴコンウェイ、タン(Lucio Tan)などの財閥を「政治王朝」と並べて記述するものがあるが、両者はカテゴリが異なる。ただし財務長官フレデリック・ゴーがゴコンウェイ家、農業長官ティウ・ラウレルが Frabelle 創業家、DTI長官ロケが Kamiseta 創業者と、財界からの閣僚起用は現政権の顕著な特徴である。
11. 2028年大統領選をめぐる動き
投票日は2028年5月(統一選挙)、大統領・副大統領・上院議員12名・下院全議席・地方首長を同時に選ぶ。大統領は1期6年・再選禁止のため、マルコス大統領は出馬できない。
| 人物 | 状況(2026年8月25日時点) |
|---|---|
| サラ・ドゥテルテ副大統領 | 2026年2月18日に出馬表明。唯一の正式表明者。注 弾劾裁判で有罪となれば公職欠格 |
| セバスチャン・ドゥテルテ(ダバオ市長) | ドゥテルテ陣営関係者が「サラが弾劾・失格となれば弟が出る」と発言。注 本人の正式表明ではない |
| リサ・オンティベロス上院議員 | 「真剣に検討中」。リベラル・進歩派ブロックが指名すれば受けると発言 |
| バム・アキノ上院議員、ジョイ・ベルモンテ(ケソン市長)、マール・ロハス | 注 報道による憶測段階。正式表明なし |
| レニ・ロブレド元副大統領 | 2026年4月21日、2028年大統領選への出馬を明確に否定。ナガ市長(2025年6月30日〜、同市初の女性市長)に専念 |
| イスコ・モレノ(マニラ市長) | 3期を全うすると表明し、地方政治にとどまる意向 |
| ビコ・ソット(パシッグ市長) | 2025年に得票92.09%(35万1,392票)で3選。2025年 Time 100 Next 選出。注 2028年についての言及は確認できていない |
| ギルバート・テオドロ国防長官 | 注 本人の出馬表明・報道いずれも本稿では確認できず(未確認)。日本語ネットで名前が挙がることがあるが根拠不明 |
2028年大統領選の世論調査(2025〜2026年)— 注 ロブレドが2026年4月に不出馬を明言したため、彼女を選択肢に含む下記の調査は現在は参考値に過ぎない。
| 調査会社 | 時期 | サラ・ドゥテルテ | ロブレド | その他・未定 | 標本 |
|---|---|---|---|---|---|
| Pulse Asia | 2026年5月 | 51% | 41% | 8% | 1,500(±2.5%) |
| WR Numero | 2026年3月 | 35.9% | 18.5% | 未定19.4% | 1,455(±3.0%) |
| Tangere | 2026年2月 | 43% | 27% | 30% | 1,200(±2.77%) |
| WR Numero | 2025年11月 | 33.3% | 13.0% | 未定22.2% | 1,412(±3.0%) |
注 Pulse Asia の51%は事実上の一騎打ち設問、WR Numero の35.9%は自由想起に近い設問と見られる。設問形式が違うものを並べて「支持が上昇した/下落した」と論じるのは誤り。
注 (2026-08-25 相互照合で修正) 旧記載は「サラ・ドゥテルテが2025年末以降、一貫して首位である」と断定していたが、これは同クラスタ「選挙制度」資料 13-1節の記載と食い違う。同節は、単独名の選好調査ではサラが首位である一方、「正副ペア(tandem)」を問う設問では結果が逆転していることを記録している:
| 時期 | 調査・媒体 | 内容 | 首位 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月13日 | OCTA Research | 「ロブレド+Tulfo」組が「ドゥテルテ+Marcos」組をわずかにリード | ロブレド組 |
| 2026年5月30日 | Philstar 報道 | ロブレドがドゥテルテとの差を縮める | — |
| 2026年8月12日 | Philstar 報道 | 「Leni–Raffy」組と「Sara–Imee」組が接戦 | 互角 |
| 2026年7月22日/7月31日 | Pulse Asia/WR Numero | 単独名の選好ではサラが首位 | サラ |
採用する言い方は「単独名の選好調査ではサラ・ドゥテルテが2025年末以降おおむね首位。ただし正副ペアを問う設問では2026年5月以降ロブレド組と接戦〜逆転する調査もある」。注 「一貫して首位」と断定しないこと。 なおロブレド本人は2026年4月21日に2028年不出馬を明言しており、ペア設問の値は本人の意向と切り離して読む必要がある。(出典:本クラスタ「選挙制度」資料 13-1節)
12. 日本の実務者が間違えやすい点(まとめ)
- 注 正副大統領は別選挙。副大統領が大統領の政敵であることは制度上ふつうに起こる。
- 注 「大統領は再選禁止」。2028年にマルコスは出られない。「マルコス再選」と書く日本語記事は誤り。
- 注 上院は24名の全国区。地方選出ではない。弾劾裁判では全員が judge となる。
- 注 弾劾は下院で「訴追」、上院で「裁判」。下院可決=罷免ではない。
- 注 acting/ad interim の閣僚が多い。任命委員会(Commission on Appointments)の承認が別途必要。
- 注 最高裁判事は70歳定年。2026年11月6日にゲスムンド長官が抜ける。契約・許認可を巡る訴訟が長期化する案件では、司法構成の変化を織り込む必要がある。
- 注 「世界第◯位」型の主張には注意。本稿で確認できた「記録」は、①ボン・ゴーの2,710万票=フィリピン上院選挙史上最多得票(国内記録、世界記録ではない)、②ロドリゴ・ドゥテルテ=アジアの元首脳として初のICC出廷、③サラ・ドゥテルテ=フィリピン初の2度弾劾された公職者、の3点。それ以外の「世界◯位」表現は本稿では裏が取れていない(未確認)。
- 注 政治家の姓は重複が多い(Marcos/Duterte/Villar/Cayetano/Revilla/Remulla/Estrada-Ejercito/Dy/Arroyo)。ファーストネームと選挙区まで確認しないと別人になる。