フィリピンの選挙制度
0. 最初に押さえる5点
| # | 要点 |
|---|---|
| 1 | 大統領(President)と副大統領(Vice President)は別々の投票で選ばれる。だから「大統領と副大統領が敵同士」という状況が普通に起きる。現に2022年当選のマルコス(Ferdinand Marcos Jr.)とサラ・ドゥテルテ(Sara Duterte)は2026年に完全に決裂している。 |
| 2 | 上院(Senate)は24名全国区。3年ごとに12名ずつ改選。「州代表」ではないので、全国的知名度=芸能人・スポーツ選手・アナウンサーが強い。 |
| 3 | 下院(House of Representatives)は小選挙区+政党名簿(party-list)の混合。政党名簿枠は全議席の20%、1政党の上限は3議席。 |
| 4 | 2010年以降は全国自動集計(AES)。2025年から機種がSmartmatic系からMiru Systems(韓国)のACMに交代した。 |
| 5 | 直近の全国選挙は2025年5月12日の中間選挙。次の全国選挙は2028年5月8日(5月第2月曜日)。その間に2026年9月14日のBARMM議会選挙と、2026年11月2日予定のバランガイ・SK選挙(注延期審議中)がある。 |
1. 選挙の種類とサイクル
1-1. 一覧表
| 選挙の種類 | 対象 | 任期 | 再選制限 | 実施サイクル |
|---|---|---|---|---|
| 大統領 | 1名 | 6年 | 再選なし(1期のみ) | 6年ごと・5月第2月曜 |
| 副大統領 | 1名 | 6年 | 連続2期まで | 同上(大統領とは別投票) |
| 上院議員 | 24名(全国区) | 6年 | 連続2期まで | 3年ごとに12名改選 |
| 下院・小選挙区 | 2025年時点254区 | 3年 | 連続3期まで | 3年ごと |
| 下院・政党名簿 | 2025年時点64議席(合計318) | 3年 | 連続3期まで | 3年ごと |
| 州知事・副知事・州議会 | 全国 | 3年 | 連続3期まで | 3年ごと |
| 市長・副市長・市議会/町長ほか | 全国 | 3年 | 連続3期まで | 3年ごと |
| バランガイ長・議員、SK(青年評議会) | 全国4万バランガイ超 | 4年(2026年選出分から) | バランガイは2回まで再選可/SKは再選不可 | 別サイクル(注後述) |
| BARMM議会 | 80議席 | 3年 | 3期まで | 2026年9月14日が初の民選 |
注 知らないと間違える点:「フィリピンの選挙は3年ごとに全部やる」と説明されがちだが、バランガイ・SK選挙とBARMM議会選挙は別サイクル。しかも両方とも法律で何度も日程が動かされている。「3年ごと」で理解を止めると必ずズレる。
1-2. 直近・今後の日程
| 日付 | 内容 | 状態 |
|---|---|---|
| 2025-05-12 | 中間選挙(上院12・下院全・地方全、計18,320ポスト) | 実施済み(COMELEC発表を報じた Cebu Daily News/Inquirer「May 2025 elections: 18,320 seats at stake in crucial midterm polls」、2025年) |
| 2026-09-14 | BARMM議会 初の民選(RA 12317で確定) | 実施予定。大統領布告1395号で当日はBARMM域内の特別非就業日(Philstar / Manila Bulletin, 2026年8月21日) |
| 2026-11-02 | バランガイ・SK選挙(BSKE) | 注延期法案が審議中(後述) |
| 2027-02(見込み) | 2028年選挙に向けた有権者登録再開 | COMELEC方針(Cebu Daily News, 2026年5月19日) |
| 2028-05-08 | 大統領・副大統領・上院12・下院全・地方全 | 憲法上の定例(5月第2月曜) |
2. 大統領・副大統領 ── 「セット当選」しない構造
フィリピンでは大統領票と副大統領票が完全に独立している。米国のように「正副セットで1票」ではない。政党は正副のペア(tandem)を組んで選挙戦を戦うが、有権者はバラバラに投票できるため、別陣営の正副が誕生することが繰り返し起きてきた。
- 2016年:大統領ドゥテルテ(PDP-Laban系)/副大統領ロブレド(Leni Robredo, 自由党)=完全な対立関係
- 2022年:マルコス(Ferdinand Marcos Jr.)/サラ・ドゥテルテ(Sara Duterte)=当初は「UniTeam」として同一チーム、その後決裂
注 日本語記事で「マルコス政権の副大統領」と書かれると同一チームの一員に見えるが、2026年時点では下院がサラ・ドゥテルテを弾劾訴追し、上院で弾劾審理が進行中という関係にある(Al Jazeera・BBC 2026年5月11日=2度目の弾劾訴追、Rappler・Inquirer 2026年7月上旬=審理開始)。
- 当選確定の手続きは特殊で、大統領・副大統領だけは上下両院合同会議が国家開票機関(National Board of Canvassers)として集計・宣言する。他の職はCOMELECが宣言する。
- 大統領・副大統領選の異議申立ては最高裁が「大統領選挙裁判所(PET)」として審理する。上院議員はSET、下院議員はHRET。
3. 上院(Senate)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定数 | 24名 |
| 選挙区 | 全国1区(at-large) |
| 投票方法 | 有権者は最大12名まで連記(多数代表制・非移譲式) |
| 任期 | 6年 |
| 改選 | 3年ごとに12名(半数)改選 |
| 再選制限 | 連続2期(12年)まで |
この「全国区・12名連記」が、フィリピン政治の性格を強く規定している。州単位の地盤ではなく全国的な名前の通りが決定的なので、俳優・ボクサー・アナウンサー・警察高官などが上院に入りやすい。EU選挙監視団(EU EOM)も2025年報告で、政治王朝(political dynasty)と知名度に依存した構造を問題視した。
2025年上院選の結果(12議席)
| 順 | 当選者 | 陣営 | 得票(概数) |
|---|---|---|---|
| 1 | Bong Go | DuterTen / PDP–Laban | 約2,710万 |
| 2 | Bam Aquino | KiBam / KANP | 約2,100万 |
| 3 | Ronald dela Rosa | DuterTen / PDP–Laban | 約2,080万 |
| 4 | Erwin Tulfo | Alyansa / Lakas–CMD | 約1,710万 |
| 5 | Kiko Pangilinan | KiBam / 自由党 | 約1,530万 |
| 6 | Rodante Marcoleta | DuterTen / 無所属 | 約1,530万 |
| 7 | Panfilo Lacson | Alyansa / 無所属 | 約1,510万 |
| 8 | Tito Sotto | Alyansa / NPC | 約1,480万 |
| 9 | Pia Cayetano | Alyansa / Nacionalista | 約1,460万 |
| 10 | Camille Villar | Alyansa / Nacionalista | 約1,370万 |
| 11 | Lito Lapid | Alyansa / NPC | 約1,340万 |
| 12 | Imee Marcos | Nacionalista | 約1,330万 |
(2026-08-27 出典差し替え。旧稿は英語版Wikipedia「2025 Philippine Senate election」を出典としていた。出典:COMELEC 2025年5月確定集計、Philstar「LIST: Final party-list ranking in the 2025 elections」等の各紙報道、2026-08-27取得。得票数は概数で示す。確定値が必要な場合はCOMELEC公式集計に当たること)
ポイント:政権与党連合「Alyansa para sa Bagong Pilipinas」は6議席にとどまり、事前に劣勢とされた野党系「KiBam」(Aquino+Pangilinan)の2名が当選。ドゥテルテ系「DuterTen」は3議席+ゲスト2。選挙前の予想(与党圧勝)が外れた選挙として記憶されている。
注 立候補者数にも注意。2024年10月の届出時点で上院志望者は183名いたが、COMELECが「泡沫候補(nuisance candidate)」として大量に排除し、最終的な公式候補は66名(PNA・Rappler等、2024年10〜12月)。「泡沫候補の職権排除」はフィリピン選挙制度の特徴のひとつで、しばしば恣意性が争われる。
4. 下院 ── 小選挙区+政党名簿
4-1. 議席構成(2025年選挙)
| 区分 | 議席数 | 選び方 |
|---|---|---|
| 小選挙区(district) | 254 | 単純小選挙区制(相対多数) |
| 政党名簿(party-list) | 64 | 全国比例(拘束名簿) |
| 合計 | 318 |
憲法は政党名簿枠を「全議席の20%」と定める。小選挙区が増えると政党名簿枠も自動的に増える設計。
(2026-08-27 出典差し替え。旧稿は英語版Wikipedia「2025 Philippine House of Representatives elections」等3項目を出典としていた。出典:下院公式サイト congress.gov.ph「House Members - 20th Congress」、2026-08-27取得。小選挙区254・政党名簿64・合計318と明記)
注 (2026-08-25 相互照合で修正。旧記載「63議席/合計317」を「64議席/合計318」に是正。2026-08-27 出典を congress.gov.ph に差替え。) 「主要人物名鑑・政治」資料の定数318(与党連合286+少数派27+無所属4+欠員1)と、これで整合する。 注 なお「地方政治と政治王朝」資料が引くPCIJ調査は小選挙区議員の母数を253人としている。これはPCIJ集計時点の欠員1を除いた数であり、制度上の選挙区数254とは別物。母数が違う数字を混ぜて割合を計算しないこと。
4-2. 政党名簿制(party-list system)の3つの数字
| ルール | 内容 |
|---|---|
| 20%枠 | 政党名簿議席は下院総定数の20% |
| 2%基準 | 有効政党名簿票の2%以上を得た政党は保証1議席 |
| 3議席上限 | どれだけ得票しても1政党3議席まで |
配分の実際(BANAT判決以後の方式): 1. 2%以上を得た政党に1議席ずつ配分 2. 残り議席を得票比例で追加配分(3議席上限まで) 3. それでも埋まらない議席は、2%未満の政党にも得票順に1議席ずつ配分
注 「2%を超えないと1議席も取れない」は誤り。2009年の BANAT v. COMELEC 判決で、追加議席配分について2%基準は違憲とされ、議席が余れば2%未満の政党にも回る仕組みになった。日本語解説では古い「2%足切り」説明が残っていることがある。
4-3. 判例の流れ(ここが最重要)
| 年 | 判決 | 内容 |
|---|---|---|
| 2000 | Veterans Federation Party v. COMELEC | 「Panganiban方式」を採用。最多得票政党を基準に追加議席を算定。後に元最高裁長官Panganiban自身が「複雑すぎる」と述べた |
| 2001 | Ang Bagong Bayani | 政党名簿は「周縁化され代表されていない(marginalized and underrepresented)」層のためのものと限定 |
| 2009 | BANAT v. COMELEC | 追加議席配分での2%基準を違憲と判断。第14議会の政党名簿議席は22→55に増加 |
| 2013 | Atong Paglaum v. COMELEC(G.R. 203766, 2013年4月2日) | 参加要件を大幅に緩和 |
Atong Paglaum判決(2013)で何が変わったか(最高裁が示した6つの基準の要点):
- 政党名簿には全国政党・地域政党・セクター政党の3類型が参加できる
- 全国政党・地域政党は「周縁層の代表」である必要がない(Ang Bagong Bayani の縛りを外した)
- 主要政党も、独立に登録したセクター部門(sectoral wing)を通じてなら参加できる
- セクター政党は「経済的に周縁化された層」(労働者・農民・漁民・都市貧困層・先住民・障害者・退役軍人・海外労働者)と、「政治的代表を欠く層」(専門職・高齢者・女性・青年)に分かれ、要求される要件が異なる
- 名簿候補者は当該セクターに属するか、そのための活動実績を示す必要がある
- 候補者の一部が失格でも、適格な候補が1人でも残れば政党は失格にならない
注 この判決の帰結が、現在フィリピンで最も批判される点である。「弱者代表の枠」だったはずの政党名簿に、有力政治一族や政府調達業者につながるグループが大量に入り込んだ。フィリピン調査報道センター(PCIJ, 2026年3月)は第20議会の政党名簿議席が政治一族と請負業者に押さえられていると報じ、Rappler(2024年12月)も「政治王朝が政党名簿にも群がっている」と報じている。
4-4. 2025年 政党名簿の上位
| 順 | 政党名簿 | 得票率 | 議席 |
|---|---|---|---|
| 1 | Akbayan | 7.02% | 3(上限) |
| 2 | Tingog | 4.60% | 3(上限) |
| 3 | 4Ps | 3.71% | 2 |
| 4 | ACT-CIS | 3.13% | 2 |
| 5 | Ako Bicol | 2.71% | 2 |
(2026-08-27 出典差し替え。旧稿は英語版Wikipediaを出典としていた。出典:Philstar「Full list: certified party-list candidates 2025 elections」2025-04-15ほか各紙報道=COMELECが2024年10月に156団体を認証・抽選、2026-08-27取得。参加団体は156)
7%を取っても3議席で頭打ちになるのが3議席上限の効果。ここが「比例代表」と呼びながら比例していない部分。
4-5. 小選挙区の政党別(2025年)
Lakas–CMD 103、NUP 32、NPC 31、PFP 27、Nacionalista 22、自由党 6、その他33。
注 フィリピンの政党は理念政党ではなく、当選後に大統領与党へ大量移籍(turncoatism)するのが常態。選挙直後の議席数と、議会開会後の勢力図は一致しない。
5. 地方選挙
- 州(province):知事・副知事・州議会議員(Sangguniang Panlalawigan)
- 市(city)/町(municipality):市長・副市長・議会議員
- 任期3年、連続3期(9年)まで。注 3期務めた後、1期空ければ再出馬できるため、実質的に無期限に居座れる。夫婦・親子で職を交換する「席替え」も一般的。
- 2025年の中間選挙では全国で計18,320ポストが争われた(COMELEC発表を報じた Cebu Daily News/Inquirer、2025年5月)。
政治王朝(political dynasty)と規制
1987年憲法第2条第26節は政治王朝を禁じるが、「法律の定めるところにより」とあり、39年間その実施法が存在しない。
- 2026年5月20日:下院が反政治王朝法案を第2読会通過
- 2026年6月3日:下院が第3読会(最終)で可決(PNA・Manila Bulletin・Inquirer, 2026年6月3日)
- 注 ただし内容は「骨抜き(watered-down)」との批判が強く、Philstar(2026年3月)は推進派の一部が支持を撤回したと報道。上院での成立は2026年8月時点で未確定
- 憲法起草者の一部は禁止範囲を「4親等まで」に広げるべきと主張(Inquirer, 2026年2月)
6. バランガイ・SK選挙(BSKE)── 延期の常習犯
バランガイ(barangay)は最小行政単位。2026年3月31日時点で全国 42,010 バランガイ(DILG「Regional Summary: Number of Provinces, Cities, Municipalities and Barangays」)。各バランガイでバランガイ長(Punong Barangay)1名+議員7名、およびSK(Sangguniang Kabataan=青年評議会)議長1名+議員7名を選ぶ。
制度上の建前:無所属選挙(政党推薦なし)。実態は地方政治家の代理戦争。
日程の変遷
| 時点 | 内容 |
|---|---|
| 2022年 | RA 11935 により延期(後に最高裁が違憲と判断) |
| 2023-10-30 | 実施 |
| 当初予定 2025-12-01 | → 解決(2026-08-27):マルコス大統領の署名日は2025年8月13日(水曜日)に確定(RA 12232)。旧稿がWikipediaを根拠に併記していた「8月14日」説は誤り(2026-08-27 出典差し替え:出典:大統領府広報局(PCO)公式発表「PBBM signs into law postponement of barangay, SK polls until next year」、Manila Bulletin、Rappler、PNA、GMA News、いずれも2025-08-13報道。2026-08-27取得。「地方政治と政治王朝」資料の「8月14日」表記は誤りとして訂正が必要) |
| 2026-11-02 | 現行法上の実施日。任期は4年、バランガイ役職は2回まで再選可、SKは再選不可 |
| 注 2026-08-24 | 上院地方自治委員会が、この2026年11月選挙をさらに延期し、任期を5年に「固定」する法案を可決(GMA・Philstar・Manila Bulletin, 2026年8月24日)。本会議審議へ |
注注 2026年8月25日時点で、2026年11月2日のBSKEは法律上まだ有効だが、延期される可能性が高い状態。断定的に「2026年11月に実施」と書かないこと。
- 有権者登録は2026年5月18日で締切済み(PIA, 2026年5月14日)
- COMELEC側は延期に否定的。ガルシア委員長は「恒常的な延期は統治の不確実性を生む」と発言(GMA, 2026年8月12日)、また延期すれば約80億ペソが無駄になると警告(PNA, 2026年8月12日)
- 一方で「未使用の109億ペソを2028年選挙の財源に回せる」という議論も出ている(PNA, 2026年8月24日)
- 最高裁への違憲訴訟も提起されている
7. COMELEC(選挙管理委員会)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠 | 1987年憲法 第9条C(Article IX-C, Sec. 2)。会計検査委員会・人事委員会と並ぶ「憲法上の委員会」 |
| 構成 | 委員長1名+委員6名の計7名 |
| 資格 | 生来のフィリピン国民、35歳以上、大卒以上。委員長を含む過半数は弁護士資格10年以上。直前の選挙の候補者だった者は不可 |
| 任期 | 7年・再任なし。任期は2月2日始期/終期 |
| 任命 | 大統領が任命し、任命委員会(Commission on Appointments)の同意 |
| 罷免 | 弾劾(impeachment)によってのみ |
主な権限
- すべての選挙関連法令の執行・管理
- 選挙争訟・候補者資格に関する裁定権(準司法権を持つ)
- 政党の登録、政党名簿の認定、市民監視団体(citizens' arm)の認定
- 選挙犯罪の捜査・訴追
- 選挙期間中の武器携帯禁止(gun ban)、公務員の異動制限、特定地域の「COMELEC直轄化(COMELEC control)」
2026年8月時点の陣容
- 委員長:George Erwin M. Garcia(2022年7月22日就任、任期は2029年2月2日まで)。2026年8月時点で現職。BARMM選挙の準備を指揮
- 委員:Nelson J. Celis、Ernesto Ferdinand P. Maceda Jr.、Aimee Ferolino-Ampoloquio(2027年2月2日まで)、Rey E. Bulay、Norina Tangaro-Casingal(2025年2月就任、2032年2月2日まで)、Noli R. Pipo(2025年2月11日宣誓)
注 2026年3月30日、弁護士グループがガルシア委員長と6委員に対する弾劾申立てを表明(Inquirer・GMA・Manila Times, 2026年3月30日)。争点は選挙資金事件(後述のMarcoleta案件)の処理など。COMELEC側は「古い争点の蒸し返し」と反論(ABS-CBN・SunStar, 2026年3月30〜31日)。2026年8月時点で委員長は在任のまま。
8. 自動集計システム(AES)
8-1. 沿革
| 年 | 内容 |
|---|---|
| 1997 | RA 8436(自動選挙法) |
| 2007 | RA 9369(改正法)。全国自動化の法的基盤 |
| 2008 | ARMM地方選挙で試行(Maguindanaoは電子投票機、他はOMR) |
| 2010 | 全国初の自動集計。Smartmatic製 PCOS機 |
| 2013 | 注 全機の約4分の1で送信トラブル。監視団体AES Watchは最大860万票に影響と推計(これは団体推計であり政府の確定値ではない) |
| 2016 | Smartmatic製OMR機 約94,000台をリース。COMELEC・業者側は「世界最大規模の自動選挙」と説明 |
| 2019 | 無作為手作業監査(RMA)で上院・下院・市長選の一致率99.99%超 |
| 2022 | 同系統のVCMを使用 |
| 2025 | Miru Systems(韓国)製 ACM に交代 |
注 「世界第◯位」系の主張について:「世界最大の自動選挙システム」という表現は、機器台数を根拠にCOMELECおよびベンダー側が用いてきた宣伝的表現で、国際機関による順位付けではない。何の指標での「最大」かが明示されない限り、資料では「世界最大級」と留めるのが安全。本調査では独立した第三者による順位認定は未確認。
8-2. 2025年からのMiru ACM
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約 | 2024年3月11日、COMELECとMiru Systems Co., Ltd.が契約締結 |
| 金額 | 約179億9,000万ペソ(約180億ペソ)(Inquirer・Cebu Daily News, 2024年2〜3月) |
| 台数 | 自動集計機(ACM)110,000台+関連機材 |
| 経緯 | Smartmatic が失格となった後の再入札でMiru主導のJVが落札。注 Miruのコンゴ民主共和国・イラクでの実績を問題視する批判、House委員会による調査勧告(GMA, 2024年1月)、JVパートナーSt. Timothy の離脱(Rappler, 2024年10月)など、選挙前から論争が続いた |
8-3. 2025年本番で起きたこと
- 投票当日、正常に記入された投票用紙を無効と判定する、インクのにじみで弾く、といった不具合が多発。「ACMのエラー」が苦情の最多項目となった(Inquirer, 2025年5月13日)
- 重大な不具合で 約300台のACMが交換(Inquirer, 2025年5月12日)
- 約130万人分の「オーバーボート(overvote)」 が発生とCOMELECが公表(Inquirer, 2025年5月21日)。上院選で13人以上を塗ったなどで当該欄が無効になる現象
- 注 SNSで「1,700万人がオーバーボートした」という主張が拡散したが、COMELECはこれを否定(Inquirer, 2025年5月24日)。130万と1,700万を混同しないこと
- COMELECは無作為手作業監査(RMA)で「不一致なし」と発表(Philstar, 2025年5月22日)。注 ただし監査対象の投票箱数は限定的
- 選挙監視団体ANFRELは2025年7月24日に最終報告を公表し、「高投票率・低競争性」と総括
注 書き方の注意:2025年選挙について「大規模不正があった」と断定する確証は、本調査の範囲では確認できなかった。確認できるのは (a) 機器の不具合が広範に起きたこと、(b) オーバーボートが約130万件あったこと、(c) COMELECの監査では集計不一致が報告されていないこと、(d) 手続き・調達をめぐる政治的な疑義が継続していること、の4点である。
9. 2025年中間選挙の投票率 ── 注 数字が2つ流通している
ここは日本語資料で最も間違えやすい箇所。
| 発表 | 投票率 | 投票者数 | 登録有権者数 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| COMELECガルシア委員長 2025年5月15日 | 81.65% | 55,874,700 | 68,431,965 | GMA / Philstar / ABS-CBN(2025年5月15日) |
| その後の集計 | 82.20% | 57,350,968 | 69,673,653 | PNA / Rappler |
注 分母(登録有権者数)が違う。68,431,965 と 69,673,653 で約124万人の差があり、これは在外有権者や集計時点の違いを反映していると見られる。本調査では、どちらが「唯一の最終公式値」かを断定できる一次資料は確認できなかった。
実務上の推奨表記:
「2025年中間選挙の投票率は、COMELECが2025年5月15日に発表した 81.65%(55,874,700/68,431,965)。その後、57,350,968/69,673,653 に基づく 82.20% も流通している。いずれも中間選挙として過去最高。」
いずれの数字でも、中間選挙としては史上最高という結論は変わらない。日本の国政選挙(衆院50〜55%前後)と比べると突出して高い。
その他の2025年数値
| 項目 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 争われたポスト数 | 18,320 | COMELEC発表を報じた Cebu Daily News/Inquirer(2025年) |
| モール投票(mall voting)の投票率 | 79% | PNA(2025年5月17日) |
| 在外投票の投票率 | 18.12%(過去最低水準) | PNA / Rappler(2025年5月16日) |
| オーバーボート | 約130万人 | COMELEC / Inquirer(2025年5月21日) |
| 銃器携帯禁止違反の逮捕 | 選挙前段階で2,105人 | PNP(2025年4月) |
10. 2026年9月14日 ── BARMM議会選挙
バンサモロ自治地域(BARMM=Bangsamoro Autonomous Region in Muslim Mindanao)にとって、歴史上初めての民選議会。これまでの議会(BTA=暫定バンサモロ移行機構)は全員が大統領任命だった。
10-1. 議席構成(80議席)
| 区分 | 議席 | 比率 | 選び方 |
|---|---|---|---|
| 政党代表(party representatives) | 40 | 50% | 地域全体の比例代表(拘束名簿) |
| 選挙区代表(single-member districts) | 32 | 40% | 小選挙区・単純多数 |
| 留保・セクター議席(reserved & sectoral) | 8 | 10% | 非モロ先住民2、入植者共同体2、女性1、青年1、伝統的指導者1、ウラマー(イスラム法学者)1 |
選挙区32議席の配分:ラナオ・デル・スル 9/マギンダナオ・デル・ノルテ 5/マギンダナオ・デル・スル 5/バシラン 4/タウィタウィ 4/コタバト市 3/特別地理地域(SGA)2
投票方法:有権者は1枚の投票用紙で8つの丸を塗る(政党1・選挙区1・セクター6)(MindaNews, 2026年)。
議院内閣制:フィリピン唯一の議院内閣制。首席大臣(Chief Minister)は議会が互選する。議員任期は3年、最大3期(9年)。
10-2. 4回の延期 ── なぜここまで遅れたか
| 回 | 変更 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 2022年5月 → 2025年5月 | COVID-19、およびバンサモロ選挙法典が未制定 |
| 2 | 2025年5月 → 2025年10月13日(RA 12123) | 2024年9月、最高裁がスールー州のBARMM編入を違憲と判断。2019年住民投票で同州の多数が反対していたため。7議席の再配分が必要に |
| 3 | 2025年10月13日 → 2026年3月31日 | 最高裁が選挙区画定法2本(バンサモロ自治法58号・77号)を違憲と判断。議会が期限内に代替法を作れず |
| 4 | 2026年3月31日 → 2026年9月14日(RA 12317、2026年3月25日署名) | COMELECが「選挙120日前」という法定準備期限に間に合わないとしたため(2026-08-25 相互照合で修正。直前行と同じ「3月31日」に統一。旧記載「3月30日」は本表3行目の3月31日と不整合だった。「軍・警察と治安機構」資料の延期表とも整合) |
根拠法:バンサモロ基本法(Bangsamoro Organic Law)、バンサモロ選挙法典(Bangsamoro Autonomy Act 35)、区画定はバンサモロ自治法86号。
10-3. 2026年8月時点の状況
- 認定政党は13(2026年5月時点)。主な政党:United Bangsamoro Justice Party(MILF系)、Bangsamoro Party(MNLF系)、Mahardika Party(MNLF系)、Bangsamoro Federalist Party、Raayat Democratic Party、BARMM Grand Coalition ほか
- 選挙期間・銃器携帯禁止は2026年7月16日開始(Rappler, 2026年7月16日)。8月5日までに13名が違反で逮捕(Inquirer)
- 選挙警戒区分:グリーン18/イエロー41/オレンジ23/レッド26(COMELEC, 2026年8月)。過去の暴力実績から27地域が「ホットスポット」指定(Daily Tribune, 2026年7月19日)
- 陸軍が約1,500名を増派(Manila Bulletin, 2026年8月4日)
- 選挙運動期間は2026年7月30日〜9月12日
- COMELECは投票率75%を目標(PNA, 2026年8月6日)。1投票所あたりの有権者数を削減して混雑緩和
- 2026年8月21日、大統領布告1395号で9月14日をBARMM域内の特別非就業日に指定
- マルコス大統領は「ミンダナオ和平と開発にとって重要」と位置づけ(PIA, 2026年8月14日)
注 選挙はACM(自動集計機)で実施される。BARMMは選挙暴力・不正の歴史が最も濃い地域なので、開票結果が政治的に激しく争われる可能性は高い。
11. 在外投票(Overseas Voting)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法 | RA 9189(2003年、在外不在者投票法)→ RA 10590(2013年改正) |
| 対象 | 18歳以上のフィリピン国民で海外在住・在外登録した者(二重国籍者を含む) |
| 投票できる職 | 大統領・副大統領・上院議員・政党名簿のみ。注 下院小選挙区や地方職は投票できない |
| 登録 | 在外公館(大使館・領事館)で本人申請 |
| 投票期間 | 選挙日までの30日間 |
| 2025年の登録者 | 約120万人超(GMA, 2025年5月12日) |
2025年 ── 初のオンライン投票(OVCS)
2025年中間選挙で、フィリピンは史上初めてインターネット投票(Online Voting and Counting System, OVCS)を在外投票に導入した。COMELECは在外投票率の低迷(2022年は過去最高でも38%)を改善する切り札と位置づけていた。
注 結果は逆だった。
| 選挙 | 在外投票率 |
|---|---|
| 2004年(初回、紙) | 64%(233,092/364,187) |
| 2022年(紙・郵送・現地投票) | 38%(「過去最高」とされた) |
| 2025年(初のオンライン) | 18.12% ── 大幅低下(PNA / Rappler, 2025年5月16日) |
低迷の要因として報じられたのは、事前の本人確認登録(enrollment)が必須で手続きが煩雑だったこと、システムへのアクセス障害、周知不足など。COMELECはデジタル有権者IDの発行など改善策を検討してきた。
- 次回の在外有権者登録は2025年11月開始(Inquirer, 2025年6月10日)
- 注 2028年に再びオンライン投票を使うかは、2026年8月時点で本調査の範囲では確認できず。「2028年も必ずオンライン」と書かないこと
12. 選挙費用・資金規制・票の買収
12-1. 法定の選挙運動費用上限(RA 7166 第13条、1991年)
| 対象 | 上限(登録有権者1人あたり) |
|---|---|
| 大統領・副大統領候補 | 10.00ペソ |
| 政党公認のその他候補 | 3.00ペソ |
| 無所属候補 | 5.00ペソ |
| 政党(当該選挙区) | 5.00ペソ |
注注 この金額は1991年制定以来、実質的に更新されていない。1991年のペソと2026年のペソでは購買力がまったく違う。EU選挙監視団は2025年報告で「時代遅れの選挙法」を明確に批判し、COMELECが法の空白を埋めるために越権的な措置を取らざるを得なくなっていると指摘した(Philstar・Inquirer, 2025年7月4日)。
候補者・政党は選挙後に SOCE(Statement of Contributions and Expenditures=収支報告書) の提出が義務。2025年の提出期限は6月11日で、注 ドゥテルテ前大統領を含む複数が期限を徒過したと報じられた(2025年6月16日)。
12-2. Marcoleta事件 ── 2025〜2026年の最大の資金スキャンダル
2025年当選のRodante Marcoleta上院議員をめぐる一連の問題。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年7月 | SOCEで 1億1,290万ペソを支出と申告しながら、献金者を1人も記載していないことが判明。本人は「友人から7,500万ペソ」と説明 |
| 2025年12月 | 「SOCEで虚偽記載を認めた」として市民団体が上院倫理調査を要求(Bulatlat, 2025年12月12日) |
| 2026年3月17〜18日 | COMELEC全体会議が選挙犯罪については無罪とし、代わりに献金者側の訴追を命令。職権調査も打ち切り |
| 2026年3月30日 | 注 この処理を主な理由に、弁護士グループがCOMELEC委員長・委員の弾劾を申し立て |
| 2026年7月3日 | オンブズマンが、マルコレータ本人と2025年上院選の献金者3名(Mike Defensor、Joseph Varias Espiritu、Aristotle Baluyut Viray)に対し、Sandiganbayanへplunder(不正蓄財)罪で正式提訴。7,500万ペソが plunder の法定閾値5,000万ペソを超えたことが根拠。(2026-08-27 訂正:旧稿は「2026年5月」としていたが誤り。出典:Philstar「Ombudsman files plunder charges vs Rodante Marcoleta」2026-07-03、Bloomberg「Philippine Ombudsman Files Plunder Case Against Duterte Ally Rodante Marcoleta」2026-07-03。2026-08-27取得。旧稿の「2026年5月」は英語版Wikipedia「Rodante Marcoleta」を出典としていたことに起因する誤りで、出典ごと差し替えた) 注「2026年6月29日」は本件の日付ではなく、「司法制度と法体系」資料 11-3節が記録する「上院議員 Joel Villanueva が予備調査対象になった日」である。別人の案件との混同なので、マルコレータの訴追日として6月29日を使わないこと |
| 2026年7月6日 | 逮捕・新ケソン市ジェイル(パヤタス)収監。同日、元下院議員マイク・デフェンソールも略奪容疑で逮捕(2026-08-25 相互照合で追記。2026-08-27 出典差し替え(旧稿は英語版Wikipedia「Rodante Marcoleta」)。出典:Philstar「Marcoleta arrested in P75-M plunder case」2026-07-06、PNA「Marcoleta, Defensor now under PNP custody over plunder raps」。2026-08-27取得/「主要人物名鑑・政治」「司法制度と法体系」「軍・警察と治安機構」各資料が7月6日で一致) |
| 2026年7月8日 | COMELECが7,500万ペソ献金に関する別の申立てを却下 |
注 2026年8月時点で司法手続きは継続中。「有罪確定」と書かないこと。
制度的な論点:政府調達業者(contractor)による候補者への献金は選挙法上禁止されているが、自動的な選挙犯罪として扱うかが争われている(Inquirer, 2025年9月1日)。PCIJは第20議会の政党名簿議席に請負業者系が入り込んでいると報じている(2026年3月)。
12-3. 票の買収(vote buying)
フィリピン選挙で最も根深い問題。刑法上は選挙犯罪だが、摘発・有罪は極めて少ない。
- 選挙前調査で、66%が「票の買収が横行するだろう」と回答(Philstar, 2025年4月4日)
- EU選挙監視団は2025年5月の暫定所見で「票の買収はフィリピン選挙に深く定着している(well-entrenched)」と明言(Philstar, 2025年5月14日)
- EU監視団はさらに、政府の現金給付「ayuda」や大統領によるコメ配布が選挙目的に転用されたと指摘(BusinessMirror, 2025年7月3日)。注 これは「民間が現金を配る」古典的買収とは別種の、公金を使った事実上の買収という批判である
- EU監視団の最終報告(2025年7月2日提出)は 21項目の勧告を提示。首席監視員はポルトガル選出の欧州議会議員 Marta Temido、監視員は約200名
- COMELECは「勧告に応じるには法改正と予算が必要」と応答(Inquirer, 2025年7月2日)
注 区別すべき点:EU監視団や市民団体の指摘は観察・評価であって政府の確定認定ではない。他方で、COMELEC自身も買収の存在自体は否定していない。
12-4. 選挙にかかるカネ(公費)
| 項目 | 金額 | 出典 |
|---|---|---|
| 2025年選挙の自動化契約(Miru) | 約179.9億ペソ | Inquirer / Cebu Daily News(2024年) |
| 2028年全国・地方選挙の要求予算 | 約500億ペソ規模 | GMA(2026年6月2日)。注 一方で「60億ペソ削減」を検討との報道もあり(Philstar, 2026年6月3日)、確定額ではない |
| 2026年BSKE関連の未消化予算 | 約109億ペソ | PNA(2026年8月24日) |
13. 2028年大統領選に向けて
次の大統領・副大統領選は 2028年5月8日(5月第2月曜)。マルコス大統領は再選不可(1期のみ)なので、確実に新大統領が誕生する。
13-1. 2026年時点の情勢(すべて世論調査=推計値であり、確定ではない)
| 時期 | 調査機関・媒体 | 内容 |
|---|---|---|
| 2026年4月27日 | GMA報道 | サラ・ドゥテルテ 46%、レニ・ロブレド 35% |
| 2026年5月13日 | OCTA Research | 「ロブレド+Tulfo」組が「ドゥテルテ+Marcos」組をわずかにリード |
| 2026年5月30日 | Philstar報道 | ロブレドがドゥテルテとの差を縮める |
| 2026年7月22日 | Pulse Asia | サラ・ドゥテルテが選好首位 |
| 2026年7月23日 | Momentum Research(初回調査) | ドゥテルテ首位 |
| 2026年7月31日 | WR Numero | ドゥテルテ首位 |
| 2026年8月5日 | Inquirer報道 | 仮想対決でドゥテルテがロブレドを上回る |
| 2026年8月12日 | Philstar報道 | 「Leni–Raffy」組と「Sara–Imee」組が接戦 |
注 ロブレド本人は2026年4月21日、2028年の全国選挙への出馬を否定している(Rappler, 2026年4月21日)。世論調査に名前が出ることと、実際の出馬は別。
13-2. サラ・ドゥテルテの資格問題
- 2026年5月11日:下院が2度目の弾劾訴追を可決(Al Jazeera / BBC, 2026年5月11日)
- 2026年7月上旬:上院で弾劾審理が開始(Rappler / Inquirer / BBC / Al Jazeera, 2026年7月5〜8日)
- 2026年7月21日:COMELECは「弾劾裁判で有罪とならない限り、2028年大統領選への出馬資格はある」との見解(DZRH, 2026年7月21日)
- 注 フィリピンの弾劾は有罪判決に伴い公職就任資格の永久剥奪が可能。したがって弾劾裁判の結果が2028年の構図を直接左右する。2026年8月時点で結論は出ていない
13-3. その他の動き
- マルコス大統領は「汚職対策を継承する候補を支持する」と表明(Inquirer, 2026年8月15日)
- 大統領府は世論調査による「マインド・コンディショニング」を警戒(Inquirer, 2026年8月13日)
- COMELECのガルシア委員長は「2028年選挙は必ず来る」と発言(GMA, 2026年5月7日)。注 この発言は、任期延長・憲法改正(Cha-cha)による選挙先送り観測が絶えないことへの牽制と読める
- 有権者登録は2027年2月再開の見込み(Cebu Daily News, 2026年5月19日)。「2年間の登録期間」を設ける方針も報じられている(Philstar, 2025年6月23日)
14. 日本から見た「知らないと間違える点」まとめ
| # | 注 よくある誤解 | 正しい理解 |
|---|---|---|
| 1 | 大統領と副大統領はセットで選ばれる | 別々の投票。異なる陣営の組み合わせが普通に起きる |
| 2 | 上院は州代表 | 全国区。州代表制ではない |
| 3 | 政党名簿は「2%取れないと議席ゼロ」 | 2009年BANAT判決以降、議席が余れば2%未満にも配分 |
| 4 | 政党名簿は弱者代表の枠 | 2013年Atong Paglaum判決で要件が大幅緩和され、実態は政治一族・業者も参入 |
| 5 | 2025年の投票率は◯◯% と一つの数字で書く | 注 81.65% と 82.20% の2系統が流通。分母が違う。両論併記が安全 |
| 6 | フィリピンの選挙は3年ごとに全部やる | 注 バランガイ・SK選挙とBARMM議会選挙は別サイクル |
| 7 | 2026年11月にバランガイ選挙がある | 注 2026年8月24日に上院委員会が延期法案を可決。実施は不確定 |
| 8 | 集計機は「Smartmatic」 | 2025年からMiru Systems(韓国)のACMに交代済み |
| 9 | オンライン投票を入れたから在外投票率が上がった | 注 逆。2022年38%→2025年18.12%に大幅低下 |
| 10 | 選挙費用の上限は現実的な水準 | 注 1991年制定の額のまま。制度は実質機能していない |
| 11 | 政党の議席数=政権基盤 | 注 選挙後の大量移籍(turncoatism)で勢力図は変わる |
| 12 | 「世界最大の自動選挙」は公式の順位 | 機器台数を根拠にした関係者の表現。第三者機関の順位認定は未確認 |