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フィリピンの小売と外食 ― モール・サリサリ・コンビニ・EC・外食チェーンの現在地

情報基準日:2026-08-26 / 分野:経済・産業・ビジネス


0. この資料の要点(先に結論)

論点 2026年8月時点の実像
マクロ 2026年2月28日開始の中東紛争による石油ショックでインフレが急反転(1月2.0%→4月7.2%→7月6.2%、PSA)。Q2 2026のGDPは+2.3%=パンデミック後の最低
消費 Visa調査で「Q2に新興アジアで最も急激な消費支出の落ち込み」(Manila Bulletin、2026年7月31日)
モール SM Primeが2026年3月20日に国内90店舗目(SM City Zamboanga)を開業(GMA/Inquirer)
小売 Robinsons Retailが2026年8月31日にPSE上場廃止=ゴコンウェイ家による非公開化
コンビニ 7-Elevenが2026年に5,000店を目標、2026年2月時点で約4,500店規模
外食 ジョリビーは2025年に全世界10,341店まで拡大したが、2026年8月に出店計画と投資を下方修正

最初に知っておくべき落とし穴:日本語のフィリピン紹介記事の多くは「高成長・消費爆発」を前提に書かれている。2026年の現地は真逆の局面にある。2025年までの数字をそのまま持ち込むと判断を誤る。


1. 2026年のマクロ環境 ― 中東紛争が消費を直撃

1-1. インフレの急反転

月(2026年) 総合インフレ率 備考
1月 2.0% BSP目標レンジ内
2月 2.4% 紛争勃発(2月28日)直前
3月 4.1% 中東情勢が価格に波及
4月 7.2% 3年ぶりの高水準
5月 6.8% 燃料価格の値下げ(rollback)開始
6月 6.4%
7月 6.2% 4か月ぶりの低水準(BusinessWorld、2026年8月6日)

出典:フィリピン統計庁(PSA, Philippine Statistics Authority)公表値を Inquirer.net・GMA Network・Philstar・BusinessWorld・DZRH が報じたもの。

数値の性格:これは確定値(PSAの月次CPI)であり、業界推計ではない。ただし「7.2%」は総合インフレであって、食品・交通の体感はこれより高い。

1-2. 成長率と国際機関の見方

実績(PSA、2026年8月7日発表)は Q1 +2.8%/Q2 +2.3%。見通しは世界銀行 3.7%(2026年6月、「中東戦争のなか」と明記)、IMF 4.1%(2026年4月、下方修正)、ADB/IMFは2026年7月にさらに下方修正。 S&Pは見通しを「stable」に引き下げ、Fitchは格下げ可能性に言及(2026年)。政府が掲げてきた「Aランク格付け」目標は事実上後退した。

1-3. 小売・外食への波及経路

  1. 燃料・電力コスト→ 店舗運営費と物流費が上昇(SM Prime、ジョリビー、Shakey'sがいずれも「コスト増が増収を相殺」と説明)
  2. 実質所得の低下→ 低所得層ほど打撃が大きく、単価の安い業態へ流れる
  3. 海外送金(OFW remittances)→ Capital Economicsが中東紛争による送金・ペソへの影響を警告(2026年)。フィリピン消費の下支え役である送金が揺らぐ点は、この国特有のリスク

中東紛争を「遠い出来事」として小売・外食の話から切り離すと、2026年のフィリピンの数字は説明できない。


2. モール ― SM Prime と Ayala Malls

2-1. SM Prime Holdings(SMPH/シー家 Sy family)

項目 数値 出典・時点
国内モール数 90店舗目をSM City Zamboangaで開業 GMA Network / Inquirer、2026年3月18〜20日
年間来場 2025年に14億回の来館 ANC 24/7、2026年2月26日
1日あたり来場 520万人 Inquirer.net、2025年3月13日
2026年設備投資 1,000億ペソ(P100B) Manila Bulletin、2026年2月16日
Q1 2026 純利益 116.6億ペソ(横ばい、モール賃料が下支え) PNA、2026年4月28日
H1 2026 純利益 245億ペソで横ばい(コスト増が増収を相殺) Inquirer / GMA / Daily Tribune、2026年8月11日
2025年1〜9月 純利益 372億ペソ(「厳しい年」) Inquirer.net、2025年11月11日

進行中の主な案件(2026年) - Harrison Plaza再開発に60億ペソ、2027年開業目標(GMA、2026年4月1日)/SM Nuvali(ラグナ州)を2026年10月〜年末に開業(Rappler/Inquirer、2026年4〜5月)/セブで6万㎡増床(Inquirer、2026年2月19日) - 中国:厦門(Xiamen)で24時間リテール区画を開設、7,000万米ドルのホテル合弁、福建省に集中(InsiderPH/Philstar/BusinessWorld、2026年6〜7月) - 資金調達:180億ペソのリテール債を起債(2026年5月)、一方で120億ペソ債は条件待ちで延期(BusinessWorld、2026年6月4日)

「100モール」の扱い:BusinessWorld(2024年5月13日)は「SMは早ければ2026年に100店舗目」と報じたが、2026年8月時点で到達していない。日本語記事で「SMは100モール」と書かれていたら古い見通しの引き写しである。

「世界有数のモール運営会社」という表現:SM Prime は総賃貸可能面積(GLA)ベースで世界最大級のモール運営会社の一つとされることが多いが、本調査では総GLAの一次資料(同社IR)を取得できず(smprime.com はボット対策で403/CAPTCHA)、順位・総面積は未確認。順位を書くなら「どの指標か」を明示すべき箇所。

2-2. Ayala Malls(Ayala Land/アヤラ財閥)

Rappler(2026年8月15日)は「改装は終わった。次はテナントの入れ替えだ」と、箱よりMD(品揃え)勝負に移った局面を報じている。

2-3. 商業不動産の需要構造

メトロマニラのリテール需要はグロサリーが37%で最大(PRIME Philippines、BusinessWorld 2026年8月11日)。 空室率・総ストック面積は未確認(Colliers等の有料レポートが一次情報)。


3. 伝統小売 ― パレンケとサリサリストア

3-1. サリサリストア(sari-sari store)

フィリピン小売の土台は今もモールではなく、住宅街の軒先にある雑貨店=サリサリストアである。

論点 数値(出典)
店舗数 約130万店(DTI=貿易産業省のサリサリ支援プログラム報道/Philstar 2024年5月29日、AsiaTechDaily 2024年8月)
市場規模目標 2030年に2.4兆ペソ(BusinessWorld 2025年6月16日/Philstar 2025年6月18日)
デジタル化 電子ウォレット受け入れが2025年8月末までに+75%(BusinessWorld、2025年10月27日)
AI活用 AI導入店で2週間の売上が+46%(Marketing-Interactive 2025年12月3日/BusinessWorld 2026年1月12日)
店舗数の伸び マイクロ小売の店舗数が2025年に+21%(Manila Standard、2026年4月1日)

「80万店超」という数字について:日本語・英語の記事で長く流通してきた「サリサリストアは80万店以上」という数字は、本調査では一次出所(政府統計・調査会社名・年)を特定できなかった=出所未確認。現在DTI関連報道で最も広く使われているのは130万店である。80万店は2010年代の古い推計が更新されずに引き写されている可能性が高い。新旧を並べて扱うこと。

3-2. 2026年のサリサリ経済

インフレ下でまとめ買い(bulk buying)が増えた(InsiderPH、2026年4月23日)。値上がり前に買い置きする行動で、これは「消費が強い」のではなく防衛的支出である。 単月の売上増をもって「消費回復」と読むと誤る。

3-3. パレンケ(palengke/公設市場)

生鮮の価格形成の中心。2026年のインフレは食品・燃料主導であり、パレンケの店頭価格が世論と政治(価格上限=price cap 議論)に直結する。 全国のパレンケ数・取扱高は公的統計が乏しく未確認


4. 近代小売 ― 財閥系4グループ+ディスカウンター

4-1. 主要プレイヤー一覧

グループ 主な業態 2025〜2026年の状況
SM Investments(シー家) SM Store、SM Supermarket、Savemore、SM Hypermarket、Alfamart H1 2026:売上3,392億ペソ(+6%)/純利益459億ペソ(+8%)/総資産1.82兆ペソ利益の内訳は銀行47%・不動産27%・小売15%・投資11%で、小売は利益の15%にすぎない(SM Investments 2026年8月13日発表)。「小売が牽引」と書けるのは増益寄与(伸び)の話であって利益構成ではない。SMICは実質銀行持株会社に近い(2026-08-25 検証で補記。出典:分野資料「財閥・企業グループ」§
Puregold Price Club(ルシオ・コー Lucio Co/現CEOはVincent Co) Puregold、S&R(会員制倉庫型)、Lawson 2025年通期 純利益113億ペソ(+8.8%)/H1 2026 純利益58.7億ペソ(+10.8%
Robinsons Retail(JG Summit/ゴコンウェイ家) Robinsons Supermarket、The Marketplace、Southstar Drug、Handyman、Toys "R" Us、Daiso 2026年8月31日にPSE上場廃止(非公開化)
Ayala 主にモール運営(テナント業) AREITへの資産移管を推進

4-2. Puregold(ルシオ・コー)

項目 数値 出典・時点
店舗数 757店 InsiderPH、2025年5月6日(Q1 2025時点)
2025年通期 純利益 113億ペソ(+8.8%)、配当57億ペソ Inquirer/Manila Bulletin/GMA、2026年4月
Q1 2026 純利益33億ペソ(+24%)、売上590億ペソ InsiderPH、2026年5月7日
H1 2026 純利益58.7億ペソ(+10.8%) Manila Bulletin/Inquirer/BusinessWorld、2026年8月
2026年投資 88億ペソ、新規25店+S&R倉庫2棟 各紙、2026年

注目点:不況局面でPuregoldは増益、外食のShakey'sは減益。これは典型的なダウントレード(下方消費移動)で、外食を減らして自炊・食材購入に回る動きが数字に出ている。

4-3. Robinsons Retail の非公開化(2026年)

上場廃止日=2026年8月31日(PSE承認 2026年8月19日)/公開買付価格=1株48.30ペソ/JE Holdings経由でゴコンウェイ家が99.69%取得/事前に韓国系ディスカウント「No Brand」を2026年6月に撤退。

(2026-08-25 検証)買付総額が食い違う。両方を消さずに併記する。

出所 買付総額 内訳
InsiderPH 2026年8月25日(原文を再取得して確認) 約111億ペソ(P11.1 billion) 229,580,000株 × 48.30ペソ。229.58百万 × 48.30 = 110.89億ペソで算術が合う。取得後の持分99.69%
本稿初稿 約184億ペソ/約8.5億米ドル 出所不明。184億ペソは111億ペソと一致せず、さらに184億ペソ ≒ 3億米ドル前後(2026年の1ドル≒60ペソ前後)であって8.5億米ドルにもならない内部でも整合しない

したがって「約8.5億米ドル」は本検証では支持できない。社内資料で金額を書くなら、算術が検証できる 「229,580,000株 × 48.30ペソ = 約111億ペソ」(InsiderPH 2026-08-25) を用いること。184億ペソ側は、①複数段階の買付を通算した額、②別局面の額、③報道の転記差、のいずれかと考えられるが一次確認できず未確認「出所により数値が異なる」。

出典:InsiderPH「Final goodbye: Robinsons Retail to leave PSE on Aug. 31」(2026年8月25日、2026-08-25 検証で原文再取得)ほか。 一部報道は「50.3ペソへの上乗せ」に言及するが未確認。同記事は「13年超の上場」と表現している(RRHIのPSE上場は2013年11月=2026年8月まで約12年10か月であり、「13年余」は端数の丸めと見られる。年数を厳密に書く必要がある場面では「約13年」とすること)。低成長局面で四半期開示に縛られずに構造改革をやるという判断と読める。

4-4. ハードディスカウンター(DALI、O!Save)

2025年から急伸。Manila Bulletin(2025年9月1日)は「DALI、O!Saveが売上急増で市場を攪乱」と報じ、Philstar(2025年6月)は「サリサリ店が支配する小売市場のdisruptors」と位置づけた。2026年のインフレ局面はこの業態にとって最大の追い風である。 全国店舗数の一次情報は非公開で未確認


5. コンビニエンスストア

チェーン 運営 店舗数 出典・時点
7-Eleven Philippine Seven Corp.(PSE: SEVN、タイCP系) 4,000店(2024年10月)→約4,500店(2026年2月)→5,000店目標(2026年) Inquirer/BusinessWorld/ABS-CBN 2024年10月17日、Business Wire(NCR Voyix提携)2026年2月24日、BusinessWorld 2025年7月18日
Alfamart SMグループ×インドネシアAlfamart 2,000店(2024年9月)、2025年に+200店計画、2025年10月にフランチャイズ制導入 InsiderPH/Philstar/GMA 2024年9月、Philstar 2025年2月27日
Ministop / Lawson / FamilyMart 各社 未確認

Philippine Seven の2026年 - 2026年計画:新規400店、設備投資最大50億ペソ(BusinessWorld、2026年4月24日)。H1 2026 純利益18.4億ペソ(Inquirer、2026年8月13日) - 「インフレに苦しむ消費者から恩恵」(Inquirer、2026年5月18日)=まとめ買いより小口・都度買いへという逆説的な追い風。カード決済の全面導入で客単価・来店数も増加(InsiderPH、2026年4月13日) - 2026年8月は豪雨・洪水で売上が失速(Manila Bulletin、2026年8月19日)。フィリピンの小売月次は気象要因のノイズが極めて大きい


6. 小売業自由化法(RA 11595)と外資参入の実際

6-1. 法改正で何が変わったか

2021年12月成立の 共和国法第11595号(RA 11595) が、2000年の RA 8762(Retail Trade Liberalization Act) を改正した。

項目 旧:RA 8762(2000年) 新:RA 11595(2021年)
100%外資が可能な最低払込資本 750万米ドル(カテゴリーC) 2,500万ペソ(P25,000,000)
1店舗あたり最低投資額 83万米ドル(カテゴリーC) 1,000万ペソ(P10,000,000)(複数店舗の場合)
その他の要件 高級品専門店は1店舗25万米ドル(カテゴリーD) SEC(法人)/DTI(個人事業)への登録、BSPによる資本のフィリピン国内銀行預け入れ証明相互主義(本国がフィリピン人小売業者の参入を認めていること)。既存外資はDTIに事前適格の証明を出せば店舗あたり要件を免除

出典:RA 8762 および RA 11595 の条文(LawPhil)。 ペソ建て・ドル建ての比較なので単純換算には注意が必要だが、実務上の敷居が桁違いに下がったのは明らか(旧750万ドル≒4億ペソ超 → 新2,500万ペソ)。外国人雇用は労働法の「有能なフィリピン人が得られない場合」の規定に従う(Section 7)。

(2026-08-26 改正確認)条番号の対応 ── 「改正法の第◯条」と「改正された RA 8762 の第◯条」を混同しないこと。(RA 11595 承認 2021-12-10。2026年8月時点で RA 11595 を改正した共和国法は確認できない)

RA 11595 の条 改正・廃止した RA 8762 の条 内容
第1条 第3条(2) 「1店舗あたり最低投資額」の定義
第2条 第5条 外資参入要件の本体(払込資本2,500万ペソ、複数店舗は1店舗1,000万ペソ、相互主義)。旧カテゴリーA〜Dの区分はここで消えた
第3条 第6条 DTI・SEC・NEDA が3年ごとに最低払込資本を見直す("shall review the required minimum paid-up capital every three (3) years from the effectivity of this Act")
第4条 第7条 外国人雇用(労働政策)
第5条 第8条・第9条 両条を削除
第6条 新 第8条 国産品の販売促進を新設
第7〜10条 旧第10〜15条 第9〜14条へ繰下げ(一部改正)

「RA 11595 第5条」と書くと、実際には旧第8条・第9条の削除条項を指してしまう。外資要件を引くときは「RA 8762 第5条(RA 11595 第2条による改正後)」と書くのが正しい。(出典:LawPhil 掲載 RA 11595 本文 https://lawphil.net/statutes/repacts/ra2021/ra_11595_2021.html、2026-08-26 取得)

6-2. 実際に何が起きたか(2025〜2026年)

法改正の効果は「参入ラッシュ」というより選別的である。

動き 内容 出典・時点
IKEA パサイ店が2025年の「Store of the Year」。2026年12月にセブ(Ayala Malls Gatewalk)でビサヤ初出店 Manila Bulletin 2026年5月15日、Manila Times/InsiderPH 2026年6月
Uniqlo(Fast Retailing) 東南アジア最大の物流拠点をカヴィテに開設 Inquirer / Manila Times、2026年4月18日
Marks & Spencer 2026年5月からフィリピン全店を閉鎖 marketech apac、2026年2月26日
No Brand(韓国イーマート系) 2026年6月に撤退 InsiderPH、2026年3月25日

読み方:制度は開いたが、2026年のマクロ環境(インフレ7%台・成長率2%台)で中価格帯のアパレル・雑貨は撤退、超低価格帯(IKEA・ユニクロ・ダイソー・MINISO・ディスカウンター)は拡大という二極化が起きている。 「RA 11595で外資が殺到した」という説明は2026年時点では正確でない。 なお、RA 11595施行後に何社の外資小売が登録したかという公式集計は、本調査では確認できず未確認


7. EC(電子商取引)

7-1. 市場規模

指標 数値(出典・時点)
フィリピンのデジタル経済GMV 2025年に360億米ドル(+16%)(e-Conomy SEA 2025=Google・Temasek・Bain/各紙 2025年11月25〜27日)
東南アジア全体のEC GMV 2025年に1,576億米ドル(+22.8%)(Momentum Works、2026年4月)
TikTok Shop 東南アジアGMV 2025年に456億米ドル(前年比2倍)(TNGlobal、2026年2月11日)
フィリピンECの中期目標 750億米ドル(InsiderPH、2025年11月6日)

区別すべき点:「360億ドル」はデジタル経済全体のGMV(EC+配車+出前+旅行+オンラインメディア)であって、EC単体ではない。日本語記事でこれを「EC市場360億ドル」と書いているものがあれば誤り。EC単体の内訳は本調査では未確認。

7-2. プレイヤー

東南アジアのオンライン小売は3プラットフォーム(Shopee・TikTok Shop・Lazada)に集中(BusinessMirror、2026年4月14日)。

プラットフォーム 2025〜2026年の動き
Shopee(Sea Group) 依然として最大手。アフィリエイト経済圏が拡大(BusinessWorld、2026年2月11日)
TikTok Shop フィリピン人セラーの2025年売上が+200%超(Good News Pilipinas/OneNews/InsiderPH、2026年1月)。ライブコマース=discovery e-commerceが成長エンジン
Lazada(アリババ) 「6.6セール」でGMVが+260%(BusinessWorld、2026年6月15日)

プラットフォーム別のフィリピン国内シェアは、本調査で一次資料を確認できず未確認。SEA全体の数字をフィリピンのシェアとして書かないこと。


8. 外食(フードサービス)

8-1. ジョリビー(Jollibee Foods Corporation / JFC)

2025年通期(同社発表 "JFC Delivers Record Q4 Results and Strong Full Year 2025 Finish")

項目 数値
システムワイドセールス +16.6%(金額では2025年に4,550億ペソ:ABS-CBN 2026年6月26日)
売上高 +13.0%
営業利益 201億ペソ(+19.3%)
親会社株主帰属純利益 109億ペソ(+5.4%)
総店舗数 10,341店(+5.9%)
── うちフィリピン 3,504店
── うち海外 6,837店
2025年の新規出店 1,126店=同社史上最多

海外内訳(2025年末、同社発表):Compose Coffee(韓国)2,972/The Coffee Bean & Tea Leaf 1,079/Highlands Coffee(ベトナム)985/中国 576/EMEAA 437/Milksha(ミルクティー、台湾)357/北米 348/Tim Ho Wan 83。

構造的な事実:JFCはもはや「フィリピンのハンバーガー会社」ではない。Compose+CBTL+Highlands+Milkshaだけで 5,393店(2,972+1,079+985+357)=全10,341店の約52%がコーヒー・お茶チェーンである。 (2026-08-25 検証で修正)初稿は「約6割」としていたが、5,393 ÷ 10,341 = 52.2% であり誤り。正しくは「半分強」。(算術照合)

時点に注意(2026-08-25 検証で補記):上記は2025年末の店舗網。2026年上期末は世界計 10,767店(+6.4%)/フィリピン3,516店/海外7,251店で、Compose Coffee 3,098、CBTL 1,097、Highlands 1,062、中国602、EMEAA 455、Milksha 358、北米340、Shabu All Day 156、Tim Ho Wan 83 に増えている(出典:JFC 2026年8月18日リリース=分野資料「食品加工と飲料」§2.6と相互確認)。2025年末と2026年上期末の数字を混ぜないこと。

国内ブランド:Jollibee、Chowking(中華系ファストフード)、Mang Inasal(炭火焼きチキン+ライス食べ放題)、Greenwich、Red Ribbon。 ブランド別の国内店舗数内訳は同社の当該リリースに記載がなく未確認

2026年の失速

時期 出来事
2026年3月 2026年のシステムワイドセールス成長を最大12%と案内(GMA)
2026年5月12日 値上げを実施し、出店計画を見直し(Manila Bulletin)。地政学リスクによるコスト圧力が理由
2026年8月11〜12日 Q2 2026に四半期最高益34億ペソ(値上げによるマージン回復)。一方でH1の利益は減少、2026年ガイダンスを下方修正(Inquirer/Manila Times/Philstar)
2026年8月12日 2026年の出店目標と投資目標を削減(GMA Network)/8月18日に同社が「Record Q2 2026 Results, with Margin Recovery from Controlled Pricing」を発表

フィリピン国内の地方カバー率は約15%にとどまる(BusinessWorld、2026年6月29日)=地方には依然として巨大な空白がある、というのが同社の説明。 2026年8月14日にAOL等が「急成長のチキンチェーンが207店を閉鎖」と報じたが、どのブランドの数字か本調査では特定できず未確認。安易に「ジョリビーが207店閉鎖」と書かないこと。

8-2. その他の外食チェーン

企業 2025〜2026年の業績 出典・時点
Shakey's Pizza Asia Ventures(SPAVI) 2025年コア利益 9.52億ペソ(▲20%)、通期最終利益 ▲32%H1 2026 純利益2.32億ペソ(▲33%)、Q2は▲41% Inquirer/Manila Bulletin 2026年4月16日、Inquirer/BusinessWorld 2026年8月13〜14日
Max's Group Inc.(Max's、Pancake House、Yellow Cab、Krispy Kreme等) 2024年 純利益4.19億ペソ(店舗閉鎖で減益) Inquirer.net、2025年4月16日。 2025〜2026年の数値は未確認

外食セクター全体の読み方:2026年は「値上げで粗利を守れた大手(JFC)」と「値上げしきれず利益が半減した中堅(Shakey's)」に分かれた。 「フィリピン外食は成長市場」という一般論だけで投資判断をすると、2026年の実態を見誤る。

8-3. コーヒーとミルクティー

プレイヤー 状況
Starbucks Philippines(Rustan's Coffee運営) 2026年7月21日にロイヤルティ制度を刷新(GIZGUIDE)。2026年4月にMPowerの3MW電力アグリゲーションに60店が参加。 全国店舗数は未確認
Pickup Coffee(ローカル発の低価格チェーン) 2026年3月に500店突破(創業4年)、2026年末に800店目標、月20店ペース。2026年からフランチャイズ開放、最大800万米ドルの転換社債で資金調達(PNA/BusinessWorld/ABS-CBN、2026年3〜5月)
Compose Coffee(JFC傘下の韓国ブランド) 2026年8月8日にフィリピン1号店(Manila Bulletin)。世界3,098店(2026年6月末)/2,972店(2025年末)2026-08-25 検証で時点を明示(出典:JFC 2026年8月18日リリース)
Tim Hortons 2017年にフィリピンで東南アジア初出店(adobo Magazine)。 現在の店舗数は未確認
ミルクティー(Milksha、Chatime、Macao Imperial、Serenitea等) JFC傘下Milkshaが世界358店(2026年6月末)/357店(2025年末)。 フィリピン国内の市場規模・店舗数の一次統計は未確認

2026年の構図:Starbucks(高価格)vs Pickup Coffee/Compose Coffee(低価格・高速出店)。インフレ局面では低価格チェーンが有利で、World Coffee Portal(2026年5月14日)はPickup Coffeeを「首位を狙う存在」と報じた。


9. 消費者行動 ― 所得階層・サリサリ経済・BNPL

9-1. 2026年の消費者像

Rappler(2026年8月13日)は「インフレが噛みつく中、フィリピン人は"intentional(意図的な)"買い物客になった」と表現した。要するに衝動買いが減り、必要なものだけを、より安い業態で買う

現象 具体(出典)
ダウントレード グロサリー各社は苦戦(Manila Bulletin 2026年3月2日)、一方でPuregold・S&Rは増益
小口購買 7-Elevenが「インフレに苦しむ消費者から恩恵」(Inquirer、2026年5月18日)
まとめ買い サリサリ店で値上げ前の buy-ahead が増加(InsiderPH、2026年4月23日)
支出全体 家計最終消費支出は2026年に14.1兆ペソ規模だが伸びは鈍化見込み(InsiderPH、2026年2月13日)
国際比較 Q2に新興アジアで最も急激な支出減(Visa/Manila Bulletin、2026年7月31日)

9-2. 所得階層

PIDS(Philippine Institute for Development Studies)は所得階層を貧困線の倍数で定義しているが、本調査ではPDFがCAPTCHAで取得できず、閾値と各階層の世帯比率は未確認。同研究所の要旨は「フィリピン世帯の半数未満しか中間層に属さない」(PN 2018-18、2018年12月)。ISEAS(2024年12月、Jose Ramon G. Albert)も「中間層は拡大しているが脆弱(Growing but Vulnerable)」と結論づけた。

実務上の含意:「中間層が拡大している」前提でプレミアム商材を持ち込むのは2026年のフィリピンでは危険。人口の大半はCDE層で価格弾力性が非常に高い。

9-3. BNPL(後払い)

指標 数値(出典・時点)
ユニークBNPL利用者 2,840万人(2024年)、フィリピン人の4人に1人が利用経験(UnaCash調査/FF News、2025年3月25日)
2026年の動向 「戦時下の四半期における財布の危機 ― BNPLの台頭」(BusinessWorld、2026年6月15日)
インフラ Pine Labs がGCash(利用者9,400万人)と提携しBNPL展開(Sahi、2026年5月12日)。「2026年にデジタル決済は成熟期に入る」(Newsbytes.PH、2026年2月24日)

BNPLの伸びは"好調"のサインではない。2026年のBNPL拡大は、実質所得の低下を分割払いで埋めている局面と読むのが自然で、家計の債務健全性という別のリスクを内包する。


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