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電力と電気代

情報基準日:2026-08-25 / 更新:2026-08-30 / 分野:エネルギー・電力・廃棄物

編集部注:本記事で扱う分野には、運営会社が事業として関与する領域が含まれます。記事は公開情報・一次情報をもとに編集しています。

2026年7月、DOE(エネルギー省)が「フィリピンの電気料金は東南アジアで最も高くなった」と公式に認めた。 6月の全国平均 12.43ペソ/kWh がシンガポールの 12.34ペソ/kWh を 0.09ペソ上回った(DOE 次官 Rowena Cristina Guevara、2026年7月20日/Philstar 報道)。 2026年は中東(イラン)情勢による石油ショックがこれを直撃し、3月24日に国家エネルギー非常事態(EO 110)が宣言された。 5月13〜15日にはルソンで3日連続レッドアラート、メラルコ管内で最大約190万戸が輪番停電を受けた。

注 この文書は初稿を全面的に書き直したものである。初稿にあった「EO 110は6月30日で終了」という記述は誤り(後述 §4)。


1. 制度の骨格 ― EPIRA(RA 9136)を理解しないと料金が読めない

2001年成立の電力産業改革法(Electric Power Industry Reform Act of 2001, RA 9136, 通称 EPIRA)が現在の構造をすべて決めている。要点は「垂直統合の解体」「発電の非公益事業化」「コストの完全転嫁」。

EPIRA は原文のままではない(2026-08-26 改正確認)。 LawPhil の RA 9136 頁は2001年の制定時原文であり、改正が溶け込んでいない。2026年8月時点で確認できた改正法は次の3本。

改正法 成立 改正された RA 9136 の条 何がどう変わったか
RA 10150 2011 第73条 ライフライン料金(交差補助撤廃の免除)を10年延長
RA 11552 2021-05-27 署名 第73条(RA 10150 改正後のもの) 免除期間を50年へ。RA 11310(4Ps法)受給世帯を「qualified marginalized end-user」として法定対象化。ERC は消費量・補助・料率を PSA データを主に用いて設定、2年ごとに実施評価、毎年 Joint Congressional Energy Commission に報告
RA 12179 2025-04-18 署名なしで法律化 第50条 PSALM の法人存続期間を原任期満了日 2026年6月26日から10年延長(=2036-06-26)。延長期間中の stranded cost/stranded debt 転嫁を原則禁止。満了時は資産・負債が国庫に帰属

出典:lawphil.net 収録 RA 11552・RA 12179 原文。「RA 9136 第◯条」を引くときは、上記3条に該当しないかを必ず先に確認すること。

区分 内容 主なプレーヤー
発電(Generation) 公益事業ではない=料金を直接規制されない。ERC承認済みの二者間PSA(電力供給契約)と WESM で価格が決まる San Miguel Global Power、Aboitiz Power、First Gen/Prime CoreGen、Meralco PowerGen(MGen)、ACEN 等
送電(Transmission) 資産は国有(TransCo)。運営はNGCPが50年フランチャイズ(RA 9511)で受託 NGCP
配電(Distribution) 私営配電会社(DU)+電力協同組合(EC)。オングリッドで106社(ICSC集計、2026年7月) Meralco、Visayan Electric 等/NEA監督下のEC 121組合
小売(Supply) RCOA(小売自由化)で対象需要家は供給者を選べる RES(小売電気事業者)
市場運営 WESM(卸電力スポット市場)を IEMOP が独立運営 IEMOP
規制 ERC(エネルギー規制委員会)。委員長は Francis Saturnino Juan ERC
政策 DOE。長官は Sharon S. Garin(2025年7月10日就任、第14代/PIA・PCO) DOE
旧国営資産処理 PSALM(NPC資産の民営化・債務処理)。RA 12179(2025年4月18日に大統領署名なしで法律化)が EPIRA 第50条を改正し、法人存続期間を「原任期満了日 2026年6月26日から10年」延長=2036年6月26日まで。延長期間中は、本法成立前にERCが承認したものを除き stranded cost/stranded debt を需要家に転嫁できない。存続期間満了時は資産・負債・財産が国庫に帰属(2026-08-26 改正確認。出典:lawphil.net 収録 RA 12179 §1 原文) PSALM

RCOA(小売自由化)の2026年の大変更

項目 従来 2026年6月26日から
契約可能(contestable)の下限 平均月間ピーク需要 500kW 100kW(ERC決議22号 s.2025、2025年11月4日決定)
対象拡大 ── 新たに約1.2万口(学校・ホテル・小規模工場・BPO等)が供給者を選択可能に
GEOP(グリーン電力選択制度、RA 9513) 100kW 100kW(変更なし=CREM/RAPと水準が揃った)

注 日本語の解説記事では「自由化の閾値は1MW」「750kW」と書かれたものが残っている。2026年6月以降は100kWが正しい。 また基準は「kWh(総使用量)」ではなく「kW(平均月間ピーク需要)」である。


2. 電気代の中身 ― 請求書の分解(メラルコ 2026年7〜8月)

構成要素 2026年7月の水準 誰の収入になるか
発電料金(Generation) 9.2504ペソ/kWh(総額の約62%) 発電会社。DUの利益にならない素通し(pass-through)
├ PSA(EPIRA後の電力供給契約) 8.8694ペソ(+0.2678)/調達量の72% 発電会社
├ First Gas/Prime CoreGen 10.6489ペソ(+0.3613)/22% 同(この期間で最も高い電源)
└ WESM(スポット) 8.0337ペソ/6% 市場
送電料金(Transmission) 8月請求分で 1.7560ペソ/kWh(前月1.4367から+22.22%、NGCP発表) うち付帯サービス(AS)分 1.0391ペソ(+30.85%)はNGCPの収入ではなくAS契約発電所とIEMOPに渡る
配電料金(Distribution) 2022年8月の -0.0360ペソ以降、据え置き Meralco
システムロス(System Loss) 上限内で転嫁可(メラルコの2026年Q1実績 5.72%、上限6.5%) DU(回収分)
税・その他 FIT-All、UC-ME(離島補助)、VAT 12% など 政府・基金

発電+送電+システムロスで住宅用請求額の約77%を占める(各種報道の共通認識)。注 「メラルコが高い」ではなく「メラルコが集金している素通しコストが高い」という構造理解が必要。


3. 2026年のメラルコ料金推移(住宅用・標準世帯の総合単価)

月 単価(ペソ/kWh) 前月差 主な要因(出典:Meralco公式アドバイザリー/GMA・Rappler・Manila Times・PNA報道)
1月 12.9508 ↓(2か月連続下落) ──
2月 13.1734 +0.2226 送電料金 +0.1975(予備力市場のAS費用増+送電サービス料)。UC-ME(離島電化ユニバーサルチャージ)+0.0770 の徴収開始
3月 13.8161 +0.6427 送電料金 +0.2880。NGCPの予備力市場AS費用が70%急増し、当月の送電料金のほぼ半分を占めた。発電料金 7.8607(+0.2209、First Gas–Sta. Rita のPPA第2次延長の固定費 約+0.38、WESMは -1.0952)
4月 14.3496 +0.5335 ペソ安。発電料金 8.3864(+0.5257)。供給月3月の為替が3ペソ以上動き 60.748ペソ/ドル。WESM +2.3955。送電は -0.0656
5月 14.3345 -0.0151 税・その他 -0.1482。ERCがGEA-All(0.0371ペソ)の徴収を5〜6月停止、国産天然ガス由来電力のVAT免除が一部適用。発電料金は 8.7942 に上昇
6月 14.4833 +0.1488 発電料金 9.0704(+0.2762)。WESM 7.0281(ルソン5/13〜15のレッドアラート)。二次価格上限(secondary price cap)の発動は全時間の3.89%。PSA費用の54%が為替連動。送電 -0.1525
7月 14.8261 +0.3428 Malampaya天然ガス田の1か月定期補修(6月15日開始)でSta. Rita/San Lorenzoが高価な輸入LNGに切替。First Gas +0.3613、PSA +0.2678(中東紛争の継続)、WESM 8.0337。二次価格上限の発動が全時間の11.1%に拡大。VAT非課税のMalampayaガスが使えずVAT増 +0.0960
8月 14.7833 -0.0428 ERCが認可した95.1億ペソの還付が反映(住宅用 -0.5861ペソ/kWh、8月から6か月間、請求書上は "AWAT Refund/(Collect) 2")。既存還付 -0.4278 も継続。打ち消し要因:NGCP +0.3024、税等 +0.2113(FIT-All増、LNG・液体コンデンセート利用増による課税)、発電 +0.0296。GEA-All 徴収停止は8月も継続

200kWh使用世帯への影響:3月は約+129ペソ、4月は約+107ペソ、7月は約+69ペソ、8月は約-9ペソ(Meralco試算)。

95.1億ペソ還付の正体:2025年1〜12月の「実績加重平均料金(AWAT)」がERC承認済み配電料金を上回った差額の返還。恒久的な値下げではなく6か月限りの一時還付である。


4. 国家エネルギー非常事態(EO 110)― 事実関係を正す

経緯

日付(2026年) 出来事
2月下旬 ホルムズ海峡の閉塞が世界の石油供給を混乱(報道では世界供給の約20%相当)
3月20日 国内石油在庫が 45日分(開戦前は55〜57日分)
3月23日 大統領府は「石油危機ではなく価格の混乱」と説明
3月24日 マルコス大統領が Executive Order No. 110 に署名。国家エネルギー非常事態を宣言(フィリピンは同紛争を理由に非常事態を宣言した世界最初の国と報じられた)。同時に UPLIFT(Unified Package for Livelihoods, Industry, Food, and Transport)を発動、大統領を委員長とする省庁横断委員会を設置
3月25日 RA 12316 署名(2028年12月31日までの燃料税停止を可能にする法的枠組み)。Garin長官署名のDOE通達で全事業者に燃料節約・優先給電を指示
3月26日 0時05分 ERCが WESM を停止(ルソン・ビサヤ・ミンダナオ全系統)。ERC決議10号 s.2026 で Modified Administered Price を適用。石炭火力は 6,000ペソ/MWh の固定管理価格で精算され、追加補償は認められない。DOEは Special Operating Guidelines(SOG)で燃料節約を優先した給電順を運用
4月13日 LPG・灯油の物品税撤廃(LPG -3.36ペソ/L、灯油 -5.6ペソ/L 想定)
5月1日 0時05分 ERCが WESM 停止を解除、市場取引を再開(ERC委員長 Juan「暫定的な価格上限は役割を果たしたが、長期化すれば決済に意図せぬ費用を生む」)。5月のWESM価格は前月比 +38.5%
5月13〜15日 ルソンで3日連続レッドアラート(§5)
6月 Garin長官「第3四半期に非常事態を解除できる可能性」と発言
7月8日 BIRが物品税停止措置を解除(6月のドバイ原油平均が 79.45ドル/バレル で閾値80ドルを下回り自動復活)
7月27日 SONA(施政方針演説)でEPIRA改正とシステムロス転嫁禁止を要求(§11)。同日時点でDOEは「非常事態はなお数か月続く見込み」
8月19日 ペソが最安値更新、日中 61.995ペソ/ドル(7月24日の 61.85 を更新、終値 61.815/BAP・Inquirer)
8月25日 燃料小売価格が2週連続上昇(8月18日はガソリン +2.49、ディーゼル +3.84、灯油 +5.01ペソ/L/Rappler)

注注 「6月30日で終了」は誤り

注 EO 110 の効力は「発令から1年間、大統領が延長または解除しない限り」=原則2027年3月頃まで。 「6月30日」は EO が言及した“原油在庫が持つ見通しの期限”であり、宣言の失効日ではない。 一部で「6月30日に非常事態宣言が失効する」("June 30: Emergency declaration expires")という情報が流通しているが、2026年7月27日付の Philstar は「4か月目の非常事態」として現に継続中と報じている。 同様に「WESMは3月から停止したまま」も誤り。停止は3月26日〜5月1日の約5週間のみ。

危機対応の評価(2026年7月時点の総括報道)

効果があったとされる点 課題として指摘された点
PNOCがディーゼル 1億7,800万L、LPG 2.1万トンを調達。7月初旬に在庫 46.5日分へ回復(8月21日時点の全国平均 47.22日分) IBON Foundation「LPG・灯油の物品税停止だけでは不十分」
Malampaya基金から 200億ペソを燃料調達に投入 Forum for the Future「再エネ移行に関するデータ公開が不十分」
Petronが米国の制裁例外の下でロシア産 70万バレルを発注、マレーシア産ディーゼルも輸入 PIDS「燃料調達先の分散と在庫積み増しは、もっと早くやるべきだった」
Pantawid Pasada(公共交通向け燃料補助)継続、2025年繰越基金から 25億ペソ(2026年7月20日 大統領府) PIDS推計:危機で 130万〜310万人が新たに貧困線下に落ちる可能性

燃料価格の実勢:開戦前(2月末)のマニラ首都圏は RON95 約56ペソ/L・ディーゼル 約55ペソ/L → 3月にディーゼルが 130〜140ペソ/L、Philstar報道ではピーク 170ペソ/L、ガソリン120ペソ/L超。2026年8月3日時点のディーゼルは約 90.40ペソ/L(GlobalPetrolPrices)、2026年8月17日時点は 85.50ペソ/L(同、1年前は53.10ペソ/L=+61%)。Garin長官は「紛争が終わっても戦前の50〜60ペソ/Lには戻らない」と明言。

(2026-08-25 相互照合で確定)分野資料「自動車産業とEV」§7は「8月時点ではディーゼル約56.7ペソ/Lまで落ち着いた」と書いていたが、GlobalPetrolPricesの当該ページを直接取得して 2026年8月17日=85.50ペソ/L・1年前=53.10ペソ/L を確認し、誤り(危機前の水準を現在値として残置したもの)として訂正済み。2026年8月のディーゼルは85〜90ペソ/L台で高止まりが正しい。

注 「フィリピンは石油の98%を中東から輸入」という数字は、DOE(エネルギー省)データを引用したGMA News Online「EXPLAINER: Which oil products are consumed in the Philippines?」等の報道で確認できる(原油輸入の98%が中東、残り2%がマレーシア・ブルネイ等)。 またフィリピンの小売価格はドバイ原油より MOPS(シンガポール製品市況)に直接連動する(原油を輸入・精製しているのはPetronのみ)。


5. 5月の輪番停電 ― 何が起きたのか

日付(2026年) 系統状況 供給可能容量 vs 想定ピーク
5月13日 2026年最初のレッドアラート(15〜20時)。メラルコが15時23分から緊急手動負荷遮断(MLD、平均3時間) 12,447MW vs 12,537MW
5月14日 レッドアラート(ルソン15〜22時、ビサヤも) 12,464MW vs 12,877MW
5月15日 レッドアラート(14〜23時)。5月の計画外停止プラントが17基・4,828MWに 12,075MW vs 12,927MW(852MW不足)
5月18日 ビサヤはイエロー。メラルコが輪番停電スケジュールを公表 ──
5月28日 ルソンの需要が過去最高 14,534MW を記録 ──

「200万人影響」の正確な内訳

報道 数字 内容
GMA News(5/13) 20万超 初動のMLD対象顧客数(Batangas・Bulacan・Cavite・Laguna・Metro Manila・Rizal)
Daily Tribune(5/14) 約190万戸("nearly 2 million") 5月13日終日の累計。メラルコ顧客 830万戸(2026年3月末)の約23%=4戸に1戸。復旧完了は5月14日 0時14分

注 「200万人」ではなく「約190万“顧客口座(世帯・事業所)”」。1口座=複数人なので、影響人口はさらに大きい。数字を引用する際は「人」か「顧客数」かを必ず区別すること。

引き金:GNPower Dinginin(Bataan州Mariveles)1号機のトリップで 668MW 喪失、複数の送電線トリップが重なった。DOEは「全国的な電力不足ではなく運用・インフラの障害」として 約4,000MW喪失についてNGCPの調査を開始した。 緩和策:メラルコのILP(随時遮断契約プログラム)で商業・産業顧客が 約240〜270MW を自主減量。 市場面:この期間、スポット価格は 32,000ペソ/MWh の上限に繰り返し到達。ERC委員長はレッドアラート中の全時間で二次価格上限が発動したと述べ、「5月中旬の6回の輪番停電での危機管理は不十分だった」と認め、市場ルール・予備力政策・価格メカニズムの見直しを表明(2026年5月26日 Tribune)。


6. WESM と予備力市場 ― 「送電料金」が上がる本当の理由

仕組み 数値・年
オファー価格上限(primary cap) 32,000ペソ/MWh(2013年12月27日の共同決議で 62,000から引き下げ/注 その後の恒久化・改定状況は要確認)
二次価格上限(SPC) 7,423ペソ/MWh(ERC決議26号 s.2025、従来6,245から+19%)。発動条件は「72時間移動平均が 12,413ペソ/MWh を超えた場合」(従来9,000)。石油・LNG焚きは検証済み燃料費をSPCが賄えない場合、IEMOP検証のうえ追加補償を申請可
予備力市場(Reserve Market) 2024年開設。オファー上限は暫定 25,000ペソ/MWh。ERCは2026年7月、これを 9,000ペソ/MWh へ引き下げる案を提示(BusinessWorld 2026年7月23日)。狙いは長期AS契約(ASPA)への誘導

「送電料金」の正体

月(請求ベース) 総送電料金 うちAS料率 wheeling
2026年7月請求 1.4604ペソ/kWh(+0.77%) 0.7955(+10.18%) ──
2026年8月請求 1.7560ペソ/kWh(+22.22%) 1.0391(+30.85%) 0.5436(前月0.5044)

論説(Philstar 2026年8月14日)によれば、「送電コスト」として請求される額のおよそ60%はNGCPではなくAS契約発電所またはIEMOP(予備力市場経由)に渡る。 同記事が引用するNGCPデータでは、2026年1〜6月のファームAS契約の平均稼働率はルソンで調整予備13.72%、待機予備10.53%、可制御予備1.59%と極めて低く、この「待機させるだけの容量料金」が平均世帯の月額に約120〜260ペソ上乗せされていると推計されている。 注 これは論説による推計であり、政府統計ではない。


7. 電源構成 ― 「設備容量シェア」と「発電量シェア」を混同しない

発電量ベース

電源 DOE確定値(2024年、2025年6月公表) 参考:2025年4月〜2026年3月の12か月移動(Low Carbon Power推計)
石炭 62.2%(総発電量 126,941GWh のうち約8万GWh) 約60%
天然ガス ── 約18%
水力 ── 約11%
地熱 ── 約8%
太陽光 3,811GWh 約4%
風力 ── 1%強
バイオマス ── 約1%
再エネ計 22.2%(28,193GWh) ──

Ember によれば2023年の石炭シェアは 61.9%(前年59.1%から上昇)で、中国・ポーランド・インドネシアを上回り「東南アジアで最も石炭依存が高い国」。

設備容量ベース(発電量シェアとまったく違う)

電源 2025年7月時点(DOE、総 31,701MW)
石炭 13,006MW(41%)
天然ガス 5,052MW(16%)
石油系 3,404MW(11%)
再エネ計 10,240MW(32%) — 水力3,841/太陽光3,394/地熱2,004/バイオマス574/風力427

注注 「石炭は約41%」(設備容量)と「石炭は約60%」(発電量)は両方正しい。石炭がベースロードで高稼働、太陽光は設備利用率が低いため差が生じる。出典を示さずに片方だけ引くと必ず議論が噛み合わなくなる。

石炭モラトリアムの現状

時期 動き
2020年 DOEがグリーンフィールド(新規)石炭火力のモラトリアムを導入。2019年以前に許認可を得た案件・CNC取得済み案件は適用除外。「電力危機の宣言時または差し迫った場合」の例外規定もあり
2026年4月 DEPDev(経済計画開発省)が緩和を提案、PCCI(商工会議所)も支持。Garin長官が一時「クリーン技術+移行計画付きなら検討」と発言
2026年4月27日 Garin長官が撤回「既に十分な許認可を出している。モラトリアム解除の必要はない」
2026年5月10日 DOE公式「モラトリアムは有効で、解除しない」(Manila Times/Philstar)

IEAの2025年石炭見通しでは、フィリピンの石炭需要は2030年までに15%増の5,400万トン。 注 初稿にあった「IEAは2027年時点でも石炭は約60%と予測」「2035年に石炭設備が15.4GWへ増える」「原子力0.3GW」は今回の調査では裏付けが取れず、未確認。

構造的ボトルネック:最低安定発電(minimum stable generation)

TransitionZero(2026年)の分析: ・高燃料価格下で石炭の稼働率は28%低下し、ガスと合わせ最大 37TWh の化石設備が座礁状態になった。 ・それでも「最低安定発電」要件により、コストにかかわらず約 3TWh の石炭給電が固定された。 ・結果として、燃料価格の影響を受けない地熱・水力が給電順序から押し出され、地熱の出力が 150MWh まで落ちる時間帯が生じた(資源制約ではなく市場ルールの帰結)。 ・2024年以降、石炭の利用が減っているにもかかわらず100件超の石炭契約が新規に締結された。 注 この分析は初稿では「Ember」と誤記されていた。正しい出典は TransitionZero。


8. 再エネ目標とグリーンエネルギーオークション(GEA)

目標 数値 出典
再エネ発電比率 2030年 35% / 2040年 50% DOE「Philippine Energy Plan 2023–2050」
第三者予測 2040年 57%、2050年 64%(目標超過も可能) TransitionZero
再エネ設備容量 2035年に約30GW GlobalData(2026年4月)
原子力 2032年 1,200MW/2035年 2,400MW/2050年 4,800MW 政府目標(WNA整理)
電化率 2024年末89% → 2025年末約91.7% → 2026年末94%目標 → 2028年に100% NEA(Almeda総裁)

GEA(Green Energy Auction Program)の進捗

ラウンド 対象 状況(2026年8月時点)
GEA-1 各種再エネ 2,000MW(2022年)
GEA-4 太陽光・風力・蓄電池 10.19GW/123件を落札(地上設置太陽光 4.19GW、水上太陽光 2.28GW、陸上風力 2.52GW、再エネ+BESS 1.19GW)
GEA-5 洋上風力 3,300MW 2025年11月25日公告 → 2026年7月4日に手続き停止 → 入札は2026年12月1日に再設定(GEA-5 Advisory No.3)。理由は港湾整備の遅れ、許認可、環境・港湾コスト、サプライチェーン。落札通知〜授与は2026年12月2日〜2027年6月30日
GEA-6 バイオマス 160MW(コジェネ40MW+単独120MW) 2026年8月初旬にTOR公表準備。供給開始は2027年7月〜2030年12月。注 当初は水上太陽光・浮体式風力の予定だったが対象が変更された
GEA-7〜9 屋根置き太陽光+BESS(MinDAと連携)/支柱型・営農型・水路上太陽光/バイオマス・地熱・太陽光・水力・陸上風力 予定
全体 2035年までに最低25GWの10年パイプライン DOE

注 GEA-All(GEA費用の需要家負担分 0.0371ペソ/kWh)はERCの命令で2026年5月〜8月の徴収が停止中。 再エネ拡大が短期的には料金上昇要因になるため政治的に扱いが難しい、という構図がここに表れている。


9. 電源別の現状

地熱 ― 「世界第3位」の中身

項目 数値・年
設備容量 2,034MW(2025年末、ThinkGeoEnergy) / 1,984MW(2024年末)
世界順位 設備容量ベースで世界第3位(1位 米国 3,734MW、2位 インドネシア、3位 フィリピン)。世界計 17,173MW(2025年末)
発電量シェア 国内の約8%(2025-26年移動平均)
未開発ポテンシャル 総ポテンシャル約 4,064MW = ほぼ半分が未開発
2025年の増設 BacMan II の Tanawon バイナリー発電所
見通し Fitchは今後10年で +217MW のみと予測し「2025年にトルコに抜かれ4位」と見込んでいたが、2025〜26年時点でも3位のまま

「世界第◯位」を書くときは必ず「設備容量ベース」と明記すること。 発電量ベースでは順位が変わり得る。

水力・太陽光・風力・蓄電池

電源 現状(2026年8月時点)
水力 3,841MW(2025年7月、DOE)。発電量シェア約11%。PAGASAはエルニーニョ発生確率を2026年6〜8月に70〜79%、2027年初頭まで継続と警告 → 2027年の水力出力低下リスク
太陽光 3,394MW(2025年7月、DOE)。MTerra Solar(旧Terra Solar):Nueva Ecija/Bulacan、太陽光3,500MWp+蓄電池4,500MWh。2026年2月に第1期の系統同期・初期 250MW+450MWh を稼働。2026年7月にマルコス大統領が第1期を落成(PV容量 1,373MW 稼働、進捗約91%、第1期の完全商業運転は8月見込み、第2期は2027年Q1目標)。Meralcoと850MWのミッドメリットPSA、国内6行から1,500億ペソのオムニバスローン、Actisが40%出資(約6億ドル)。「単一サイトで世界最大の稼働中の太陽光+蓄電池」というのは政府・事業者の主張である点に注意
風力 陸上 427MW(2025年7月、DOE)。洋上風力は商業運転ゼロ。DOEのポテンシャル推計は 178GW超、既に 95件のサービス契約(合計72GW超) を交付済みだが1基も建たっていない。案件例:San Miguel Bay 901MW(CIP+ACEN)、Frontera Bay 450MW(Seawind Asia他)。注 開発前段階の5年枠は実務と合わず、系統接続に10〜15年かかる案件も多い。投資家は「インフラ遅延を不可抗力扱いに」とDOEに要望
蓄電池(BESS) 2026年2月26日、DOEがESS政策を改定:10MW超の再エネ新設は設備容量の20%以上のESS併設が必須。2025年にルソン・ビサヤで160MW追加。2026年4月までに1.471GWの再エネ+蓄電(22件)を系統接続する前倒し措置(太陽光1.284GW、水力48.23MW、バイオマス38MW、風力13.56MW、統合型RE+ESS 20MW)。既稼働1.178GW(うちBESS 7件)。注 全国のBESS累計設備容量の公式値は見当たらず(未確認)
原子力 稼働なし。BNPP(Bataan、621MWe、1976〜84年建設、約4.6億ドル、燃料装填せず未稼働)の再生可能性をKHNPが2025年1月から2段階で調査中(費用はKHNP負担)。2026年3月:KHNP+韓国輸出入銀行+Meralco の三者MOU。2026年2月:USTDAがMGenに270万ドルの技術支援(米国製SMR設計評価)。2026年8月:KHNPとAboitizPowerが協力合意。Cojuangco下院議員(Pangasinan)は「改修4〜5年、新設なら6年以上」として再生を主張(2026年4月)

10. 離島の電力 ― SPUG と UC-ME

項目 数値・年
運営主体 NPC-SPUG(Small Power Utilities Group)
規模 281の発電所/125の島・孤立地域、120万世帯超に供給
燃料 NPC-SPUG 79発電所のうち約99%がディーゼル
真の発電原価 小島で 20〜30ペソ/kWh、極端な地域では 62ペソ/kWh
住民の支払い 補助後の承認発電料金(SAGR)で 約7〜8.3ペソ/kWh
差額の負担 UC-ME(Universal Charge for Missionary Electrification)としてオングリッド需要家全員の請求書に転嫁
2026年の認可額(=適用中) 307.73億ペソ(ERC認可)。現行料率 0.2662ペソ/kWh(=26.62センタボ)
NPCの2027年要求(2026年4月にERCへ申請) 442億ペソ = 0.4405ペソ/kWh(=44.05センタボ、+65.5%)(BusinessWorld 2026年4月1日)。注申請値であって確定料率ではない

(2026-08-25 相互照合で確定)UCME単価は資料間で3つ流通していた。 - 分野「離島と辺境」§0:0.4405ペソ/kWh・442億ペソを「NPCが2026年に申請」と記述 → 申請は2026年4月、適用対象は2027年分である旨を明示するよう修正済み。 - 分野「パラワンと海洋環境」§8:2026年の適用単価を27.63センタボ/kWhとする(2022年15.61センタボからの推移として記載)。 - 採用は本表の 0.2662ペソ/kWh(26.62センタボ)。 根拠は算術:報道の増加率 +65.5% は 0.4405 ÷ 0.2662 = 1.655 と一致し、0.4405 ÷ 0.2763 なら +59.4% で報道値に合わない。 - 注 27.63センタボは基準年・適用範囲の異なる別系列の可能性があるため、パラワン資料側でも消さずに残置した。0.4405との対比に使わないこと。 | 構造問題 | UC-ME補助の80%超がディーゼルに流れ、再エネへの転換が構造的に阻害されている。DOEは「太陽光+蓄電はディーゼルの平均真原価18ペソ/kWhより安い」と認める。Mindoro と Palawan の2島で補助全体の約60%。Maharlika基金によるMindoroでの実証が計画 | | オフグリッド最高料金 | Busuanga Island Electric Cooperative(BISELCO)24.92ペソ/kWh(ICSC PRESYO-PH、2026年7月) |

参考:未電化世帯は 971,022戸(DOE、2023年)。山岳部・離島に集中し、マイクログリッド・ソーラーホームシステムが前提となる。


11. 電気代が東南アジア最高水準である理由 ― 要因の分解

# 要因 具体的な効き方(数値・年・出典)
1 政府補助が存在しない(EPIRAの設計思想) タイ・インドネシア・マレーシアは政府が電気料金を大規模補助。フィリピンは完全民営化で「真のコスト」を需要家に全額転嫁する制度。緩衝装置がない
2 輸入燃料への依存+為替 石炭・LNGの多くが輸入。メラルコのPSA費用の54%が為替連動(2026年6月、Meralco)。ペソは2026年8月19日に日中 61.995/ドルの最安値。4月料金では為替が1か月で3ペソ以上動いて発電料金 +0.5257ペソ/kWh
3 自動転嫁(pass-through) 発電・送電・システムロスで住宅用請求額の約77%。DUには安い電源を探す強い動機が働きにくいと批判される
4 予備力市場のAS費用 2024年開設。2026年3月に70%急増、8月請求では+30.85%。稼働率は1桁〜十数%で「待機容量への支払い」が家庭で月120〜260ペソ相当(論説推計)
5 供給制約・計画外停止 2026年8月のビサヤでは26基以上が計画外停止、14基が出力低下、800MW超が使えず。DOE次官「ビサヤはほぼ常時イエローアラートで、それが価格を押し上げている」
6 7,000超の島という地理 群島国家ゆえの送配電コストとUC-ME。系統は3分割(ルソン/ビサヤ/ミンダナオ)でHVDC連系に依存
7 システムロス 上限内なら需要家負担(DU 6.5%、EC 12/10.25/8.25%)。2026年5月請求で121組合中36組合(約30%)が上限超過、2025年には18のDUがフィーダー損失上限超過。最悪はZAMCELCO 18.1%(上限8.25%)=上限超過回収 5.43億ペソ
8 最低安定発電による安い電源の締め出し §7の TransitionZero 分析

料金水準の比較(出典と年をセットで)

指標 数値 出典・年
全国平均(住宅) 12.43ペソ/kWh(シンガポール 12.34 を 0.09 上回る) DOE、2026年6月分/2026年7月20日発表
メラルコ 14.48ペソ/kWh(106社中9位) ICSC PRESYO-PH、2026年6月分
オングリッド最高 SOLECO(Southern Leyte)16.57ペソ/kWh 同
オフグリッド最高 BISELCO 24.92ペソ/kWh 同
平均超の事業者数 106社のうち48社 ICSC、2026年7月23日
住宅用(米ドル建て) 13.318ペソ/kWh = 0.215ドル/kWh GlobalPetrolPrices、2025年12月調査
事業用 9.846ペソ/kWh = 0.159ドル/kWh 同

注注 「東南アジア1位」は 2026年7月に初めて政府が認めた話。2025年以前の資料は「シンガポールに次ぐ2位」と書いており、両方が同時に正しかった時期はない。古い資料を引くときは調査時点を必ず確認すること。 注 「世界平均の131%」「アジア平均の265%」はGlobalPetrolPricesの自社計算であり、政府統計ではない。


12. 2026年の制度改革 ― 料金に直結する3つの争点

① SONA 2026:システムロス転嫁の禁止

項目 内容
大統領の要求 2026年7月27日のSONAで、EPIRA改正によりシステムロス(およびそれに乗るVAT)の需要家転嫁を禁止するよう要求。「使っていない電気の代金を払うべきではない」
法案 HB 10306(Vargas議員/上限超過分はDU負担)、HB 9106(RA 9136 §40・43(f)・60 と RA 7832 §10 の一体改正)、HB 4148(包括改正。蓄電を新たに分類。注 Manila Times論説は「懸念すべき条項が多い」と批判)
政府の見通し Garin長官「完全撤廃は2027年に可能」/DOE「実現には1年程度かかる」
規制側の懸念 ERC委員長 Juan「全額をDUに負担させれば財務的に脆弱な電力協同組合が危うくなる。技術ロスはゼロにできない」
進行中の手続き ERCが全DUに過去5年分のシステムロス詳細データの提出を命令(2026年8月)。DOE主導の合同タスクフォース
論点 統一上限の要求:消費者団体CERA(Cebu Electricity Rights Advocates)は全事業者一律5.5%を主張(2026年8月)

② メラルコの料金リセット(Rate Reset)― 最大の値上げリスク

項目 内容
申請内容 平均配電料金を 1.35ペソ/kWh → 2.34ペソ/kWh(+0.99ペソ) に引き上げ。2027〜2030年で総額 5,321.3億ペソの回収
ERCの判断時期 2026年8月末〜9月に決定予定(ERC委員長、2026年7月)。Group A(他に CEPALCO、Cotabato Light、Dagupan Electric)と併せて審査
経緯 第5規制期間(5RP)申請は2022年3月。2024年8月にERCが3対2で「失効期間」扱いを決議(Dimalanta前委員長らが反対)、その後「修正」。対象期間は2025年7月〜2029年6月に改定
注 注意 配電料金は2022年8月以降据え置きだが、これが動けば一時的な還付(-0.5861ペソ、6か月)とは比較にならない恒久的インパクトになる。2026年後半の最重要ウォッチ項目。

③ NGCP と中国国家電網(State Grid Corporation of China, SGCC)

項目 事実
出資構造 2008年、SGCCが 39.5億ドルで 40%分の25年コンセッションを取得。残る60%はフィリピン資本。送電資産そのものは国有(TransCo保有)で、NGCPは運営権者(concessionaire)
憲法上の位置づけ 公益事業法人の外資出資上限は40%。形式上は合憲
2015年の整理 南シナ海情勢を受け、政府は「SGCCは40%株主として残るが、運営上のコントロールはフィリピン側に戻す」と決定
安全保障論争 上院議員らは情報機関報告を根拠に「中国国営企業が送電設備に遠隔アクセスし得る」と指摘。論説(Rappler)は「NGCPの取締役14名中4名が中国側で、少数株主なのに議長も中国側代表」「SCADAが中国製」と指摘。注 これは論説・報道による指摘であり、政府による公式認定ではない
NGCPの反論 「外国株主から独立して運営しており、経営陣は主にフィリピン人。外国投資家は日々の系統運用に直接アクセスできない」
フランチャイズ 議会が付与した50年フランチャイズ(RA 9511)。下院議長らが透明性不足ならフランチャイズ取消もあり得ると警告、株主間契約の提出を求める公聴会が繰り返されてきた
政府の買い戻し(2026年の焦点) Maharlika Investment Corporation(MIC)が Synergy Grid & Development Philippines(SGP)の20%を 197億ペソ(約3.5億ドル)で取得する契約。注意:これは「NGCPの20%」ではない。取得後、SGP取締役会 9議席中2、NGCP取締役会 15議席中2を政府が確保。
注注 (2026-08-25 相互照合)SGPのNGCP保有比率が資料間で食い違う。両方残す。 本稿「実効40.2%」/分野「財閥・企業グループ」7-2「Calaca High Power 30%+Monte Oro Grid 30%=60%」。40.2 = 60 × 67% と整合するため、60%=SGP傘下2社が直接持つNGCP株の合計/40.2%=SGPから見た実効(間接)持分という関係が疑われるが、SGP開示・PSE EDGEで未確認。
注 取締役会の議席数も3通り流通している。 本稿の本表「15議席」/本表下段の論説(Rappler)引用「14名中4名が中国側」/一部の百科事典的情報源「会長1+副会長2+取締役7=計10名、うちSGCC側3名」(注一次資料未確認・出典未特定)。時点差か集計単位の差か特定できず=未確認。
進捗 注注 2025年1月に拘束力ある条件書を締結(180日以内クロージング条項付き)したが、2026年8月時点で未完了。MICのConsing社長は2026年3月に「上期中」としたが実現せず、DOEは「年内クロージングを期待」(BusinessWorld 2026年8月16日)。Garin長官「クロージングには署名済み文書が必要だが、私はまだ報告を受けていない」
政府の狙い Garin長官「大きな比率ではないが、NGCP内部で何が起きているかの可視性(visibility)が政府に得られる」

13. 2026〜2027年の需給見通し

DOEの2026年公式予測 vs 実績

系統 DOE予測(2026年) 実績(2026年8月時点)
ルソン イエロー 1回、レッド 0回 5月13〜15日にレッド3日連続、輪番停電
ビサヤ イエロー 7回、レッド 0回 5月・8月にレッド。8月は26基以上が計画外停止、800MW超が使用不能
ミンダナオ イエロー 6回(9〜11月)、レッド 0回 概ね安定。約450MWの余剰をビサヤへ輸出可能

注注 DOEの「レッドアラート0回」予測は2026年前半で既に外れている。政府予測は「大規模な計画外停止がない前提」の楽観シナリオとして読むべき。

リスク要因

リスク 内容
連系線への依存 ビサヤはミンダナオからHVDCで最大450MW、ルソンから250MWを輸入。2024年完成のミンダナオ〜ビサヤ連系(MVIP)が危機時の安定に寄与(NGCP)。逆に連系が制約されると即座に逼迫
エルニーニョ PAGASA:2026年6〜8月に発生確率 70〜79%、2027年初頭まで継続の可能性 → 水力出力低下+冷房需要増
需要の季節性 メラルコ「乾季は冷房で需要が20〜33%増える」
新規容量の遅延 ICSCのQ2 2026評価「供給量そのものは足りるが予備率が薄く、需要変動・案件遅延・計画外停止・HVDC制約に脆弱」。ルソンの充足は「上期に約定容量が期日通り入る前提」
市場ルールの見直し ERCが予備力上限(25,000→9,000ペソ/MWh案)、二次価格上限、市場ルール全般を審査中。結論次第で2027年の料金水準が変わる
MTerra 第2期 2027年Q1目標。ルソンの日中ピークと蓄電による夕方ピーク対応の鍵

14. 家庭・企業ができる実務的対応

手段 2026年時点の要点
ネットメータリング(RA 9513) 系統連系型で 1kW〜100kW(住宅)。2026年のDOE通達 DC2026-01-00012 で、配電事業者の処理期限が45営業日→10営業日に短縮、期限超過時の「みなし承認」も導入。LGUの電気許可は3営業日、CFEIは7営業日。注 実務では30〜90日かかるとの現場報告あり。2025年9月のERC改正でクレジットの繰越(banking)と譲渡が可能に、REC用メーターは任意化
買取(クレジット)単価 現金ではなく請求書上のクレジット。単価は「発電料金部分(blended generation charge)」のみ。報道・業者資料では 4.50〜9.25ペソ/kWh と幅があり 注 自分の配電事業者で確認が必要。発電料金が高い乾季はクレジット価値も上がる
投資回収 業者試算で 3.5〜6年(5kWpで初期30〜37.5万ペソ、年間約7,300kWh想定)。ネットメータリングは回収期間を1〜2年短縮する程度で、効果の大半は「自家消費」から来る。売電目的の過大設計は割に合わない
注 対象外 オフグリッド設備、蓄電池単体は不可。系統接続が必須。逆潮流できないオフグリッド用インバータは安全上却下される
RCOA/GEOP 平均月間ピーク需要 100kW以上(2026年6月26日から)で供給者を選択可能。GEOPなら100%再エネ調達。100kW未満でもRAP(集約プログラム)で共同参加可能
ILP(随時遮断プログラム) 自家発を持つ商業・産業需要家がレッドアラート時に自主減量。2026年5月には240〜270MWが拠出された。参加は系統安定への貢献と同時に交渉材料になる
AMI(スマートメーター) ERCがRCOA拡大と同時に導入規則を承認。5分間隔の遠隔検針、負荷管理、停電検知、Consumer Meter Data Channel経由のデータ開示が可能に
ライフライン割引 ERCが全国統一のライフライン補助率を 0.01ペソ/kWh に設定(2026年3月請求から適用、新割引体系は4月から)。根拠は RA 9136 第73条(RA 10150 → RA 11552 で改正済み)。RA 11552 により免除期間は50年、4Ps 受給世帯は自動登録(2026-08-26 改正確認。出典:lawphil.net 収録 RA 11552 §1 原文)

15. 知らないと間違える点(まとめ)

  1. 注 EO 110 は「6月30日終了」ではない。 効力は1年(原則2027年3月頃まで)で、大統領が解除しない限り継続。6月30日は「原油在庫が持つ見通しの期限」。2026年7月末時点で継続中。
  2. 注 WESM は停止したままではない。 停止は2026年3月26日〜5月1日の約5週間のみ。再開後の5月にWESM価格は前月比+38.5%。
  3. 注 石炭シェアは「約41%」と「約60%」の両方が正しい。 前者は設備容量、後者は発電量。出典と指標を明記。
  4. 注 「200万人」ではなく「約190万顧客口座」。 メラルコ全顧客 830万戸の約23%。
  5. 注 地熱「世界第3位」は設備容量ベース。 2,034MW(2025年末)。指標を明示しないと誤解を生む。
  6. 注 「送電料金」の約6割はNGCPの収入ではない。 付帯サービス(AS)契約発電所とIEMOPに渡る素通し。
  7. 注 Maharlikaが取得するのは「NGCPの20%」ではない。 SGP(NGCPの実効40.2%保有)の20%であり、2026年8月時点で未完了。
  8. 注 「東南アジアで最も高い」は2026年7月からの話。 それ以前の資料は「シンガポールに次ぐ2位」。
  9. 注 RCOAの閾値は100kW(2026年6月26日から)。 500kW/750kW/1MWと書かれた古い資料が多数流通。
  10. 注 8月の値下げ(-0.0428ペソ)は還付による一時的なもの。 一方でメラルコは配電料金を 1.35→2.34ペソ/kWh に上げる申請中で、ERC判断が2026年8〜9月に出る。恒久的な方向は上向き。
  11. 注 「最低安定発電で約3TWhの石炭が固定」の出典は TransitionZero(2026年)。 Emberではない。
  12. 注 推計値と確定値を区別する。 DOEの確定発電統計は2024年分(126,941GWh、石炭62.2%、再エネ22.2%)まで。2025〜26年の「石炭約60%」は Low Carbon Power の12か月移動推計。

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