日本語で読める資料ガイド——フィリピンを学ぶための書誌・雑誌・データベース
0. このガイドの位置づけ
フィリピンについて日本語で書かれた/訳された資料は、量は多くないが層は厚い。問題は「どこに何があるか」が散らばっていることと、2026年に入って日本語ニュース環境が大きく変わったこと(後述 §9)である。ここでは (1) 紙の書籍、(2) 学術雑誌、(3) 政府系機関の報告書、(4) 無料で読めるオンライン資源、(5) 日本語の定期刊行物とニュース、(6) 入手困難なもの、の順に整理する。
注 最初の注意:フィリピン関連で日本語ネット上に流通する「世界第○位」型の主張(英語話者数、BPO産業規模、留学先人気、鉱物埋蔵量など)は、何の指標で・誰が集計した順位かが明示されていないものが極めて多い。本稿では裏の取れないものは「未確認」と書く。数値を引くときは必ず「年」と「出典機関名」をセットで確認すること。
1. まず押さえる「定点観測」の3点セット
| 資料 | 発行 | 何が分かるか | 入手 |
|---|---|---|---|
| 『アジア動向年報』フィリピンの章 | アジア経済研究所(IDE-JETRO) | 前年1年間の政治・経済・対外関係の通史+主要統計+日誌 | 書籍購入/J-STAGEで無料 |
| 『東南アジア研究』 | 京都大学東南アジア地域研究研究所(CSEAS) | 査読付き学術論文・書評 | J-STAGEで無料 |
| ジェトロ「ビジネス短信」/IDEスクエア | JETRO/IDE-JETRO | 制度変更・時事の一次的な日本語要約 | ウェブ無料 |
この3つを押さえておけば、「学術的な蓄積」「昨年何が起きたか」「今週何が起きたか」の3階層をカバーできる。
2. 『アジア動向年報』——日本語フィリピン情報の背骨
フィリピンの現代政治・経済を日本語で追うとき、最も信頼性が高く、かつ毎年必ず更新される資料。
| 項目 | 内容(出典:アジア経済研究所ウェブサイト、2026年) |
|---|---|
| 最新版 | 『アジア動向年報2026』2026年5月29日刊 |
| 判型・頁 | A5判・582ページ |
| 価格 | 6,930円(本体6,300円) |
| ISBN | 978-4-258-01026-4 |
| 収録 | 22の国・地域(韓国/北朝鮮/モンゴル/中国/香港/台湾/ASEAN/ベトナム/カンボジア/ラオス/タイ/フィリピン/マレーシア/シンガポール/インドネシア/ティモール・レステ/ミャンマー/バングラデシュ/インド/ネパール/スリランカ/パキスタン) |
| フィリピンの章(2026年版) | 「大規模な汚職発覚で幕を開けた政権後半」執筆=鈴木有理佳 |
| 2025年版のフィリピンの章 | 「中間選挙を経てマルコス政権は後半戦へ」執筆=鈴木有理佳(2025年5月30日付でIDEサイトに掲載) |
2-1. 無料で読む方法
- J-STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/asiadoukou/ に2011年版〜2026年版が収録(2026年8月時点で収録論文数492本、J-STAGE表示)。多くはHTMLで無料。注 ただし2017年版は「現在PDF形式のみ公開」との注記があり、巻によって形式が揃っていない。
- アジア経済研究所 図書館デジタルアーカイブス(https://d-arch.ide.go.jp/):1970年代以降の古い年次までPDFで遡れる。地図約55,000枚のデータベース、開発途上国フォトアーカイブス、戦前・戦中期の日本関係機関刊行物約4,194点(IDE図書館サイトの表示、2026年)も同じ入口から。
- 「フィリピン編」バンドル版:NDLサーチで確認できる範囲で、『アジア動向年報1970-1979 フィリピン編』(2026年刊)、『1980→1989 バンドル版』(2025年刊)、『1990→1999』(2024年刊)、『2000-2009 フィリピン編』(2023年刊)、『2010-2019 フィリピン編』(2022年刊)が国別・年代別に再編集されて出ている。過去50年分を国別に通読したい人向け。
注 旧誌との混同に注意:検索で上位に来がちな『アジ研ワールド・トレンド』は、1995年創刊・2018年3・4月合併号(No.269)で休刊済み(出典:アジア経済研究所)。バックナンバーは同研究所の学術情報リポジトリ ARRIDE で2005年6月号以降がPDF無料公開。休刊後の分析記事は「IDEスクエア」に移行している。「最新のアジ研ワールド・トレンドによると」という言い方は2026年時点では成立しない。
3. アジア経済研究所のその他の出版物
| 媒体 | 内容 | 公開 |
|---|---|---|
| 『アジア経済』 | 査読付き学術誌。最新は2026年67巻2号(J-STAGE表示、2026年8月25日更新) | J-STAGEでフリー(HTML) |
| The Developing Economies | 英文査読誌 | 有料/機関購読 |
| アジ研ポリシー・ブリーフ | 短い政策向け解説 | 無料PDF |
| IDEスクエア(「世界を見る眼」「Eyes」ほか) | 時事分析コラム | 無料 |
| 研究双書・調査研究報告書 | 共同研究の成果 | 2020年以降オンライン無償公開を推進(同研究所) |
| ライブラリアン・コラム | 図書館員による資料紹介 | 無料 |
近年のフィリピン関連(IDE-JETROフィリピン地域ページ掲載分、2025〜2026年):
| タイトル | 執筆者 | 媒体・時期 |
|---|---|---|
| 誰の人生を誰が書いているのか?——フィリピンをめぐる「回顧録」について | 柏原千英 | ライブラリアン・コラム(2026年6月) |
| フィリピンにおけるデジタル接続/決済普及戦略 | 柏原千英 | アジ研ポリシー・ブリーフ No.282 |
| さらなるサービス高度化を狙うフィリピン IT-BPM産業の成長戦略 | 柏原千英 | アジ研ポリシー・ブリーフ No.275(2025年) |
| 新興国の海事人材戦略:フィリピンの事例 | 知花いづみ | アジ研ポリシー・ブリーフ No.249 |
| フィリピン——「特別な関係」が根底に | 鈴木有理佳 | IDEスクエア「世界を見る眼」(2025年12月) |
| フィリピンに対するアメリカの相互関税 | (IDE) | IDEスクエア Eyes(2025年12月23日) |
アジア経済研究所図書館(千葉県千葉市美浜区若葉3-2-2、TEL 043-299-9716)は「どなたでもご利用になれます」と明記された専門図書館。開館10:00〜18:00、休館は日曜祝日・第2/4/5土曜・月末最終平日・年末年始(同館サイト、2026年)。フィリピンの現地紙・統計・灰色文献を日本国内で見られる数少ない場所。
4. 一般書・入門書
| 書名 | 著者・編者 | 出版社 | 年 | メモ |
|---|---|---|---|---|
| 『フィリピン——強権を求めた「新生」への希望』 | 日下渉 | 岩波書店(岩波新書 新赤版2108) | 2026年4月 | 1,056円/約255頁/ISBN 978-4-00-432108-8。2026年時点で最も新しい日本語の総合的入門。経済成長期に育った世代の「善き市民」志向と、それが強権を求める心理につながる回路を論じる |
| 『一冊でわかるフィリピン史』 | 菅谷成子 | 河出書房新社(世界と日本がわかる 国ぐにの歴史) | 2025年11月 | 237頁/1,800円/ISBN 978-4-309-81127-7。年表・文献リスト付き。通史の入口として最新 |
| 『フィリピンを知るための64章』 | 大野拓司・鈴木伸隆・日下渉 編 | 明石書店(エリア・スタディーズ) | 2016 | ISBN 978-4-7503-4456-0。注最新版が2016年で止まっている。各章の記述は健在だが統計・人口・政権関連の数字は10年前のもの。数値の引用元には使わないこと |
| (旧版)『現代フィリピンを知るための61章』 | 大野拓司・寺田勇文 編 | 明石書店 | 2009 | ISBN 978-4-7503-3056-3 |
| (初版)『フィリピンを知るための60章』 | 同上 | 明石書店 | 2001 | ISBN 4-7503-1371-8 |
注 エリア・スタディーズは版ごとに章数と編者が変わる(60章→61章→64章)。引用時は必ず「何章版・何年」を書く。
5. 学術書——歴史・政治・人類学
5-1. 歴史
| 書名 | 著者 | 出版社 | 年 |
|---|---|---|---|
| 『フィリピン革命の研究』 | 池端雪浦 | 山川出版社 | 2022(ISBN 978-4-634-67238-3)※初出年次との関係は未確認 |
| 『東南アジア占領と日本人——帝国・日本の解体』 | 中野聡 | 岩波書店(シリーズ「戦争の経験を問う」) | 2012(ISBN 978-4-00-028375-5、352頁) |
| 『戦前期フィリピン在住日本人職業別人口の総合的研究』 | 早瀬晋三 | 早稲田大学アジア太平洋研究センター | 2024 |
| 『電子版 戦前期フィリピン在住日本人関係資料』 | 早瀬晋三 | 同上 | 2023 |
| 『戦前期東南アジア海域における日本人漁業活動の基礎資料』 | 早瀬晋三 | 同上 | 2026 |
| 『すれ違う歴史認識』 | 早瀬晋三 | 人文書院 | 2022 |
| 『戦争の記憶を歩く——東南アジアのいま』 | 早瀬晋三 | 岩波書店 | 2007(2012年版あり) |
| 『医療と経済——フィリピンにおける近代化・戦争・民族』 | 千葉芳広 | 丸善出版 | 2026 |
5-2. 政治・社会
| 書名 | 著者・編者 | 出版社 | 年 |
|---|---|---|---|
| 『反市民の政治学——フィリピンの民主主義と道徳』 | 日下渉 | 法政大学出版局 | 2013 |
| 『現代フィリピンの地殻変動——新自由主義の深化・政治制度の近代化・親密性の歪み』 | 原民樹・西尾善太・白石奈津子・日下渉 編 | 花伝社 | 2023年3月(280頁/2,000円/ISBN 978-4-7634-2054-1) |
| 『21世紀東南アジアの強権政治——「ストロングマン」時代の到来』 | 外山文子ほか編(日下渉 参加) | 明石書店 | 2018 |
| 『東南アジアと「LGBT」の政治』 | 日下渉ほか編 | 明石書店 | 2021 |
| 『争われる投票モラリティ——フィリピン選挙における売買票とポピュリズム』 | 日下渉 | 京都大学東南アジア研究所 | 2010 |
| 『戦場化するアジア政治』 | 国分良成ほか編著 | 日経BP | 2025 |
5-3. 人類学・言語・文化
| 書名 | 著者 | 出版社 | 年 |
|---|---|---|---|
| 『感覚の植民地主義と言語のヘゲモニー』 | 山下惠理 | 勁草書房 | 2025 |
| 『人類学バックホーム』 | 片岡樹・飯田卓 編 | 京都大学学術出版会 | 2026 |
| 『島世界の葬墓制』 | 小野林太郎 編 | 雄山閣 | 2024 |
| 『実践 日々のアナキズム』(訳書・日下渉訳) | J.C.スコット/日下渉ほか訳 | 岩波書店 | 2017 |
5-4. 在日フィリピン人・移民
| 書名 | 著者・編者 | 出版社 | 年 |
|---|---|---|---|
| 『在日フィリピン人社会——1980〜2020年代の結婚移民と日系人』 | 高畑幸 | 名古屋大学出版会 | 2024年5月(317頁/5,800円/ISBN 978-4-8158-1153-2) |
| 『コロナ禍を生きた移民と家族』 | 賽漢卓娜・高畑幸 編著 | 明石書店 | 2026 |
| 『Q&A フィリピン家事事件の実務』 | 伊藤弘子ほか | 日本加除出版 | 2023 |
| 『ソウルの中のフィリピンのまち』 | 金兌恩 | 立教大学社会学部 | 2024 |
実務者向けには『海外派遣者ハンドブック フィリピン編』(日本在外企業協会、2026年)、法制度では『日・比 円滑化協定(RAA)実施法』関連(信山社、2026年)も出ている。
6. 翻訳された文学
6-1. ホセ・リサール(José Rizal, 1861–1896)
| 原題 | 邦題 | 訳者 | 出版社 | 年 |
|---|---|---|---|---|
| Noli Me Tángere | 『ノリ・メ・タンヘレ』 | 岩崎玄 | 井村文化事業社(発売=勁草書房) | 1976 |
| 同上(新装・再刊) | 『ノリ・メ・タンヘレ』 | 岩崎玄 | 井村文化事業社 | 1986(ISBN 4-326-91001-1) |
| El Filibusterismo | 『反逆・暴力・革命——エル・フィリブステリスモ』 | 岩崎玄 | 井村文化事業社/勁草書房 | 1976 |
| 2作を統合した翻案小説 | 『見果てぬ祖国』 | 村上政彦(著・翻案) | 潮出版社 | 2003 |
注ここが「知らないと間違える点」: 1. リサールの二大長編の日本語全訳は、事実上この岩崎玄訳しか流通していない(国立国会図書館サーチでの確認、2026年8月)。岩波文庫や新潮文庫に入っているという話をときどき見かけるが、確認できない。 2. 1976年/1986年刊のため、新刊書店では入手困難。図書館か古書で当たるのが現実的。 3. 村上政彦『見果てぬ祖国』は翻訳ではなく2作を合体・翻案した小説。原典の代わりに引用してはいけない。 4. フィリピン国内で流通する Noli / El Fili は現代フィリピノ語訳(Virgilio S. Almario 訳、Adarna House 版など)が主流で、スペイン語原典・英訳・フィリピノ語訳・日本語訳で章立てや語彙の印象が変わる。どの版を読んだかを明記すること。
6-2. 現代文学・短編
| 書名 | 著者・編訳者 | 出版社 | 年 |
|---|---|---|---|
| 『イルストラード』(Ilustrado) | ミゲル・シフーコ(Miguel Syjuco)/中野学而 訳 | 白水社(Ex libris) | 2011(458頁/ISBN 978-4-560-09016-9) |
| 『フィリピン短編小説珠玉選』 | 寺見元恵 編訳 | 井村文化事業社 | 1978 |
| 『フィリピン短編小説珠玉選』 | テオドロ・A・アゴンシリョ 編/山下美知子 訳 | 井村文化事業社 | 1979 |
| 『東南アジア文学への招待』 | 宇戸清治・川口健一 編 | 段々社 | 2001 |
| 雑誌『東南アジア文学』 | 東南アジア文学会 | — | 継続刊行(少なくとも第10〜20号を確認) |
注 フィリピン文学の邦訳は1970年代後半の井村文化事業社「アジアの現代文学」系の仕事に大きく依存しており、その後の空白が長い。2010年代以降で単行本として入手しやすいのは『イルストラード』程度。現代作家(Gina Apostol、Mia Alvar ほか)の日本語単行本は未確認——雑誌掲載の短編訳が散発的にある可能性はあるが、本稿では確認できなかった。
6-3. 語学
大上正直『フィリピノ語文法入門』白水社。1994年6月初版(ISBN 4-560-00520-6)→ 2003年3月新装版(CD付、ISBN 4-560-00585-0)→ 2025年1月 音声DL版(ISBN 978-4-560-09933-9、3,600円)。注 定番書だが「絶版」と書かれた古い情報がネットに残っている。2025年に音声ダウンロード版として再刊されている。
そのほか『エクスプレス フィリピノ語』(津田守・ロサリオ=ユー、白水社、1992)、『ことたびフィリピノ語』(澤田公伸、白水社、2003)、『語学王 フィリピノ語』(三修社、2004/2005)など。注 いずれも刊行から20年以上経っており、現行版の有無は書店で要確認。
7. 学術雑誌・学会
7-1. 『東南アジア研究』(京都大学東南アジア地域研究研究所)
| 項目 | 内容(出典:J-STAGE/kyoto-seas.org、2026年8月時点) |
|---|---|
| 創刊 | 1963年 |
| 現状 | 2012年の英文誌創刊を受け、年2回(7月末・1月末)刊行の和文誌に移行 |
| ISSN | Print 0563-8682/Online 2424-1377 |
| 収録 | J-STAGEに2,657本(2026年8月時点) |
| 最新号 | 64巻1号(2026年7月31日発行) |
| 公開 | J-STAGEでフリーアクセス記事あり。査読制、Scopus収録 |
| URL | https://www.jstage.jst.go.jp/browse/tak/-char/ja / https://kyoto-seas.org/ |
64巻1号のフィリピン関連論文:荒哲「フィリピン社会における『社会的盗賊』に関する考察——日本占領末期より戦後復興期にかけてのゲリラ,ギャングの活動を中心に」pp.3–35、DOI: 10.20495/tak.26001。
英文姉妹誌 Southeast Asian Studies(https://englishkyoto-seas.org/)は完全オープンアクセス。最新は Vol.15, No.1(2026年4月)。日本語の研究者が英語で書いた最新成果が無料で読める。
7-2. 東南アジア学会と『東南アジア——歴史と文化——』
- 学会:東南アジア学会(Japan Society for Southeast Asian Studies、https://www.jsseas.org/)
- 機関誌:『東南アジア——歴史と文化——』(編集・発行=東南アジア学会/山川出版社)。前身誌は『南方史研究』。
- J-STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/browse/sea/-char/ja に765本、1971年〜2025年(最新54号)を収録。査読制・フリーアクセス・早期公開あり(2026年8月時点)。
7-3. 「日本フィリピン研究会」について——名称の注意
注 「日本フィリピン研究会」という名称の学会は確認できない。 日本におけるフィリピン研究者の恒常的な集まりは 「フィリピン研究会」(Philippine Studies Group in Japan) で、毎年「フィリピン研究会全国フォーラム」を開催している。
| 回 | 開催 | 備考 |
|---|---|---|
| 第1回 | 1996年 | 抄録集がCiNiiに記録あり |
| 第25回 | 2021年 | 参加報告が『日本オセアニア学会 newsletter』に掲載 |
| 第30回 | 2025年 | 東南アジア学会サイトで公募告知(2025年3月10日付) |
| 第31回 | 2026年6月20日(土)/京都大学吉田キャンパス総合研究2号館4階/対面のみ | 東南アジア学会サイト2026年5月18日付告知 |
公式サイト:https://philippinestudiesgroupjapan.wordpress.com/(自動取得はブロックされたためブラウザで確認のこと)。告知は東南アジア学会サイトにも転載されるので、そちらを見るのが確実。
8. オンラインで無料で読めるもの
| プラットフォーム | URL | 何が読めるか | 注意 |
|---|---|---|---|
| J-STAGE | jstage.jst.go.jp | 『アジア動向年報』『東南アジア研究』『東南アジア——歴史と文化——』『アジア経済』ほか | 誌ごとに公開形式(HTML/PDF)と公開猶予が異なる |
| CiNii Research | cir.nii.ac.jp | 論文・図書・博士論文・研究データの横断検索。学会報告や抄録集も拾える | 本文リンクの有無はまちまち |
| 機関リポジトリ(IRDB/各大学) | irdb.nii.ac.jp ほか | 紀要論文・博士論文の本文PDF。フィリピン研究は大学紀要に良質な論文が多い | 大学名で当たるより横断検索が早い |
| IDE ARRIDE(アジア経済研究所 学術情報リポジトリ) | 同研究所サイト経由 | 『アジ研ワールド・トレンド』2005年6月号以降ほか | — |
| IDE 図書館デジタルアーカイブス | d-arch.ide.go.jp | 古い『アジア動向年報』、地図約55,000枚、戦前・戦中期資料約4,194点、写真 | — |
| 国立国会図書館デジタルコレクション | dl.ndl.go.jp | 戦前期の南方関係資料・雑誌・新聞など | 公開区分が「インターネット公開/個人送信/館内限定」の3種 |
| 国立国会図書館サーチ | ndlsearch.ndl.go.jp | 書誌の横断検索。OpenSearch等のAPIあり | 書誌検索としては日本語圏で最強 |
| リサーチ・ナビ | ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi/ | 「フィリピン(法令等)」「アジア情報の調べ方案内」など調べ方ガイド | フィリピン単独の総合ガイドはなく、政治・法律分野が中心 |
個人向けデジタル化資料送信サービス:国立国会図書館の利用者登録(無料)をすれば、自宅から絶版等資料を閲覧できる。注 対象点数は流動的で、「約152万点(2022年7月時点)」「送信対象に約28万点を追加(2025年6月)」「ライセンス変更で約71,600点が館内限定に切替(2026年4月)」といった数字がそれぞれ別時点のものとして流通している。合計点数を断定的に書かず、利用時に公式ページで確認すること。
注 一次資料としての注意:デジコレの戦前・戦中期「南方」関係資料は当時のプロパガンダを含む。使うなら文脈込みで。
9. 日本語の定期刊行物とニュース——2026年に激変した
9-1. 日刊まにら新聞(The Daily Manila Shimbun)の休刊
| 時期 | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1992年5月 | マニラで創刊。東南アジア初の日刊邦字紙。元共同通信社員の野口裕哉が創刊(当初「Kyodo News Daily」) | 同紙会社案内/Wikipedia |
| 1996年 | 題号を「日刊まにら新聞」に変更 | 同上 |
| 2021年12月31日付 | コロナ禍の部数減で紙面発行を廃止、ウェブ配信へ | 同紙社告(2021年12月)、時事通信(2021年12月21日) |
| 2024年9月1日 | 日本人会等の要望で紙面を一時再開(配達はマニラ首都圏限定) | 時事通信(2024年8月24日) |
| 2024年9月30日付 | 再び完全デジタル化(ウェブ+PDFニュースレター) | 同紙告知 |
| 2026年1月〜 | 給与未払・事務所家賃滞納が発生。3月までにスタッフの大半が退職 | 共同通信(2026年6月16日配信) |
| 2026年6月 | 休刊状態に。約34年の活動が事実上停止 | 共同通信2026年6月16日配信(秋田魁新報・沖縄タイムス・北海道新聞・神戸新聞NEXT・高知新聞・西日本新聞・新潟日報などが掲載) |
注 アーカイブ喪失リスク:まにら新聞の過去記事は会員制サイトに置かれており、無料で全文公開している第三者データベースは確認できない。休刊状態が続けばサイト自体が消え、既存の論文・記事・社内資料に貼られたURLが一斉にリンク切れになる。
いま取るべき対処: 1. 参照している記事はPDF化して手元に保存する(引用時は媒体名・見出し・掲載日を必ず記録)。 2. Internet Archive の Wayback Machine に残っているかを確認する(Wikipediaの出典でも archive 経由の参照が使われている)。 3. 紙面時代(1992〜2021年)の分は、日本国内の図書館所蔵を当たる。アジア経済研究所図書館・国立国会図書館の外国邦字紙コレクションが現実的な候補。所蔵状況は事前に問い合わせること。
注 紛らわしい別資料:国立公文書館アジア歴史資料センター(JACAR)に出てくる「マニラ新聞」は戦前・戦中期の別の新聞に関する公文書であり、現行の日刊まにら新聞とは無関係。
9-2. フィリピン新聞(Philippines Shimbun)——2026年創刊
| 項目 | 内容(出典:同社サイト company.html / about.html、2026年2月・8月確認) |
|---|---|
| 創刊 | 2026年1月 |
| 所在 | マニラ首都圏マカティ市 |
| 内容 | 社会・政治・経済・文化・スポーツ・気象/災害・英字記事。マニラ首都圏のほかセブ、ミンダナオもカバー |
| 刊行 | 毎週日曜は休刊 |
| 料金 | 記事一覧・一部記事は無料、ウェブ購読(会員登録制)あり |
| URL | https://philippines-shimbun.com/ |
2026年8月25日時点で当日付の記事が掲載されており、現に稼働中。まにら新聞の休刊で空いた「在比日本人向け日刊邦字メディア」の位置を埋めつつある。注 ただしまにら新聞との資本・人的関係は公式には確認できていない(未確認)。創刊から日が浅く、アーカイブの厚みはこれからである。
9-3. そのほかの日本語メディア
| 媒体 | 運営 | 性格 | 料金 |
|---|---|---|---|
| Primer(フィリピンプライマー) | Mercury Syscom Inc. | 在比日本人向け生活・ビジネス情報。ウェブ+月刊誌。飲食・旅行・医療・求人・不動産・税務会計コラム | 無料(誌面も無料配布) |
| NNA ASIA(NNA POWER ASIA) | 株式会社NNA(共同通信グループ) | アジア22の国・地域の経済ニュース。フィリピン版あり(https://www.nna.jp/news/list/philippines) | 見出し・リードは無料、本文は有料会員 |
| ジェトロ「ビジネス短信」 | JETRO | 制度改正・統計・通商政策の日本語速報 | 無料 |
| マニラ経済新聞 | みんなの経済新聞ネットワーク | マニラのビジネス・カルチャー | 無料 |
ジェトロのフィリピン関連ビジネス短信(https://www.jetro.go.jp/biznewstop/biznews/asia/ph/)の直近例:
| 日付 | 見出し |
|---|---|
| 2026年8月13日 | フィリピン大統領が2026年施政方針演説 |
| 2026年8月3日 | チリ、フィリピンCEPA妥結やバングラデシュFTA交渉開始でアジア連携強化 |
| 2026年7月17日 | マニラ首都圏の最低賃金、日額85ペソ引き上げへ |
| 2026年7月8日 | カナダとフィリピン、戦略的パートナーシップへ格上げ |
ジェトロの国別ページ(https://www.jetro.go.jp/world/asia/ph/)では、基礎情報、貿易投資年報(2024年実績)、輸出入規制・投資制度・税制・外資規制、知的財産、調査レポート、動画レポートが日本語で無料公開されている。
10. JICAの報告書
| 資料 | 内容 | 入手 |
|---|---|---|
| 国別分析ペーパー(JICA Country Analysis Paper: JCAP)フィリピン | JICAの国別開発分析。日本語版PDFあり | JICAフィリピンページ(https://www.jica.go.jp/overseas/philippine/index.html) |
| 事業別協力実績 | 円借款・無償・技協の一覧 | 同上(PDF) |
| ODA見える化サイト | 個別案件の概要・評価 | 無料 |
| 事業事前評価表・事後評価報告書 | 案件単位の詳細な日本語文書(例:メトロマニラ立体交差建設事業、災害リスク軽減案件など) | www2.jica.go.jp/ja/evaluation/ 配下にPDF |
| JICA報告書PDF版 | JICA十進分類(JDC)で体系化された報告書アーカイブ | https://openjicareport.jica.go.jp/ |
| JICA図書館ポータル | 蔵書検索、和雑誌記事索引、地図、ジャーナルAtoZ | https://libopac.jica.go.jp/ |
あわせて外務省の「国別開発協力方針」「事業展開計画」「国別データブック」も日本語で無料。注 外務省サイトは自動取得を拒否することがあるのでブラウザで直接開くこと。
実務的な使いどころ:インフラ・防災・保健・農業分野で「現地の制度と数字が日本語でまとまった文書」が欲しいときは、JICAの事業事前評価表と事後評価報告書が最も密度が高い。学術書より新しく、ニュースより詳しい。
11. 入手が難しいもの・注意すべきギャップ
| 種類 | 状況 | 対処 |
|---|---|---|
| 日刊まにら新聞の過去記事 | 会員制、かつ2026年6月から休刊状態。アーカイブ消失リスク | PDF保存+Wayback Machine+図書館所蔵 |
| リサール『ノリ・メ・タンヘレ』『反逆・暴力・革命』 | 1976/1986年刊で新刊入手不可 | 図書館・古書・NDL |
| フィリピン文学の邦訳全般 | 1970年代の井村文化事業社系に依存、その後空白 | 雑誌『東南アジア文学』掲載訳を探す |
| 井村文化事業社の刊行物 | 版元が現存しない。発売元は勁草書房 | 古書・大学図書館 |
| 『アジ研ワールド・トレンド』 | 2018年休刊 | ARRIDEで2005年6月号以降を無料閲覧 |
| フィリピン現地の統計原典 | PSA・BSP等は英語のみ。日本語の要約はジェトロ/IDEが中心。注さらに psa.gov.ph 本体・deped/ched/tesda・mgb・comelec 等の .gov.ph は bot アクセスを403で遮断しており、「英語で読めば済む」わけでもない | 数字は原典(英語)で確認し、日本語資料は解説として使う。実務上の入口は PSA OpenSTAT の PxWeb API(鍵不要・本体サイトが403でもAPIは生きている)。具体的な手順・エンドポイント・遮断ドメイン一覧は分野「統計とデータソースの使い方」§2.4・§11.4・§14 に集約されているので、本ガイドと必ずセットで使うこと(2026-08-25 相互照合で補記。両ガイドの役割分担=日本語二次資料は本ガイド/原典アクセスは統計ガイド) |
| エリア・スタディーズ最新版 | 2016年(64章)で更新が止まっている | 数値は他資料で更新 |
12. 人名・所属の確認メモ(2026年8月時点)
| 人物 | 記述 | 確認状況 |
|---|---|---|
| 鈴木有理佳 | アジア経済研究所研究員。『アジア動向年報』フィリピンの章を継続執筆(2025年版・2026年版とも) | IDE-JETROサイトで確認 |
| 日下渉 | 『フィリピン』(岩波新書、2026年4月)著者。東京外国語大学所属と紹介 | 同書紹介による(2026年4月時点) |
| 柏原千英/知花いづみ | アジア経済研究所。フィリピンのIT-BPM・デジタル決済・海事人材の分析を担当 | IDEサイトで確認 |
| 木村福成 | ジェトロ・アジア経済研究所 所長 | ジェトロの『アジア動向年報2026』刊行告知に記載(2026年)。注 現職かは最新のIDE組織図で再確認を |
| フェルディナンド・マルコス Jr.(Ferdinand "Bongbong" Marcos Jr.) | フィリピン大統領 | ジェトロ短信「フィリピン大統領が2026年施政方針演説」(2026年8月13日)から在任中と確認 |
13. 目的別・読む順番
| 目的 | 順番 |
|---|---|
| いま何が起きているか知りたい | ジェトロ短信 → フィリピン新聞/NNA → IDEスクエア |
| 直近1年を体系的に | 『アジア動向年報2026』フィリピンの章(J-STAGEで無料) |
| 政治のしくみと空気を理解 | 日下渉『フィリピン』(岩波新書 2026)→ 同『反市民の政治学』→ 『現代フィリピンの地殻変動』 |
| 歴史の通史 | 菅谷成子『一冊でわかるフィリピン史』(2025)→ 中野聡『東南アジア占領と日本人』 |
| 日比関係・在日フィリピン人 | 高畑幸『在日フィリピン人社会』(2024) |
| 文学から入る | 岩崎玄訳『ノリ・メ・タンヘレ』→ シフーコ『イルストラード』 |
| 研究として本気で | 『東南アジア研究』+『東南アジア——歴史と文化——』のバックナンバー横断 → フィリピン研究会全国フォーラムに参加 |
| ビジネス・投資判断 | ジェトロ国別ページ+貿易投資年報 → JICA国別分析ペーパー → 現地英語一次統計 |
14. 使うときのルール(自戒を込めて)
- 「推計」と「確定」を分ける。ジェトロ・IDEの解説は原典(PSA、BSP、DTI等)を要約したもの。日本語で見た数字も、原典年次を書く。
- 業界団体・進出支援企業の主張と政府統計を混ぜない。不動産・留学・BPO関連の日本語記事は、営業目的の推計を政府統計のように書くものが多い。
- 順位主張は指標を確認する。「英語話者数世界第○位」「BPO世界第○位」は本稿の調査では裏が取れず未確認。書くなら「○○(機関名)の△△という指標で、□年時点」まで特定する。具体的な確認手順は分野「統計とデータソースの使い方」§12.3「世界第◯位」を書く前のチェックリスト(指標/年/出典機関/母集団の4点、特定できなければ「未確認」と明記)に統一する(2026-08-25 相互照合で補記。両資料の運用ルールを同一にした)。 - 同じ問題は日本語資料側にもある。例:在日フィリピン人数は「341,518人(2024年末)」と「356,579人(2025年末)」が並行して流通しており、前者は1年古い。在留人口(出入国在留管理庁)と雇用者数(厚生労働省)で母集団も基準時点も違うため、順位(4位/3位)も変わる。詳細は分野「日本の受入れ制度と在日フィリピン人」§1 を参照。
- 注 古い日本語資料が検索上位に来る。エリア・スタディーズ(2016年)、アジ研ワールド・トレンド(2018年休刊)、まにら新聞(2026年6月休刊状態)——いずれも「今も更新されている」と誤認しやすい。
- URLは保存する前提で扱う。2026年のまにら新聞の件は、日本語のフィリピン情報が驚くほど細い糸でつながっていることを示した。