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フィリピンの教育制度

情報基準日:2026-08-26 / 分野:人口・労働・教育


0. 30秒で押さえる要点

# 要点
1 K-12(RA 10533、2013年)で基礎教育が10年→13年(幼稚園+12年)に。移行完了は2018年
2 2026-2027学年度から、シニアハイスクール(SHS)の「ストランド」が廃止。ABM/HUMSS/STEM/GAS という区分は新入生(11年生)から消える
3 EDCOM 2 最終報告「Turning Point」(2026年1月26日公表)が「習熟度の崩壊」を数値で確定させた
4 母語教育(MTB-MLE)はRA 12027(2024年10月10日、署名なしで成立)により必修から外れた
5 2026年の教育予算はGDP比4.4%で史上初めてUNESCO基準(4〜6%)を満たした。ただし成果はまだ出ていない
6 CHEDの「一般教育(GE)36単位→18単位」案は2026年5月に強い反対で延期(2028年へ)。決着していない
7 学校暦が2026-2027年度から3学期制(トライメスター)へ。開講は2026年6月8日

1. 学制の全体像

1-1. 基礎教育(Basic Education/DepEd 所管)

段階 学年 標準年齢 備考
Kindergarten K 5歳 RA 10157(2012年)で義務化
Elementary 1〜6年 6〜11歳 Key Stage 1(1〜3年)/Key Stage 2(4〜6年)
Junior High School(JHS) 7〜10年 12〜15歳 Key Stage 3
Senior High School(SHS) 11〜12年 16〜17歳 Key Stage 4。K-12で新設

合計 K+12年=13年。日本の「小6・中3・高3」とは学年の切れ目が異なり、フィリピンの「High School」は7年生から始まる。「ハイスクール卒業」と言われたとき、それが10年生修了(JHS)か12年生修了(SHS)かで意味がまったく違う。

1-2. 中等後・高等教育

機関 所管 内容
CHED(Commission on Higher Education) 大統領府直属 大学・カレッジ(学士・修士・博士)
TESDA(Technical Education and Skills Development Authority) 労働雇用省系 技術職業教育訓練(TVET)、National Certificate(NC I〜IV)
DepEd(Department of Education) 基礎教育+ALS(代替学習制度)

この3機関分立(DepEd/CHED/TESDA)そのものがEDCOM 2の主要な批判対象であり、最終報告は「断片化したガバナンス(fragmented governance)」を根本原因の一つに挙げている(2026年、EDCOM 2)。


2. K-12(RA 10533)── なぜ導入され、何が起きたか

根拠法:Republic Act 10533「Enhanced Basic Education Act of 2013」(承認 2013年5月15日)。SHSは2016-2017学年度から全国導入、最初のSHS卒業生は2018年に輩出。

(2026-08-26 改正確認)RA 10533 は2回改正されている。制定時の条文をそのまま現行法として引かないこと。

改正法 成立 改正された RA 10533 の条 変わったこと
RA 12027(母語教授廃止法) 2024-10-10 に署名なしで法律化 第4条(RA 12027 第1条による)/第5条(f)(RA 12027 第2条による) K〜小3の母語教授を打ち切り、フィリピノ語・英語に戻す。MTB-MLE は単一言語学級での任意適用に格下げ(5要件つき)
RA 12322(教授法裁量法)2026-08-26 追加 2026-08-02 に署名なしで法律化 第5条(g) 「spiral progression(螺旋型進行)」の法定義務を削除。「The curriculum shall employ the approach deemed most effective by the DepEd to ensure mastery of knowledge and skills after each level.」に置換。あわせて5年に1回以上の K to 12 課程の総点検を義務づけ

「改正法の第◯条」と「改正された RA 10533 の第◯条」を必ず区別すること。RA 12027 第2条=RA 10533 第5条(f)、RA 12322=RA 10533 第5条(g)。RA 10533 第5条は2024年と2026年に別々の号が改正されている。 (出典:LawPhil 2026年RA索引の RA 12322 正式名称/LawPhil 掲載 RA 12027 原文/Manila Bulletin 2026-08-06「Measure giving DepEd flexibility... lapses into law」/PNA 2026-08-06・08-07/Manila Times 2026-08-08/Philstar 2026-08-08)

2-1. 導入理由(当時の政府説明)

主張 検証
10年に圧縮された過密課程 妥当(DepEd/上院Policy Brief 11-02)
卒業生が就職にも進学にも準備不足 政府側の主張
「12年制でない世界3か国のうちの1つ(他はアンゴラ、ジブチ)」 「過去形」でのみ正しい。VERA Filesのファクトチェックは「5か国」説を否定し「3か国」を支持。ただし典拠はDepEdと上院の政策文書に集中しており、UNESCO等の独立した国際比較データによる裏付けは薄い(=出典が循環している)
アジアで最後だった 上と同じ典拠。「世界◯位」型の主張ではなく「◯か国のうちの1つ」型である点に注意

2-2. K-12は約束を果たしたか ── 答えは「ほぼノー」

論点 実際の数値・出典
「SHS卒業生は就職即戦力」 SHS卒業生の約53.9%が高等教育へ進学(EDCOM 2 第2次年次報告、2025年)。PIDS研究(Orbeta & Potestad、Philippine Journal of Development, 2025)では労働力人口に入るのは20%強、70%超が進学継続
企業側の受け止め 大手企業のうちSHS卒業生の採用に前向きなのは約20%(学術研究ベース、年次は要確認)
学力面の改善 全国学力調査で有意な改善は確認されていない
EDCOM 2の総括 「2013年にK-12が導入されたとき、SHS卒業生は就職か進学の準備ができていると約束された。しかしそうなっていない」── Roman Romulo下院議員(EDCOM 2共同議長)、2025年3月13日の公聴会

労働市場全体でも学歴と雇用のミスマッチが拡大:2025年2月時点で失業者の44.1%が大卒または大学中退、大卒だけで35.6%(2020年の26.9%から上昇)。


3. 2026年の大転換 ── Strengthened SHS Curriculum(強化SHS課程)

これが2026年最大の制度変更である。v1.0 の「構造改革が進行中」という記述は、すでに「実施済み」に更新が必要。

3-1. 何が変わったか

項目 旧(2016〜2026) 新(2026-2027年度〜)
トラック 4系統:Academic/TVL/Sports/Arts and Design 2系統:Academic / Technical-Professional(TechPro)
ストランド ABM/HUMSS/STEM/GAS など 廃止。「選択科目クラスター」へ
コア科目 15科目 5科目
選択科目 限定的 11年生で2科目、12年生で7科目を選択
就業実習 Work Immersion 80時間 TechProは320〜640時間必修/Academicは任意(推奨はField Exposure 160〜320時間)

新コア5科目:Effective Communication(Mabisang Komunikasyon)/Life and Career Skills/General Mathematics/General Science/Pag-aaral ng Kasaysayan at Lipunang Pilipino

選択クラスター(Academic):Arts, Social Sciences and Humanities / STEM / Sports, Health and Wellness / Business and Entrepreneurship / Field Experience 選択クラスター(TechPro):Hospitality and Tourism、ICT Support and Computer Programming、Maritime Transport など10領域

3-2. 経緯と根拠通達

時期 出来事
2025-2026年度 841校(公立580/私立261)でパイロット実施=全SHS 12,739校の約6.6%うち農村部はわずか35校(パイロットの4.2%、全SHSの0.3%)。後続報道では887校とも
2026年2月27日 DepEd Memorandum No. 012, s. 2026 で全国展開を正式決定
2026-2027年度 新11年生から全公私立で全面実施。12年生は旧課程を継続(DepEd Memo 036, s. 2026)

懸念点:パイロットが都市部に偏り(農村部は841校中35校=4.2%にすぎない)、評価報告の公表前に全面展開が決定された。 (2026-08-25 相互照合で修正) 旧版は「農村部はわずか35校=全SHS 12,739校の約6.6%」としていたが、6.6% は 841/12,739(パイロット校が全SHSに占める割合)であって、農村35校の割合ではない。35校は全SHSの0.3%、パイロットの4.2%。「農村6.6%」という表現は、都市偏重の度合いを20倍以上に薄めてしまう。The Manila Times社説(2026年6月2日)等が「パイロットの検証が先」と批判。DepEdは公立教員の解雇はないと明言(2026年6月)。

TVLトラックが「TechPro」に吸収されたことで、TESDA資格(例:Bookkeeping NC III)との接続は「クラスター」経由に変わる。旧TVL前提の説明資料は2026年以降は使えない。


4. MATATAG課程(K〜10年生)

「MATATAG」はフィリピノ語で「強靭な/揺るがない」。正式名は "MATATAG K to 10 Curriculum"、標語は "Bansang Makabata, Batang Makabansa"。

項目 内容
発表 2023年8月10日、DepEd
根拠通達 DepEd Order No. 010, s. 2024
対象 K〜10年生(11〜12年生は別通達=上記 Strengthened SHS)

4-1. 主な変更

4-2. 導入の契機についての訂正

「2022年のPISAの低成績が契機」という説明は時系列が合わない。MATATAGの発表は2023年8月10日、PISA 2022の結果公表は2023年12月5日である。直接の契機は PISA 2018(2019年12月公表、当時79か国中最下位圏)、TIMSS 2019、SEA-PLM 2019 などの先行結果と見るべき。PISA 2022はMATATAGを「後から正当化した」データである。

4-3. 展開スケジュール ── 2つの版が流通している

学年度 DepEd Order 010, s. 2024(原案) 報道等で流通する別案
2024-2025 K・1・4・7年 同左
2025-2026 2・5・8年 2・3・5・8年
2026-2027 3・6・9年 6・9・10年
2027-2028 10年 (前倒しで完了)

両方の版が2026年時点で流通している。確認は必ず最新のDepEd Orderで行うこと。v1.0の表は後者(前倒し版)に基づいていたが、原通達は前者。 「MATATAG K-10を最初から通した学年の卒業は2034年」という記述は未確認。2024-2025年度のK生が10年生に到達するのは単純計算で2034-2035年度であり、「2034年」は年度表記の丸めの可能性が高い。

4-4. 実施上の問題(2025〜2026年の評価)

問題 具体
教科書の遅配 2025年1月時点で90タイトル中35タイトルしか完全配布されていない(EDCOM 2 第2次年次報告、2025年1月27日)。2012〜2023年に1〜10年生向けに調達された教科書はわずか27タイトル
教員研修不足 複数の査読論文(IJRISS 2026、Consortia Academia 2025 等)が「研修・教材・時間の不足」を一貫して指摘
複式学級 教材・ICT不足で「カリキュラム忠実度を犠牲にしている」との調査結果
前提スキルの欠落 児童側に読み書き・計算の基礎がなく、課程が想定するペースに届かない

批判の焦点は設計思想ではなく実行(教材・研修・資源)に集中している点が重要。


5. 母語教育(MTB-MLE)の廃止 ── RA 12027

5-1. 経緯

時期 出来事
2009年 DepEd Order 74, s. 2009 でMTB-MLE導入
2013年 RA 10533 第4・5条で法制化(K〜3年生の教授言語=母語)
2024年10月10日 RA 12027 が署名なしで法律として成立(lapsed into law)。K〜3年での母語必修を廃止、単一言語学級では任意実施。条の対応=RA 12027 第1条→RA 10533 第4条/RA 12027 第2条→RA 10533 第5条(f)(LawPhil 原文が "Section 5(f) of Republic Act No. 10533" と明示)
2025年7月 DepEd Order No. 20, s. 2025 発出。2025-2026年度から教授言語はフィリピノ語と英語(聴覚障害者にはフィリピン手話)、地域語は補助的媒体(translanguaging)
2026年8月2日 RA 12322 が署名なしで法律として成立母語(MTB-MLE)については何も変えていない。改正対象は RA 10533 第5条(g) の spiral progression 条項であり、「RA 12322 で母語教育が復活した」は誤り(2026-08-26 追加)

5-2. 廃止側の論拠 vs 反対側の論拠

廃止支持 反対
2020年センサスで約245言語が存在するのに、MTB-MLEが対象としたのは19言語のみ(約8%) 投資の破棄:2013年以降の教材・正書法標準化・教員研修が無駄に
都市部・多言語学級では実施不能 UNESCOは1953年から第一言語教育を推奨。フィリピンは1951年のUNESCO言語専門家会議の事例国
教員の当該言語習熟度・教材が不足 最高裁への違憲訴訟(Tanggol Unang Wika Alliance ほか)。フィリピン手話の扱いも争点
Key Stage 1→2の英語への急転換で混乱 Hoover Institution政策ブリーフ(2025年10月)は「失敗の原因は教授法ではなく制度設計・財源不足」としてRA 12027のロールバックと憲法改正を提言
教員団体 ACT/Teachers' Dignity Coalition は「改善すべきで放棄すべきでない」

学術的評価:ScienceDirect掲載論文(2025年10月)は「MTB-MLEの優位性を示す厳密な評価が存在しなかったことが、擁護側の論拠を奪った」と分析。一方 Labour Economics(2024年12月)は多言語環境での逆効果を報告。エビデンスは割れている。

5-3. 残った制度


6. EDCOM 2 最終報告「Turning Point」(2026年1月26日)

正式名:Turning Point: A Decade of Necessary Reforms(第2次議会教育委員会=Second Congressional Commission on Education、根拠法 RA 11899)。95本の研究と3年間の調査を統合。2026年1月26日にマラカニアン宮でマルコス大統領へ手交、1月27日に上院提出。2026年2月3日、上院決議 Senate Concurrent Resolution No. 8 でNatPlanを正式採択。

6-1. 習熟度の崩壊(proficiency collapse)

学年 試験 「習熟(Proficient)以上」の割合
3年生 ELLNA 30.5%(正確には30.52%)
6年生 NAT 19.56%
10年生 NAT 1.36%(報道により0.74%とも)
12年生 NAT 0.40%

12年生の0.40%は、約160万人中わずか 6,518人(1,000人に4人)。ここでの「習熟」とは、問題解決、情報の管理と伝達、データの分析・評価ができる水準を指す。

0.40%と0.47%の2つの数字が流通している。報告書本文は0.40%、EDCOM 2および上院のプレスリリース見出しは0.47%を使っている。引用時は必ずどちらの出典かを明記すること。

6-2. 根本原因として挙げられたもの

指標 数値(2026年、EDCOM 2)
3年生修了時に学年相当の読解ができない児童 48.76%(CRLA、2024-2025年度末)
5歳未満の発育阻害(stunting) 23.6%(=2023年NNSの値)2025年更新調査では25.3%に悪化(下記注)
3〜4歳の就学前教育参加率 34%
実授業日数 年間191日(地域によっては休校等で最大42日を喪失)
法定の学校行事 150件超が授業を分断
15歳時点の学習ギャップ 5.5年分
校長不在(OIC運用)の公立学校 48%
教室不足 165,443室(政権発足時)
機能的識字率(10〜64歳) 70.8%(PSA)

(2026-08-25 相互照合で修正。出典:DOST-FNRI 2025年更新調査=2026年6月公表/分野「医療と健康」第9節) EDCOM 2 最終報告(2026年1月)が引く発育阻害 23.6%2023年国民栄養調査(NNS、2024年12月公表)の値である。その後の DOST-FNRI 2025年更新調査(2026年6月公表)で 25.3%(+1.7ポイント)へ悪化しており、2015年以来10年ぶりの上昇となった。 就学前の栄養状態を根本原因として論じるときに 23.6% を「現在値」として使うと、改善したかのような逆の印象を与える。EDCOM 2 の報告書を引用する場合は「報告書執筆時点の値」と明記すること。

その他:mass promotion(無条件進級)の慣行、教員の授業外業務過多。

6-3. NatPlan 2026-2035(国家教育・労働力開発計画)

指標 現状(基準) 2035年目標
12年生NAT 習熟率 0.40% 90%
3年生 読解(CRLA) 47.74% 下記注 95%以上
3年生 計算(RMA) 40.49% 85%
3年生 ELLNA 習熟 30.52% 90%
教育予算のGDP比 4.4%/4.5%(2026年、出所により異なる) 5.5%(2031年に5.0%)

(2026-08-25 相互照合で明示化) 本稿内で 4.4% と 4.5% の2つの数字が併存している。第0節・第10-1節は 4.4%(Angara教育長官/EDCOM 2 最終報告)、本表は 4.5%(NatPlan の基準値)。どちらも本稿が採った出典どおりであり、片方を消していない。分母のGDP推計値と、分子に何を含めるか(DepEd/CHED/SUCs/TESDA)の両方で振れるため、「約4.4〜4.5%」と幅で書くのが安全

(2026-08-25 第2回相互照合で明示化。本稿 第6-2節と第6-3節の突合) 同じ「3年生のCRLA読解」について、本稿は 48.76% と 47.74% という2つの数字を別々の節に置いており、そのままでは足し合わない。

  第6-2節:「学年相当の読解ができない児童」 48.76%
   → できる児童は 100 − 48.76 = 51.24% のはず
  第6-3節:NatPlan の基準値(=できる側)     47.74%
  51.24% と 47.74% が一致しない(3.5ポイントの差)

考えられるのは、①測定時点が違う(第6-2節は2024-2025年度末、NatPlanの基準値はそれ以前のラウンド)、②「読める」の判定区分が違う(CRLA は Grade Ready/Moderate/Low など多段階で、どこから上を「読める」とするかで数値が動く)、のいずれか。数字の入れ替わり(48.76 ↔ 47.74)にも見えるため、引用前に EDCOM 2 最終報告の原表で確認すること。 「3年生の約半分が読めない」という要旨自体はどちらの数字でも変わらない。両方とも消していない。

必要追加投資:2026〜2035年で 2.66兆ペソ。改革が続かない場合、2035年時点の年間投資ギャップは約 6,231億ペソ(EDCOM 2推計)。

これらはすべて「目標」であって達成予測ではない。0.40%→90%は現実的な射程を大きく超えており、報告書の性格は「政治的アジェンダ設定」である点を割り引いて読む必要がある。

6-4. すでに動いた具体策

最終報告に「基礎教育の地方分権(devolution)」が含まれていないことをBusinessWorld(2026年2月23日)が批判している。


7. PISA と国際比較

7-1. PISA 2022(2023年12月公表、OECD)

分野 フィリピン OECD平均 順位
数学 355 472 76位
読解 347 476 79位
科学 356 485 80位
総合 81か国・地域中 77位

順位は出典により微妙に食い違う(PNAは「科学で下から3番目、数学・読解で下から6番目」)。単独の順位数字を断定的に使わないこと。

7-2. PISA 2025


8. 学習貧困91% と 政府推計37% ── 数字の正体

8-1. 何が起きたのか

数値 出典・意味
91% 世界銀行 Fixing the Foundation: Teachers and Basic Education in East Asia and the Pacific(2023年9月)。10歳で年齢相応の短い文章を読んで理解できない子どもの割合
37% 政府統計ではない。同報告書が政策担当者に「自国の10歳児の識字水準はどの程度と思うか」を尋ねたアンケート結果である

したがって「91% vs 37%」は測定値どうしの対立ではなく、「実測値」と「政策担当者の認識」のギャップである。これを「世界銀行と政府の推計が食い違っている」と書くのは誤り。同報告書はインドネシア、ラオス、モンゴル、フィリピン、ベトナムの5か国すべてで同様の過小評価を確認している。

8-2. 91%の読み方

8-3. 機能的識字率 70.8% と「18.9百万人」の誤報

2024年 FLEMMS(PSA、2025年公表)

指標 2024年 参考
基礎識字率(5歳以上) 90.0%(約9,307万人/1億346万人)
機能的識字率(10〜64歳) 70.8%(約6,017万人/約8,500万人) 2019年は91.6%(旧定義)

最重要の誤読ポイント。 - 70.8%と91.6%の差は主に定義変更による(PSA理事会決議 No.13, s. 2024で新定義を採用)。旧定義では「高卒(またはK-12のJHS修了)であれば機能的識字とみなす」学歴代理指標が含まれていた。新定義は「2つ以上の情報を統合し推論する」高次読解を要求する - 高校卒業生1,890万人が読めない」という報道は誤り。DepEdは「18.9百万人は学歴を問わない10〜64歳の人口全体の数字」と訂正。Gatchalian上院議員の説明では旧定義7,900万人−新定義6,000万人=約1,890万人という算術上の差にすぎない - メディア監視団体CMFRが主要各紙の誤報を指摘。修正後の「読解力を欠く高卒者」は558万人 - PSAが2019年データを新定義で再計算したところ、大卒者にも機能的識字のギャップが残ることが判明


9. 教員 ── 待遇・不足・質

9-1. 給与(2026年、Executive Order 64 第3トランシェ)

職位 Salary Grade 月額(Step 1、2026年)
Teacher I SG 11 31,705ペソ(2025年は30,024ペソ、2027年に33,387ペソへ)
Teacher II SG 12 33,947ペソ
Teacher III SG 13 36,125ペソ
Master Teacher I SG 18 53,818ペソ
Master Teacher IV SG 21 73,303ペソ

9-2. 教員不足と人員体制

指標 数値(出典)
全国の教員不足 約30,000人(2025年5月、DepEd)。当初56,000人→2024年に22,000、2025年に20,000ポスト措置
2026年の新規採用 32,916ポスト(2026年 National Expenditure Program)。ほかに校長6,000、School Counselor Associate I 10,000
教員1人あたり児童生徒数(2025-2026年度) 小学校 1:32/中学(JHS)1:39/SHS 1:36
DepEdの理想比率 低学年 1:30〜35、高学年 1:45

9-3. 教員免許試験(LET/BLEPT)合格率の急上昇

実施回 小学校 中等 合計
2024年9月 45.51% 56.88%
2025年3月 46.77% 62.27%
2025年9月・11月 51.04% 72.62% 65.04%(122,528人中79,696人)
2026年3月 56.03% 73.10% 67.17%(94,357人中63,377人)=近年最高

合格率の上昇を「教員の質の向上」と即断しないこと。同時期にBLEPTの専門別試験化・カリキュラム整合(CHED-PRC共同覚書)という試験そのものの設計変更が行われている。合格基準は平均75%以上かつ各科目50%未満なし。


10. 予算・施設・学校暦

10-1. 2026年教育予算 数字が3種類流通している

出典 金額 GDP比
DBM(予算管理省) 1.34兆ペソ 4.0%(NEP段階)→
Angara教育長官/Philstar 1.35兆ペソ 4.4%
EDCOM 2 最終報告 1.37兆ペソ 4.4%
DepEd単独(RA 12314=2026年GAA) 1.015兆ペソ(うち人件費 7,057.9億ペソ)

集計対象(DepEd/CHED/SUCs/TESDA/その他をどこまで含めるか)で数字が変わる。「1.37兆ペソ」はEDCOM 2の集計であり、DBM公表値ではない。 いずれにせよ史上初めてGDP比4%を超え、UNESCO基準(4〜6%)を満たした。過去10年平均は3.2%、それまでの最高は2017年の3.96%。国家予算全体は6.793兆ペソ(GDP比22.0%)。

10-2. 教室不足 DepEdとEDCOM 2で数字が食い違う

出典 教室不足
DepEd(2026年6月) 143,543室(政権発足時165,443室から減)
EDCOM 2(上院公聴会、National School Building Inventory ベース) 166,000室超

10-3. ARAL Program(RA 12028)

Academic Recovery and Accessible Learning Program。K〜10年生の遅れた学習者に、読み・算数・理科の補習を提供。

10-4. 学校暦の改革(2026-2027年度〜)

DepEd Order No. 009, s. 2026。四半期制(4 quarters)→3学期制(trimester)へ。

項目 内容
開講 2026年6月8日(月)
閉講 2027年4月8日(木)
授業日数 201日
第1期 6月8〜11日(開講行事)→6月15日〜9月1日
第2期 9月16日〜12月4日、12月7〜18日に期末
第3期 2027年1月4日〜3月23日、3月24日〜4月8日に期末
休暇 クリスマス休暇 2026年12月19日〜2027年1月3日。semestral break は廃止

私立学校は必要授業日数を満たせば独自暦を維持できる。Brigada Eskwela(学校清掃・準備の住民動員)は6月1〜5日。

10-5. 在籍者数 予測と実績の乖離

学年度 予測 実績
2024-2025 約2,384.5万人(2024年8月5日時点)
2025-2026 2,760万人 2,490万人(前年2,700万人から5%減、Angara長官)
2026-2027 2,600〜2,800万人

2025-2026年度に約120万〜210万人規模の在籍減が起きたことは、政府自身も原因を説明できていない。人口は増加中であり、下院ACT Teachers党派の追及に対しDepEdは「データを精査中」と回答。少子化、私立への流出、統計基準の変更、退学のいずれかは未確定。フィリピン教育を語るうえで最も要注意の未解決論点。

10-6. 学校外の子ども・若者(OSCY)


11. 私立学校の比重と公的補助

11-1. 基礎教育における私立の位置

指標 数値
在籍者(2024-2025年度、期初スナップショット) 公立 16,005,291人私立 2,149,361人(DepEd Enrollment Monitoring Report)
SHS(12,739校)のうち パイロット841校の内訳が公立580/私立261だったことから、SHSでは私立比率が基礎教育全体より高い

SY 2025-2026 の公私別確定値は本稿執筆時点で未公表。私立は「小中では少数派、SHSと高等教育では多数派」という構造を押さえること。

(2026-08-25 第2回相互照合で明示化。本稿 第10-5節と第11-1節の突合) 同じ 2024-2025年度について、本稿は2つの合わない在籍者数を載せている。

  第11-1節:公立 16,005,291 + 私立 2,149,361 = 18,154,652人
  第10-5節:約 23,845,000人(2024年8月5日時点の実績)
  差       :約 569万人

差の正体は母集団の違いとみられる。第11-1節は DepEd Enrollment Monitoring Report の期初スナップショットで、ALS(代替学習制度)、SUC/LUC が運営するSHS、technical-vocational institution 在籍のSHS 生などを含まない。第10-5節は年度実績の全体値である。どちらが正しいかではなく、数える範囲が違う。 したがって「私立は基礎教育全体の約11.8%(2,149,361 ÷ 18,154,652)」という計算は成り立たない。分母が公私2区分しかない在籍表に限定されているためで、全体値2,384.5万人で割ると約9.0%になる。私立比率を語るときは、必ずどちらの分母かを書くこと。本稿はどちらの数値も削っていない。

11-2. E-GASTPE(私学就学支援)

Expanded Government Assistance to Students and Teachers in Private Education。DepEd Order No. 11, s. 2026 で ESC・SHS-VP・TSS を一本化、2026-2027年度から適用。

制度 対象 2026-2027年度の規模
ESC(Educational Service Contracting) 私立JHS(7〜10年) 99万人
SHS-VP(SHS Voucher Program) 私立・SUC・LUC・技術学校のSHS 147万人
TSS(Teachers' Salary Subsidy) 私立学校教員 補助を 18,000→24,000ペソへ増額
合計 240万人超

バウチャー額(SHS-VP)

受給者の条件
公立JHS出身 → NCR外の高度都市化市の非DepEd校 20,000ペソ(満額)
私立JHS出身 満額の80%=16,000ペソ
SUC/LUC に進学 満額の50%=10,000ペソ(出身校種を問わず)

不正リスク:監査で「幽霊学生」への6,500万ペソの支払いが判明。DepEdは民事・刑事告訴を提起し、受給者データベースを整理中。


12. 高等教育(CHED)

12-1. 規模

指標 数値(2024年1月4日時点、CHED)
高等教育機関(HEI)総数 1,977
SUC(州立大学・カレッジ、国費) 113
LUC(地方立、LGU費) 137
私立HEI 1,714(約87%)
その他政府系・CHED監督校・特殊校 13

議会CPBRD(2024年3月)は 1,729私立/246公立(SUC 112、LUC 122、その他13)と、基準日の違いで異なる内訳を示す。いずれにせよ機関数ベースでは私立が86〜88%を占める。 CHEDの全国在籍者数は HEMIS 経由で1年以上遅れる。2019-2020年度で340万人(CPBRD)というのが公表されている直近の全国値。BARMM の一部(私立85校、その他政府系7校)は集計から除外される点にも注意。

12-2. 無償化 ── RA 10931(2017年)

Universal Access to Quality Tertiary Education Act。

出所(本稿内) SUC LUC 何を数えたか
第12-1節 表(CHED、2024年1月4日時点) 113 137 高等教育機関の存在数
第12-1節 注(議会CPBRD、2024年3月) 112 122 基準日違いの存在数
本節(RA 10931 の対象) 112 107 無償化の対象校数(=存在数の部分集合)

SUCは112〜113でほぼ一致するが、LUCは107/122/137と最大30校ぶれる。 LUCは地方自治体が条例で設置する学校で、新設・統廃合・CHED未報告が起きやすく、「存在するLUC」と「RA 10931 の適用を受けるLUC」が一致しない。「フィリピンのLUCは137校」と「無償化対象は107校」は矛盾ではないが、同じ文で並べるなら必ず「存在数」か「無償化対象数」かを書くこと。どの数値も削っていない。 - 所得制限なし(means-testedでない) - 「無償」は授業料と大半の学校納付金のみ。生活費・交通費・書籍代・雑費は自己負担。例:USTP(カガヤンデオロ)機械工学1年前期 2025-2026年度の査定額は 16,992.50ペソ - 目安:SUCの年間総費用 5,000〜20,000ペソ/私立大学 60,000〜250,000ペソ超 - 財政持続性は経済官庁が繰り返し懸念を表明している論点

12-3. 一般教育(GE)18単位化案 ── 2026年最大の高等教育論争

時期 出来事
2026年4月16日 CHED、"Reframed GE Curriculum" 草案覚書を提示。36単位→18単位(必修5科目15単位+機関独自科目3単位)。さらに自律大学に対しても上限36単位を設定
2026年5月5日 公聴会でPSG(Policies, Standards and Guidelines)草案を提示
2026年5月 反対が噴出。UP・Ateneo・DLSU・UST・Silliman が反対文書。5月12日にはCHED本部へ抗議行進
2026年5月 CHED、パイロット実施を延期。2026-2027年度の導入を撤回し 2028年へ(Agrupis委員長。DepEd、TEC、EDCOM 2との省庁間会合を経て決定)
2026年6月 UP教員は「延期でなく撤回」を要求。反対運動は継続中

新6科目案:Professional Communication/Global Trends and Emerging Technologies/Data, Evidence and Ethics in a Knowledge-Driven Society/Rizal and Philippine Studies/Labor Education/Institutional Course

廃止・統合される主な現行科目:Ethics(独立科目としては消滅、他科目に統合)/Art Appreciation/Mathematics in the Modern World/The Contemporary World/Readings in Philippine History(Rizal科目へ統合)/Filipino・Panitikan

主な反対論

主体 論点
Ateneo de Manila 「SHSとの重複」というCHEDの前提を否定。反復的な深化こそが理解に不可欠。上限単位の撤廃と、自律機関の裁量を求める
UP 「大学の学問の自由への攻撃」として全面撤回を要求
法制上 Rizal科目は RA 1425(1956年)Labor Education は RA 11551 が根拠法。統合・削減は法との整合が問題
権限論 1994年高等教育法はCHEDに「最低要件」の設定権限しか与えていないのに「上限」を課すのは越権、との指摘
CEAP/CBCP-ECCE(カトリック系) Ethicsを基礎学問としても統合的次元としても堅持すべき(2026年5月8日共同声明)
DOST-NRCP より広範な協議を要求

CHED側の論拠:K-12との整合、SHSとの重複排除、専門教育・研究・実習の強化。Benitez-Jaro事務局長は「1996年は63単位、2013年のK-12で36単位に減った。今回が減少の始まりではない」と説明。 CHEDは少なくとも15本の意見書と22本の公式声明を受領。


13. 主要大学(Big Four)と入試

13-1. QS ランキング 2026

大学 略称 設立 性格 QS Asia 2026 QS World 2026
University of the Philippines UP 1908 国立総合(8構成大学) 104位(スコア67.3、前年比18位下落) =362位(2026-08-25 相互照合で補記)
Ateneo de Manila University ADMU 1859 私立・イエズス会 141位(61.6) 511位
De La Salle University DLSU 1911 私立・ラサール会 =178位(54.5) 654位
University of Santo Tomas UST 1611 私立・ドミニコ会。アジア最古の現存大学 184位(53.5) 851〜900位

13-1b. QS World 2027版(2026年6月18日公表)── 本稿公開時点での最新版はこちら

(2026-08-25 相互照合で追加。出典:分野「科学技術と研究開発」第5-1節/ABS-CBN・GMA・Philstar・Manila Bulletin 2026-06-18、The Varsitarian 2026-06-18) QSは「版年」と「公表年」が1年ずれる。2026年6月に公表されたのは “2027年版” である。上の表の「QS World 2026」は2025年6月公表の一つ前の版であり、2026年8月時点では最新ではない。

大学 QS World 2027版(2026年6月公表) QS World 2026版(2025年6月公表)
UP 402位 =362位
Ateneo de Manila 581位 511位
De La Salle 751〜760位 654位
UST 951〜1,000位 851〜900位
Adamson 1,201〜1,400位 1,001〜1,200位

2027年版ではフィリピンの主要5大学がすべて順位を落とした。研究強度と国際連携で他国の伸びが速いことが理由として挙げられている。 Daily Tribune(2026-06-19)のみ「DLSUは上昇」と報じており、DLSUの動きは媒体間で記述が割れている(未確認)。断定を避けること。

「フィリピンの大学は世界◯位」という表現は必ず「どのランキングの、どの版か」を明記すること。QS World、QS Asia、QS Sustainability、THE で順位はまったく異なる。さらに「版年」と「公表年」が1年ずれる点にも注意(13-1b参照)。 (2026-08-25 相互照合で修正。出典:QS World University Rankings 2026/分野「科学技術と研究開発」第5-1節)旧版で「UP の QS World 2026 の具体的順位は未確認」としていた箇所を =362位 に確定。最新版(2027年版、2026年6月公表)では402位に後退している。

13-2. 入学試験

試験 大学 特徴
UPCAT UP 数学・理科 各約60問、言語約40問、読解約30問。約4.5時間、紙ベース、誤答減点あり。UPCAT得点と高校GWAを合成した UPG(1.0〜5.0、低いほど良い)で判定。受験者約14万人の上位1割程度しか合格しない
ACET Ateneo 数学・英語・読解の3部、約3時間。約3万人が受験、定員約5,000。4校中もっとも米国型の総合評価(エッセイ・推薦状を実際に読む)
DCAT/DLSUCET DLSU 試験重視。DLSUはトリメスター制、出願はバッチ処理
USTET UST 4部・約150問・約3.5時間。Mental Aptitude(パターン認識・論理・概算)が特徴で、高校の科目に対応がないため得点しにくい

出願は前年の7〜10月、試験は8月〜翌1月が一般的。UPCATは2026年、全会場で紙ベースに回帰


14. TESDA と技術職業教育(TVET)

項目 内容
制度 コンピテンシー基準訓練 → TESDA認定の技能評価 → National Certificate(NC I〜IV)。ASEAN相互認証を通じ域内でも通用
2026年目標 60万〜65万人を訓練。奨学枠は63万〜65万(Benitez長官、2026年)
予算 同機関史上最大(2026年、TESDA)
認定校数 3,135校(民間集計、2026年)
需要の高い分野 建設、観光・ホスピタリティ、ICT、AI、再生可能エネルギー、医療。新規に半導体、EVを拡充
2026年の新施策 Digital Skills Passport(能力証明のデジタル化、雇用主による即時照会)、マイクロクレデンシャル、企業内教育、TESDABest 8-Point Agenda、新オムニバス奨学ガイドライン

就職率をめぐる決定的な食い違い

主体 数値
TESDA(自己申告) 卒業生の就職率 83〜86%
EDCOM 2(最終報告) 修了6か月後に就職しているのは 38%

これは「政府機関の主張」と「独立調査」の典型的な乖離である。TESDAの数値は業界・機関側の主張として扱い、単独で引用しないこと。 また「毎年170万人がTVETを修了」という数字について、Benitez長官自身が「厳密には修了者ではなく、訓練へのアクセスを得た人数」と説明している。「卒業生」と「受講者」を混同しないこと。


15. 留学生受入と語学留学産業

15-1. 学位課程の留学生

指標 数値
外国人学生総数 17,000人超(2022-2023学年度)。最大集団はインド国籍
インド人の医学系 約9,000人が予科・医学課程に在籍(2024年時点、在マニラ・インド大使館)
ビザ 9(f) 学生ビザ(入国管理局=Bureau of Immigration発給)。毎年更新が必要。BIの許可なく有給就労は不可

なぜインドから来るのか:2025年のNEET-UG(インド医学部入試)は約230万人が登録、約220万人が受験、合格12万人に対しMBBS定員は780校12.3万席。一方、2023→2024年でインド人留学生は米国で13%減、カナダで41%減、英国で28%減。フィリピンは英語での医学教育と低コストが強み。

制度的裏付け:CHEDは2025年5月8日付書簡で、CHED認可校の54か月MD課程(予科BSを除く)がインドのFMG(外国医学卒業生)ライセンス規則に適合する旨をインド大使館へ通知。2026年3月11日にはフィリピン下院決議が「CHED認可校のMDはNMC(インド医事委員会)準拠」と確認。 業界団体FICCIは、課程期間に合わせた学生ビザの長期化(毎年更新の廃止)を提案中。

15-2. 語学留学(ESL)産業

項目 内容
起源 2000年代初頭、韓国人の流入から。低価格・地理的近さ・マンツーマン主体が武器
規模 韓国人だけで年間約3万人。うち約10%が学生ビザ、約90%がSSP(在韓フィリピン大使館ほか)
歴史的推移 2004年 約5,700人 → 2005年 約17,000人 → 2012年 約24,000人。2012年のSSP発給は計31,000件、うち韓国人24,000件
主要3拠点 セブ(最大、リゾート併設型)/バギオ(涼しく「スパルタ式」)/クラーク(空港至近・静穏)
生徒構成 韓国、日本、台湾、ベトナム、中国。近年は中東、ロシア、ブラジル、モンゴルが新市場
料金(2025-2026年) 4週間パッケージ(授業+寮+食事)で 1,000〜2,500米ドル約61,800〜154,500ペソ/2026-08-19 の1ドル=61.815ペソで換算)。集中・試験対策コースは1,300〜2,200米ドル。2024年以前と比べ約30%上昇下記注(分野「生活費」とレンジが食い違う)
比較 米英加豪は月3,000〜6,000米ドル
換算レート (2026-08-25 相互照合で修正。出典:Bankers Association of the Philippines 2026-08-19 終値 61.815ペソ/分野「生活費」第1-1節) 旧版のペソ換算「約56,000〜140,000ペソ」は 1ドル=約56ペソという2023年頃の古いレートで計算されていた。ペソは2026年8月に史上最安値圏(61.8ペソ台)にあり、ドル建て価格のペソ換算は約10%高くなる。
授業形態 1日4〜6時間のマンツーマン+少人数クラス。母語別の人数上限を設ける学校もある
運営スタイル Sparta(外出制限・強制自習)/Semi-Sparta/リゾート型

(2026-08-25 第4回相互照合で併記。出典:分野「生活費」第2-1節) 同じ「4週間パッケージ」について、本クラスタ内で2つのレンジが流通している。

出所 提示 1ドル=61.8ペソ/1ペソ=2.58円で揃えると
本節(業界集計、ドル建て) US$1,000〜2,500 ¥159,000〜399,000
分野「生活費」第2-1節(日本語エージェント各社) 20万〜32万円 = US$1,254〜2,007

レンジが入れ子にならず横にずれている(下限は本節が約4万円安く、上限は本節が約8万円高い)。 母集団の違いとみられる ── 日本語エージェント経由は中位帯の日本人向け商品に偏り、ドル建て集計は韓国系スパルタ校の最安帯から欧米人向け最上位帯までを含む。どちらも業界側の提示価格で政府統計ではない。両方とも消していない。

SSP(Special Study Permit)の実務

項目 内容
性格 ビザではなく「観光ビザ滞在中に就学を合法化する許可」。1年未満の非学位課程が対象
費用 セブの語学学校が公表する2025年の例:初回 12,040ペソ/更新 7,800ペソ(2024年からSSP-I Cardが初回申請に必須化されたため上昇)。大学発給例では総額5,450〜5,740ペソという事例もあり、発給主体・年次で大きく異なる
有効期間 同校の説明では 90日。13週を超える滞在は再申請が必要(24週なら2回)
併せて必要 59日超の滞在は ACR I-Card(約4,000ペソ)
パッケージ外費用 空港送迎、SSP、I-Card、教材、寮デポジット、光熱費、ビザ延長で概ね 300〜600米ドル(17,000〜34,000ペソ)

語学学校数の公式統計は存在しない。観光省(DOT)の統計も限定的で、ICEF Monitor等も「正確な就学者数の把握は困難」としている。「◯◯校が認定」という業者の数字は業界側の主張として扱うこと。

15-3. 在住外国人向け ── インターナショナルスクール

学校 課程 参考費用
Manila Japanese School(マニラ日本人学校) 日本文部科学省課程(MEXT)、BGC所在、1985年設立、生徒約350人、6〜15歳 年約9,400米ドル(≒₱581,000)とする集計と、年₱300,000〜400,000 とする日系サイトの記載が併存(出所により数値が異なる)
International School Manila(ISM) IB/米国式 2026-2027年度:入学金4,500米ドル+施設拡充費4,500米ドル+出願料700米ドル。3歳児の初年度総額試算 約149万ペソ
Brent、BSM、Beacon、Reedley 等 IB World School(マニラ圏に14校)

費用帯の目安(2026年):普及帯 年15万〜35万ペソ/中位帯 35万〜55万ペソ/プレミアム帯 65万〜150万ペソ超。

(2026-08-25 第4回相互照合で明示化。出典:分野「生活費」第8節・第2-4節/Numbeo 2026年7月) 「インター校の年間授業料」の下限が、本クラスタ内で2.7倍食い違う。

出所 年間レンジ 性格
本節 ₱150,000〜1,500,000超(普及帯15万〜) 「インターナショナルスクール」を広く取り、English-medium の私立校・小規模校を含む
分野「生活費」第8節 ₱400,000〜1,500,000(日系サイト) 駐在員が実際に選ぶ帯
同・Numbeo マニラ平均(初等) ₱560,391/年 投稿ベースの推計
同・第2-4節(駐在家族4人モデル) 2名分で月₱60,000〜250,000=1名あたり年 ₱360,000〜1,500,000 モデル試算の前提

上限(150万ペソ)は3者とも一致しており、割れているのは下限だけである。 本節の「普及帯15万〜35万ペソ」はIB/英国式のいわゆるインター校ではなく、English-medium の現地私立校を含めた広義の数字とみられる。駐在・帯同の予算根拠に「年15万ペソ」を使うと、生活費側のモデル(1名あたり年36万ペソ〜)の半分以下になり、家族帯同費用を大きく過少に見積もる。どの数値も削っていない。 初年度は入学金・資本開発費・保証金が上乗せされ大幅に高くなる。学習支援・EALは別途年5万〜15万ペソ超、IGCSE/IB/A-levelの試験料も授業料に含まれない(1回5万〜15万ペソ超)。上記の多くはアグリゲーターサイト由来のため、必ず学校公式の最新料金表で確認すること。


16. 知らないと間違える点 ── まとめ

# よくある誤り 正しい理解
1 「学習貧困で世銀91%、政府37%と推計が割れている」 37%は政府の推計ではなく政策担当者へのアンケート回答。実測値と認識のギャップ
2 「高卒者1,890万人が読めない(PSA)」 誤報。10〜64歳の全人口ベースかつ定義変更による差分。DepEd・CMFRが訂正済み。修正後の高卒者は558万人
3 「MATATAGはPISA 2022を受けて導入」 時系列が逆。MATATAG発表 2023年8月10日、PISA 2022公表 2023年12月5日
4 「SHSはSTEM/ABM/HUMSSに分かれる」 2026-2027年度の新11年生から廃止。Academic/TechPro の2トラック+選択クラスターへ
5 「フィリピンは今も10年制の3か国のうち1つ」 過去形の話。2013年のRA 10533で終了。かつ典拠はフィリピン政府文書に集中
6 「TESDA卒業生の就職率は83〜86%」 TESDA自身の主張。EDCOM 2の独立調査は6か月後38%
7 「習熟率は12年生で0.47%」 報告書本文は0.40%、プレスリリース見出しは0.47%。出典を明記して使う
8 「2026年の教育予算は1.37兆ペソ」 EDCOM 2の集計値。DBMは1.34兆、Angara長官は1.35兆。DepEd単独は1.015兆
9 「教室不足は14.4万室(DepEd)」 EDCOM 2は16.6万室超と反論。かつ2025-2026年の地震で22,500室超が損壊
10 「CHEDが一般教育を18単位に削減した」 未実施。2026年5月に反対で延期、2028年へ。撤回要求は継続中
11 「母語教育は今も必修」 RA 12027(2024年10月10日成立)+DepEd Order 20, s. 2025 で 2025-2026年度から必修解除
12 「フィリピンの学校は6月始まり/8月始まり」 COVID期の8月始まりを経て、2026-2027年度は6月8日開講・3学期制
13 LET合格率の上昇=教員の質向上 同時期に試験設計そのものが変更(専門別化・課程整合)
14 「フィリピンの大学は世界◯位」 QS World/QS Asia/QS Sustainability/THE で順位は別物。必ず版を明記。さらにQSは版年と公表年が1年ずれる(2026年6月公表=2027年版)。UP は QS World 2026版 =362位 → 2027版 402位と後退(13-1b)
15 「EDCOM 2 が挙げた発育阻害は23.6%」 それは2023年NNSの値2025年更新調査(2026年6月公表)で25.3%へ悪化(6-2)
16 語学留学費用のペソ換算 流通する換算の多くが1ドル=56ペソ前後の古いレート。2026年8月は61.8ペソで、ペソ建て負担は約10%重い(15-2)
17 「無償化の対象は112のSUCと107のLUC=全国のSUC/LUCの数」 存在数と対象数は別。存在数はSUC 112〜113/LUC 107・122・137と最大30校ぶれる。必ず「存在数」か「RA 10931 対象数」かを書く(12-1・12-2)
18 「インター校は年15万ペソから通える」 それは English-medium の現地私立校を含む広義の下限。分野「生活費」の駐在モデルは1名あたり年36万ペソ〜。上限150万ペソは各資料一致(15-3)
19 語学学校の4週間パッケージ料金 US$1,000〜2,500(≒¥159,000〜399,000)と、日本語エージェントの20万〜32万円はレンジが横にずれている。入れ子でないのは母集団が違うため(15-2)

17. 主要出典

分類 出典
政府・議会 EDCOM 2(edcom2.gov.ph)『Turning Point: A Decade of Necessary Reforms』2026年1月26日/上院プレスリリース/DepEd(DO 010 s.2024、DO 020 s.2025、DO 009 s.2026、DM 012 s.2026、DM 036 s.2026、DO 011 s.2026)/CHED/TESDA/PSA(2024 FLEMMS、2020年国勢調査)/DBM(2026 People's Budget、RA 12314)/PRC(LET結果)
国際機関 OECD(PISA 2022 Country Note)/世界銀行(Fixing the Foundation, 2023/Philippines Learning Poverty Brief, 2024年4月)/UNICEF Philippines
研究機関 PIDS(Philippine Journal of Development, 2025/ALS過程評価)/Hoover Institution Policy Brief No. 2505(2025年10月)/ScienceDirect(2025年10月)/IJRISS、Consortia Academia
報道 Rappler/Philstar/GMA News/Manila Bulletin/Inquirer/BusinessWorld/The Manila Times/PNA/PIA/The Varsitarian/VERA Files/CMFR
大学 Ateneo de Manila University 公式声明(2026年5月)/University of the Philippines/QS

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