ASEAN内でのフィリピンの位置(指標別・実数併記)
ASEAN10か国(ブルネイ Brunei / カンボジア Cambodia / インドネシア Indonesia / ラオス Lao PDR / マレーシア Malaysia / ミャンマー Myanmar / フィリピン Philippines / シンガポール Singapore / タイ Thailand / ベトナム Viet Nam)の中で、フィリピンが各指標のどこに位置するかを一覧化した「引くための資料」。
順位だけを見ると誤解する。実数を必ずセットで見ること。「ASEAN第5位の経済規模」と「一人当たりGDPで下から4番目」は同時に成立する。
0. 全体サマリー(フィリピンのASEAN内順位・早見表)
| 指標 | フィリピンの実数 | ASEAN内順位 | 年 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 人口 | 1億1,679万人(世銀推計)注PSA 2024年センサス実測は 112,729,484人、IMF WEO系列は1億1,409万人 | 2位/10 | 2025 | World Bank WDI/PSA POPCEN 2024 |
| 名目GDP(総額) | 4,871億USD | 5位/10(注IMF WEO では4位。1-2節参照) | 2025 | World Bank WDI/IMF WEO |
| 一人当たり名目GDP | 約4,171USD(注IMF系では約4,270、センサス人口では約4,321) | 7位/10 | 2025 | WB GDP÷WB人口(筆者算出) |
| 実質GDP成長率 | 4.40% | 7位/10 | 2025 | World Bank WDI |
| インフレ率(CPI) | 1.66% | 低い方から4番目 | 2025 | World Bank WDI |
| 失業率(ILOモデル推計) | 2.20% | 低い方から5番目 | 2024 | World Bank / ILO |
| 貧困率(国内貧困線) | 9.7%(速報値・確定値ではない) | ─(国際比較不可 注) | 2025 | PSA(2026-08-21公表。OpenSTAT未収録) |
| 人間開発指数 HDI | 0.720(世界117位) | 7位/10 | 2023 | UNDP HDR 2025 |
| 英語能力 EF EPI | 569点(世界28位) | 2位(収載8か国中) | 2025 | EF EPI 2025 |
| 汚職認識指数 CPI | 32点(世界120位/182) | 8位/10 | 2025 | Transparency International(2026-02-10公表) |
| 報道自由度 | 46.79点(世界114位/180) | 4位/10 | 2026 | RSF World Press Freedom Index 2026 |
| 物流 LPI | 3.3(世界43位) | 4位(収載8か国中) | 2023 | World Bank LPI 2023 |
| 事業環境 | 下記6節参照(統一指標が消滅) | ─ | ─ | ─ |
| FDI純流入 | 77.9億USD | 4位(データのある6か国中) | 2025 | World Bank WDI(BoPベース) |
| 財輸出額 | 634億USD(BoPベース BX.GSR.MRCH.CD。注WTO系列837.2億/PSA公表844.1億と別物) |
4位(データのある6か国中) | 2025 | World Bank WDI |
| 外国人訪問者数 | 6,484,060人 | 主要国中最下位級(マレーシアの約6.5分の1) | 2025 | 観光省(DOT)/報道 |
| 家庭用電気料金 | 0.209 USD/kWh | 高い方から2位 | 2023–26平均 | GlobalPetrolPrices(2026年Q2掲載) |
| インターネット普及率 | 67.26%(ITU系)/83.8%(Kepios系)注 | 8位/9位(ITU系) | 2024/2026 | World Bank・DataReportal |
| 固定回線速度(中央値) | 187.77 Mbps(世界73位) | 5位/10 | 2026年7月 | Ookla Speedtest Global Index |
| モバイル速度(中央値) | 99.97 Mbps(世界78位) | 7位/9 | 2026年7月 | Ookla Speedtest Global Index |
| 年齢中央値 | 26.14歳 | 9位(=2番目に若い) | 2025 | UN WPP 2024改訂・中位推計 |
2026年の急変:フィリピンは「ASEANの高成長国」という2010年代の位置づけを2025–26年に失いつつある。2026年Q2の実質成長率は2.3%(コロナ後最低)、2026年7月のインフレ率は6.2%、FDIは5年ぶり低水準。詳細は7節。
1. 規模:人口・GDP
1-1. 人口(2025年、World Bank WDI)
| 順位 | 国 | 人口(2025年) |
|---|---|---|
| 1 | インドネシア | 285,721,236 |
| 2 | フィリピン | 116,786,962 |
| 3 | ベトナム | 101,598,527 |
| 4 | タイ | 71,619,863 |
| 5 | ミャンマー | 54,850,648 |
| 6 | マレーシア | 35,977,838 |
| 7 | カンボジア | 17,847,982 |
| 8 | ラオス | 7,873,046 |
| 9 | シンガポール | 6,111,175 |
| 10 | ブルネイ | 466,330 |
注 フィリピン統計庁(PSA)の国勢調査(POPCEN)ベースの人口は、World Bank / 国連推計より小さく出る。「1億1,700万人」と「1億1,200万人台」が同時に流通しているのは、推計と実査(センサス)の違いであって、どちらかが間違いというわけではない。資料に書くときは必ず出典と基準日を添えること。
1-2. 名目GDP総額(current US$)
| 順位 | 国 | 2025年(億USD) | 2024年(億USD) |
|---|---|---|---|
| 1 | インドネシア | 14,456 | 13,963 |
| 2 | シンガポール | 6,039 | 5,729 |
| 3 | タイ | 5,770 | 5,294 |
| 4 | ベトナム | 5,147 | 4,763 |
| 5 | フィリピン | 4,871 | 4,617 |
| 6 | マレーシア | 4,722 | 4,222 |
| 7 | ミャンマー | 817 | 741 |
| 8 | カンボジア | 513 | 464 |
| 9 | ラオス | 183 | 165 |
| 10 | ブルネイ | 150 | 153 |
出典:World Bank WDI(NY.GDP.MKTP.CD、2026年7月更新版。2026-08-26 にAPI実測で全件再確認)
フィリピンはASEAN第5位。ただしマレーシア(人口3,598万人)とほぼ同じ総額を、3.2倍の人口で稼いでいる。
注(2026-08-26 検証で追記)「ASEAN第5位」は出典依存である。IMF WEO では第4位になる。IMF DataMapper API(NGDPD)を2026-08-26に実測したところ、2025年の名目GDP(十億USD)は次のとおりで、ベトナムがフィリピンの下に来る。
| 国 | 【WDI】2025(十億USD) | 【IMF WEO】2025(十億USD) | 差 |
|---|---|---|---|
| インドネシア | 1,445.6 | 1,445.6 | 一致 |
| シンガポール | 603.9 | (本環境の取得は不安定・要再確認) | 注 |
| タイ | 577.0 | (同上) | 注 |
| ベトナム | 514.7 | 465.8 | ▲48.9(約9.5%) |
| フィリピン | 487.1 | 487.2 | ほぼ一致 |
| マレーシア | 472.2 | 472.2 | 一致 |
つまり WDIでは「インドネシア→シンガポール→タイ→ベトナム→フィリピン(5位)」、IMF WEOでは「…→フィリピン(4位)→マレーシア→ベトナム」 となる。乖離はほぼベトナム1国に起因する(ベトナムのGDP系列改定の反映時期の差とみられるが、原因は未確認)。注 どちらも消していない。「ASEAN第◯位」と書くときは必ず出典(World Bank WDI か IMF WEO か)と年を添えること。
1-3. 一人当たり名目GDP
| 順位 | 国 | 2025年(USD、筆者算出) | 2024年(USD、WB公表値) |
|---|---|---|---|
| 1 | シンガポール | 98,814 | 94,896.6 |
| 2 | ブルネイ | 32,235 | 33,153.5 |
| 3 | マレーシア | 13,125 | 11,874.4 |
| 4 | タイ | 8,057 | 7,386.6 |
| 5 | ベトナム | 5,066 | 4,716.7 |
| 6 | インドネシア | 5,060 | 4,925.4 |
| 7 | フィリピン | 4,171 | 3,985.3 |
| 8 | カンボジア | 2,872 | 2,627.9 |
| 9 | ラオス | 2,325 | 2,124.0 |
| 10 | ミャンマー | 1,489 | 1,359.1 |
出典:2024年はWorld Bank WDI(NY.GDP.PCAP.CD)。2025年は World Bank の2025年GDPを同2025年人口で除した筆者算出値。
ベトナムが一人当たりGDPでフィリピンを明確に追い抜いた(2024年:ベトナム4,717 vs フィリピン3,985、差732USD)。2025年は差が約895USDに拡大。1990年代には逆だった。この逆転を認識していないと、フィリピンの立ち位置を大きく読み違える。
注(2026-08-26 検証で追記)「差895USD」はWDI系列に固有の数字である。IMF WEO(NGDPDPC、2026-08-26 実測)では 2025年がベトナム 4,281/フィリピン 3,945 で差は約336USDにとどまる。逆転が起きている点は両系列で一致するが、差の大きさは約2.7倍違う。「ベトナムに◯◯USDの差をつけられた」と書くときは系列名を必ず添えること。注 どちらも消していない。
注 さらに、フィリピンの一人当たりGDP自体が 4,171(WDI人口で除算)/約4,270(IMFのGDP÷IMFの人口114.086百万人)/約4,321(2024年センサス人口112,729,484人で除算) の3通りある(分野「統計時系列」§4-3 参照)。
フィリピンの下はカンボジア・ラオス・ミャンマーのみ。ASEANの下から4番目。
2. 景気:成長率・インフレ・雇用
2-1. 実質GDP成長率(%)
| 順位(2025年) | 国 | 2025年 | 2024年 |
|---|---|---|---|
| 1 | ベトナム | 8.02 | 7.04 |
| 2 | カンボジア | 5.35 | 6.02 |
| 3 | マレーシア | 5.17 | 5.11 |
| 4 | インドネシア | 5.11 | 5.03 |
| 5 | シンガポール | 5.03 | 5.34 |
| 6 | ラオス | 4.54 | 4.13 |
| 7 | フィリピン | 4.40 | 5.71 |
| 8 | タイ | 2.44 | 2.95 |
| 9 | ブルネイ | 0.67 | 4.05 |
| 10 | ミャンマー | −2.01 | −0.97 |
出典:World Bank WDI(NY.GDP.MKTP.KD.ZG)
2024年3位 → 2025年7位への転落。2025年通年4.4%は「5年ぶりの低水準」で、政府目標5.5〜6.5%を大きく下回った(PSA、2026-01-29公表/BusinessWorld 2026-01-30ほか)。
2026年はさらに悪化:Q1 2.8%(PSA、2026-05-07報道)、Q2 2.3%=コロナ後最低(PSA、注報道日は本資料「2026-08-09」/分野「統計時系列」§2-2「2026-08-07」で食い違う=2026-08-26 検証で併記。数値2.3%自体は両資料で一致)。ADBは2026年7月にフィリピンの2026年成長率見通しを4.4%へ下方修正(世界的エネルギー危機と中東情勢を理由)。同時期にADBはアジア開発途上国全体を4.9%へ上方修正しており、フィリピンは域内で相対的に取り残された形。
注(2026-08-26 検証で追記)ADBの「4.4%への引き下げ」の改定前の値について、分野間で記述が割れている。分野「統計時系列」§2-3 は「ADBが従来5.3%から4.4%へ」とし、分野「ASEAN各国との関係」§2-3 は「5.3%→4.4%→3.7% は世界銀行の2段階引き下げ」とする。一次資料(ADB Asian Development Outlook 2026年7月版/世界銀行 Philippines Economic Update)は本検証でも未照合=未確認。どちらも消さず、断定して引用しないこと。
2-2. インフレ率(CPI、年平均、%)
| 国 | 2025年 | 2024年 |
|---|---|---|
| ラオス | 7.74 | 23.13 |
| ベトナム | 3.31 | 3.62 |
| カンボジア | 2.35 | 0.81 |
| インドネシア | 1.91 | 2.18 |
| フィリピン | 1.66 | 3.21 |
| マレーシア | 1.38 | 1.83 |
| シンガポール | 0.90 | 2.39 |
| タイ | −0.13 | 0.40 |
| ブルネイ | −0.30 | −0.39 |
| ミャンマー | データなし | データなし |
出典:World Bank WDI(FP.CPI.TOTL.ZG)
注 2025年の1.66%はもはや現状ではない。2026年7月のフィリピンのインフレ率は6.2%(6月6.4%)、2026年上半期平均4.8%(PSA、2026-08-05報道)。エネルギー価格高騰が主因。「フィリピンのインフレは落ち着いている」という2025年の記述をそのまま使うと誤りになる。
2-3. 失業率
| 国 | ILOモデル推計 2024年(%) |
|---|---|
| カンボジア | 0.25 |
| タイ | 0.78 |
| ラオス | 1.17 |
| ベトナム | 1.60 |
| フィリピン | 2.20 |
| シンガポール | 2.74 |
| ミャンマー | 2.89 |
| インドネシア | 3.30 |
| マレーシア | 3.85 |
| ブルネイ | 5.18 |
出典:World Bank WDI(SL.UEM.TOTL.ZS、ILOモデル推計)
注 この表を「フィリピンの失業率は2.2%」と読んではいけない。ILOモデル推計と各国公式統計は定義・調査方法が異なる。PSA(フィリピン統計庁)の労働力調査(LFS)による公式失業率は以下のとおりで、ILO推計の倍以上:
| 月 | 公式失業率(PSA) | 失業者数 |
|---|---|---|
| 2026年1月 | 5.8%(3年超ぶりの高水準) | ─ |
| 2026年2月 | 5.1% | 266万人 |
| 2026年3月 | 5.0% | 258万人 |
| 2026年4月 | 4.8% | 250万人 |
| 2026年5月 | 4.8% | 約250万人 |
| 2026年6月 | 4.9% | 259万人 |
出典:PSA労働力調査(各月)、GMA / Philstar / BusinessWorld / SunStar 報道(2026年3〜8月)
注 国際比較の際は「ILOモデル推計どうし」か「各国公式統計どうし」で揃えること。混ぜると意味のない比較になる。
3. 貧困と生活水準
3-1. 国内貧困線ベースの貧困率(国際比較不可 注)
| 国 | 貧困率(%) | 年 |
|---|---|---|
| フィリピン | 9.7 | 2025 |
| インドネシア | 9.0 | 2024 |
| ラオス | 15.0 | 2024 |
| タイ | 5.4 | 2022 |
| マレーシア | 5.1 | 2023 |
| ベトナム | 4.2 | 2022 |
| カンボジア/ミャンマー/シンガポール/ブルネイ | データなし | ─ |
出典:World Bank WDI(SI.POV.NAHC)。フィリピンの2025年値はPSA(2026-08-21公表)。
フィリピンの貧困率(人口ベース)は 2018年16.7% → 2021年18.1% → 2023年15.5% → 2025年9.7%。家族ベースは6.4%。貧困線は1日約96ペソ(PSA、2026-08-21。5人世帯月額14,634ペソからの換算値)。「約650万人が貧困から脱した」と発表された。
注(2026-08-26 検証で追記)「650万人が脱貧困」「残る貧困者880万人」という報道値は、貧困率9.7%と整合しない。9.7% × 2024年センサス人口112,729,484人 = 約1,093万人 となり、報道の「880万人」と約200万人合わない。分野「統計時系列」§6-1 も同じ不整合を指摘している。貧困者の実数(人数)は【未確認】として扱い、率だけを引用するのが安全。 注 また 2025年の9.7%/6.4%はPSAの2026-08-21発表の速報値であり、OpenSTAT には未収録=確定値ではない(分野「統計時系列」§6-1)。「9.7%」を確定値として書かないこと。
注 この2年間で15.5%→9.7%という急落は極めて大きい。DepDev(経済開発省)が貧困指標のレビューを進めていると報じられており(BusinessMirror、2026-08-25)、数字の扱いには注意が要る。また各国の貧困線は水準も改定タイミングも異なるため、上表の国際比較はできない。
3-2. 国際比較可能な貧困率:1日4.20ドル(2021年PPP)
| 国 | 貧困率(%) | 年 |
|---|---|---|
| ラオス | 22.5 | 2024 |
| インドネシア | 19.8 | 2024 |
| フィリピン | 16.9 | 2023 |
| ベトナム | 4.2 | 2022 |
| タイ | 0.2 | 2024 |
| マレーシア | 0.1 | 2021 |
| その他4か国 | データなし | ─ |
出典:World Bank WDI(SI.POV.LMIC、2021年PPPベースの下位中所得国ライン)
注(2026-08-26 検証で修正)旧記載「2017年PPPベース(1.90/3.20/5.50ドル)」は誤り。1.90/3.20/5.50ドルは2011年PPPの3線であり、2017年PPPの3線は 2.15/3.65/6.85ドルである。正しい系譜は下表。
| PPP基準年 | 極度の貧困 | 下位中所得国ライン | 上位中所得国ライン |
|---|---|---|---|
| 2011年PPP | 1.90ドル/日 | 3.20ドル/日 | 5.50ドル/日 |
| 2017年PPP | 2.15ドル/日 | 3.65ドル/日 | 6.85ドル/日 |
| 2021年PPP(現行) | 3.00ドル/日 | 4.20ドル/日 | 8.30ドル/日 |
(出典:World Bank WDI API の指標メタデータ SI.POV.DDAY/SI.POV.LMIC/SI.POV.UMIC を2026-08-26に実測取得し現行3線を確認。旧2基準は Our World in Data "From $1.90 to $2.15 a day: the updated international poverty line")
上表の16.9%(フィリピン2023年)は現行の4.20ドル線の値であり、旧「1日3.20ドル」「3.65ドル」の数字と混在させないこと。
3-3. 人間開発指数(HDI)と平均寿命
| HDI順位(世界) | 国 | HDI値 | 平均寿命(年) | 平均就学年数(年) |
|---|---|---|---|---|
| 13 | シンガポール | 0.946 | 83.7 | 11.99 |
| 60 | ブルネイ | 0.837 | 75.3 | 9.28 |
| 67 | マレーシア | 0.819 | 76.7 | 11.09 |
| 76 | タイ | 0.798 | 76.4 | 9.04 |
| 93 | ベトナム | 0.766 | 74.6 | 8.98 |
| 113 | インドネシア | 0.728 | 71.1 | 8.70 |
| 117 | フィリピン | 0.720 | 69.8 | 9.98 |
| 147 | ラオス | 0.617 | 69.0 | 6.06 |
| 150 | ミャンマー | 0.609 | 66.9 | 6.38 |
| 151 | カンボジア | 0.606 | 70.7 | 5.20 |
出典:UNDP『Human Development Report 2025』統計付属表1(データ参照年は2023年)。2026年版HDRは2026-08-26時点で未刊行。
注(2026-08-26 検証)シンガポール13位0.946/ブルネイ60位0.837/マレーシア67位0.819 は英語版Wikipedia「List of countries by Human Development Index」(HDR 2025)と一致した。ただしタイは同記事で77位(本表76位)、ベトナムは同記事で94位・HDI 0.761〜0.765(本表93位・0.766)と食い違う。どちらも消していない。フィリピンのASEAN内7位という位置は、どちらの表記でも変わらない。UNDP原典(hdr.undp.org の統計付属表PDF)での再照合を推奨。
平均寿命69.8年はASEANで下から3番目(ミャンマー66.9、ラオス69.0に次ぐ)。フィリピンは平均就学年数9.98年でASEAN第4位と教育年数は比較的長いのに、HDIが7位に留まるのは平均寿命と所得の低さによる。
注 「教育年数が長い=学力が高い」ではない。OECD PISAの数学平均点(2018年)は下表のとおりで、フィリピンは参加ASEAN国中で最下位:
| 国 | PISA数学平均点(2018年) |
|---|---|
| シンガポール | 569.0 |
| ベトナム | 495.7 |
| マレーシア | 440.2 |
| ブルネイ | 430.1 |
| タイ | 418.6 |
| インドネシア | 378.7 |
| フィリピン | 352.6 |
出典:World Bank WDI(LO.PISA.MAT)。※2022年調査の値は同データベースに未収載。
これが「英語は話せるが基礎学力は低い」というフィリピンの構造的パラドックスの数値的裏づけ。英語力(次節)だけで人材の質を語るのは危険。
4. フィリピンの相対的な強み
4-1. 英語能力:EF EPI 2025
| 世界順位 | 国 | スコア | 判定 |
|---|---|---|---|
| 24 注 | マレーシア | 581 | High |
| 28 | フィリピン(英語版Wikipediaはナイジェリアと同点28位タイと記載) | 569 | High |
| 64 | ベトナム | 500 | Moderate |
| 80 | インドネシア | 471 | Low |
| 88 | ラオス | 461 | Low |
| 99 | ミャンマー | 444 | Very Low |
| 116 | タイ | 402 | Very Low |
| 123 | カンボジア | 390 | Very Low |
| ─ | シンガポール/ブルネイ | 未収載 | ─ |
出典:EF English Proficiency Index 2025(123か国・地域、成人220万人の受験結果、2025年11月公表)。世界平均488。(2026-08-26 検証)収載数123・フィリピン569点・マレーシア581点は英語版Wikipedia「EF English Proficiency Index」で一致を確認。注 ただしマレーシアの世界順位は本表「24位」に対し同記事は「23位」と表記しており、1つ食い違う。どちらも消していない(フィリピンがマレーシアの下=ASEAN2位という結論は両方で同じ)。EF原典(ef.com)で再照合のこと。
フィリピンの技能別内訳:ライティング603、リーディング(未取得)、スピーキング539。最も弱いのがスピーキングという点は「フィリピン人は英語が話せる」という一般イメージと逆で、覚えておくと役に立つ。国内首位はコルディリェラ行政地域(CAR)606、都市首位はマニラ603。
注 EF EPIは国民代表標本ではない。EFの無料オンラインテストを自発的に受けた人のスコア集計であり、受験者層は各国で偏る。シンガポールとブルネイは2025年版に収載されていない(=「ASEAN1位」とは言えない)。「フィリピンはASEANで英語1位」という表現は指標を明記しない限り不正確。
とはいえ、EF EPI 2025で High 判定を得たASEAN国はマレーシアとフィリピンの2か国のみで、タイ・カンボジアとは160〜180点差がある。この差は本物。
4-2. 若さ:年齢中央値と人口構成
| 年齢中央値順位(高い順) | 国 | 年齢中央値(2025年) | 65歳以上比率(2024年、%) | 0–14歳比率(2024年、%) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | タイ | 40.55 | 15.36 | 14.75 |
| 2 | シンガポール | 36.21 | 13.66 | 11.69 |
| 3 | ベトナム | 33.42 | 9.05 | 23.22 |
| 4 | ブルネイ | 32.71 | 6.87 | 20.83 |
| 5 | マレーシア | 30.95 | 7.74 | 21.79 |
| 6 | インドネシア | 30.38 | 7.29 | 24.60 |
| 7 | ミャンマー | 30.11 | 7.30 | 24.30 |
| 8 | カンボジア | 26.21 | 6.16 | 29.79 |
| 9 | フィリピン | 26.14 | 5.49 | 27.87 |
| 10 | ラオス | 24.94 | 4.67 | 30.20 |
出典:年齢中央値はUN World Population Prospects 2024年改訂・中位推計(Our World in Data経由)。年齢構成はWorld Bank WDI(2024年)。
人口1億人超のASEAN3か国(インドネシア・フィリピン・ベトナム)のうち、フィリピンが圧倒的に若い。ベトナム33.42歳 vs フィリピン26.14歳=7.3歳差。タイとは14.4歳差。65歳以上比率もフィリピン5.49%はASEANで下から2番目。
これは「人口ボーナス期の残存年数」の差である。ベトナムとタイは高齢化が先行しており、2030年代の労働力供給という一点では、ASEANでフィリピンは最も余裕がある大国。
4-3. 海外送金(Remittances)
| 順位 | 国 | 個人送金受取額 2024年(億USD) | 対GDP比 2024年(%) |
|---|---|---|---|
| 1 | フィリピン | 402.8 | 8.72 |
| 2 | インドネシア | 160.4 | 1.15 |
| 3 | タイ | 94.6 | 1.79 |
| 4 | カンボジア | 28.3 | 6.10 |
| 5 | マレーシア | 16.1 | 0.38 |
| 6 | ラオス | 2.5 | 1.49 |
| ─ | ベトナム/シンガポール/ミャンマー/ブルネイ | データなし | ─ |
出典:World Bank WDI(BX.TRF.PWKR.CD.DT / BX.TRF.PWKR.DT.GD.ZS)
金額でも対GDP比でも、WDIにデータのある6か国の中では最大(2026-08-26 検証で母集団を明記。旧記載「ASEAN最大」はベトナム・シンガポール・ミャンマー・ブルネイのデータ欠落を踏まえていなかった。注 とくにベトナムは世界有数の送金受取国であり、欠落の影響が大きい。ベトナムを含めた確定順位は未確認)。マクロ的にはこれが経常収支とペソ相場の底を支え、ミクロ的には家計消費(=GDPの約4分の3)を支える。
注 「現金送金(cash remittances)」と「個人送金(personal remittances)」を混同しないこと。BSP(中央銀行)が発表する現金送金(cash remittances)は2025年通年で356.3億USD($35.63 billion)=過去最高(BSP公表、BusinessWorld / Philstar / ABS-CBN 2026-02-16〜17報道)。一方、World Bankの個人送金(2024年 402.8億USD)は現物移転等を含む広い概念で、数字が5〜6%ほど大きく出る。並記するときは必ず概念名を書く。
4-4. IT-BPM(BPO産業)
| 項目 | 数値 | 年 | 出典 |
|---|---|---|---|
| IT-BPM売上高 | 400億USD超 | 2025 | IBPAP/Philstar 2026-01-29 |
| 従業員数 | 200万人に迫る水準 | 2025 | IBPAP/Daily Tribune 2026-01-01 |
| 2026年目標 | 420億USD | 2026 | IBPAP/Inquirer 2025-09-24 |
IT-BPMの売上高400億USDは、フィリピンの財(モノ)の輸出額に匹敵する規模である。サービス輸出がモノの輸出に匹敵するという産業構造は、ASEANでフィリピン特有。
注(2026-08-26 検証で修正)旧記載「財の輸出額634億USDの約63%」は、比率が採用系列に完全に依存するため断定を外した。「フィリピンの2025年財輸出額」は3系列あり、どれを使うかで比率が 47%〜63% まで動く。
| 系列 | 2025年 財輸出額 | IT-BPM 400億USD との比率 |
|---|---|---|
世界銀行WDI BoPベース(BX.GSR.MRCH.CD)=本資料5-2の表 |
634.1億USD | 約63% |
世界銀行WDI WTO原統計ベース(TX.VAL.MRCH.CD.WT) |
837.2億USD | 約48% |
| PSA公表値(2026-01-27報道、過去最高) | 844.1億USD | 約47% |
3系列の存在と乖離は分野「統計時系列」§7-1・§7-2 に詳述。「財輸出額の◯%」と書くときは必ず指標コードまたは発表主体を明記すること。(出典:World Bank WDI API を2026-08-26に実測。BoP 63,411,405,144 USD/WTO 83,723,000,000 USD)
注 2026年7月、業界はAIの普及と国際競争激化を理由に目標を下方修正した(BusinessWorld、2026-07-15)。「BPOは安泰」という前提は2026年時点でもう使えない。
4-5. 報道の自由(相対的な強み)
| 順位(世界/180) | 国 | スコア |
|---|---|---|
| 92 | タイ | 53.97 |
| 95 | マレーシア | 52.73 |
| 96 | ブルネイ | 52.58 |
| 114 | フィリピン | 46.79 |
| 123 | シンガポール | 44.57 |
| 129 | インドネシア | 43.02 |
| 151 | カンボジア | 33.28 |
| 154 | ラオス | 32.54 |
| 166 | ミャンマー | 26.38 |
| 174 | ベトナム | 21.15 |
出典:Reporters Without Borders(RSF)World Press Freedom Index 2026
フィリピンは2025年の116位から114位へ2つ上昇。世界順位は低いが、ASEAN内では4位でシンガポール・インドネシア・ベトナムより上。指標別では社会指標57.05(世界96位)が最も高く、経済指標34.50(世界131位)が最も低い=メディアの経済的自立が最大の弱点。
注 「フィリピンはジャーナリストにとって危険な国」という一般認識と、この域内4位という位置は矛盾しない。RSFは政治・経済・法・社会・安全の5指標の合成であり、安全指標だけを見れば54.03(世界117位)と低い。
5. フィリピンの相対的な弱み
5-1. 製造業の薄さ
| 順位 | 国 | 製造業付加価値 対GDP比 2024年(%) |
|---|---|---|
| 1 | カンボジア | 27.81 |
| 2 | ミャンマー | 25.10 |
| 3 | ベトナム | 24.33 |
| 4 | タイ | 24.24 |
| 5 | マレーシア | 22.50 |
| 6 | インドネシア | 18.98 |
| 7 | シンガポール | 16.26 |
| 8 | フィリピン | 15.67 |
| 9 | ブルネイ | 10.66 |
| 10 | ラオス | 9.05 |
出典:World Bank WDI(NV.IND.MANF.ZS)
フィリピンの製造業比率15.67%は、カンボジア(27.81%)より12ポイント低い。シンガポール(16.26%)と同水準だが、シンガポールは半導体・医薬品の超高付加価値製造であり、内容がまったく違う。
5-2. 輸出の小ささ
| 順位 | 国 | 財輸出額 2025年(億USD) | 財輸出額 2024年(億USD) | 財・サービス輸出 対GDP比 2024年(%) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | シンガポール | 6,516 | 6,011 | 174.66 |
| 2 | タイ | 3,351 | 2,973 | 69.67 |
| 3 | インドネシア | 2,804 | 2,631 | 22.31 |
| 4 | フィリピン | 634 | 551 | 25.74 |
| 5 | カンボジア | 314 | 268 | 71.36 |
| 6 | ブルネイ | 103 | 111 | 74.27 |
| ─ | ベトナム | データなし | 4,065 | 90.17 |
| ─ | マレーシア | データなし | 2,484 | 71.34 |
| ─ | ラオス | データなし | 94 | ─ |
| ─ | ミャンマー | データなし | データなし | ─ |
出典:World Bank WDI(BX.GSR.MRCH.CD =国際収支(BoP)ベースの財輸出/NE.EXP.GNFS.ZS)。2025年はマレーシア・ベトナム等が未更新のため順位は「データのある6か国中」。
注(2026-08-26 検証で追記)この表の「財輸出額」はBoPベースであり、フィリピンの通関統計とは別物である。同じ2025年について、WTO原統計ベース(TX.VAL.MRCH.CD.WT)は 837.2億USD、PSA公表値は 844.1億USD(過去最高、2026-01-27報道)で、本表の 634億USD とは約200億USD(約3割)違う。他国の値も同じBoPベースで揃えてあるため表内の比較は成立するが、「フィリピンの輸出は◯◯億ドル」と単独で引用してはならない。3系列の詳細は分野「統計時系列」§7-1・§7-2 を参照。
2024年で比較すると、ベトナムの財輸出4,065億USDはフィリピンの551億USDの約7.4倍。両国の人口はほぼ同規模(ベトナム1.02億人、フィリピン1.17億人)。これがASEAN内でのフィリピンの立ち位置を最も雄弁に示す1組の数字。
輸出のGDP比25.74%は、データのある8か国中インドネシア(22.31%)に次いで2番目に低い(2026-08-26 検証で母集団を明記。ラオス・ミャンマーは当該年のデータなし=ASEAN10か国での順位は確定できない)。フィリピンは「内需型」であり、輸出主導のASEAN経済モデルの例外。関税ショックへの耐性が相対的に高い反面、外需による成長の押し上げが効かない。
5-3. 対内直接投資(FDI)
| 国 | FDI純流入 2025年(億USD) | FDI純流入 2024年(億USD) |
|---|---|---|
| シンガポール | 1,590.9 | 1,350.8 |
| インドネシア | 222.8 | 242.8 |
| タイ | 188.4 | 143.0 |
| フィリピン | 77.9 | 94.0 |
| カンボジア | 51.0 | 43.9 |
| ブルネイ | 0.62 | 0.29 |
| ベトナム | データなし | 201.7 |
| マレーシア | データなし | 155.9 |
| ミャンマー | データなし | 11.0 |
| ラオス | データなし | 9.9 |
出典:World Bank WDI(BX.KLT.DINV.CD.WD、BoPベース)
2024年ベースの順位ではフィリピンは6位(シンガポール→インドネシア→ベトナム→マレーシア→タイ→フィリピン)。人口2位・GDP5位の国が、FDIでは6位。
2025年の77.9億USDは5年ぶりの低水準(BusinessWorld / Philstar / GMA、2026-03-11〜12)。さらに2026年5月の月次FDIは11年ぶりの低水準、1〜4月累計は前年比26.5%減の20億USD(Manila Bulletin 2026-08-10、SunStar 2026-07-12)。UNCTAD『World Investment Report 2026』(2026-07-07公表)は東南アジアが開発途上地域のFDIを牽引したとしており、域内でフィリピンだけが逆行している構図。
5-4. 電気料金
| 国 | 家庭用(USD/kWh) | 産業用(USD/kWh) |
|---|---|---|
| シンガポール | 0.233 | 0.262 |
| フィリピン | 0.209 | 0.156 |
| カンボジア | 0.150 | データなし |
| タイ | 0.127 | 0.128 |
| インドネシア | 0.090 | 0.070 |
| ベトナム | 0.078 | 0.078 |
| マレーシア | 0.050 | 0.129 |
| ラオス | 0.034 | データなし |
| ミャンマー | 0.025 | 0.109 |
| ブルネイ | データなし | データなし |
出典:GlobalPetrolPrices.com(2026年Q2掲載、2023–2026年の平均値)
家庭用でベトナムの2.7倍、マレーシアの4.2倍。産業用でもベトナムの2倍。製造業立地の意思決定で、これが最も重い不利要因になる。
注 「フィリピンがASEANで最も電気が高い」か「シンガポールに次いで2番目か」は、時点と指標で答えが変わる。上表の複数年平均ではシンガポールが上だが、2026年6月の月次ではフィリピンがシンガポールを上回りASEAN最高になったとエネルギー省(DOE)が公表し、複数媒体が報じている(GMA 2026-07-20、Asian Power 2026-07-09)。世界銀行も2026年8月にフィリピンの電気料金がASEAN最高である旨を指摘したと報じられた(GMA、2026-08-06)。ある研究機関は2026年5月時点で「フィリピンの家庭用電気料金は東南アジアで最も高い」と結論づけている(BusinessMirror、2026-05-28)。※各報道の具体的なkWh単価は本調査では原典未取得。
高電気料金は屋根置き太陽光への急速なシフトを生んでおり、2026年6月にはロイターが「フィリピンが太陽光導入で世界を先導している」と報じている(2026-06-28)。弱みが別の産業機会になりつつある点は押さえておきたい。
5-5. 物流(LPI)
| LPI 2023 世界順位 | 国 | 総合スコア(1–5) |
|---|---|---|
| 1 | シンガポール | 4.3 |
| 26 | マレーシア | 3.6 |
| 34 | タイ | 3.5 |
| 43 | ベトナム | 3.3 |
| 43 | フィリピン | 3.3 |
| 61 | インドネシア | 3.0 |
| 順位未確認 | カンボジア | 2.4 |
| 順位未確認 | ラオス | 2.4 |
| ─ | ミャンマー/ブルネイ | 2023年版未収載 |
出典:World Bank Logistics Performance Index 2023(スコアはWorld Bank WDI「LP.LPI.OVRL.XQ」、順位はPhilippine News Agency 2023-04-24、The Star 2023-04-26等の報道)
43位はフィリピン史上最高順位(2018年の60位から17ランク上昇、PNA 2023-04-24)。ベトナムと同点。
注 LPIは2023年版が最新で、2026-08-26時点で新版は確認できない。3年前のデータであることを明記して使うこと。
5-6. インターネット速度と普及率
速度(Ookla Speedtest Global Index、2026年7月)
| 国 | モバイル中央値(Mbps) | 世界順位 | 固定回線中央値(Mbps) | 世界順位 |
|---|---|---|---|---|
| ブルネイ | 344.30 | 5 | 120.70 | 94 |
| ベトナム | 326.68 | 6 | 349.18 | 22 |
| シンガポール | 238.94 | 20 | 641.61 | 1 |
| マレーシア | 206.05 | 33 | 244.67 | 49 |
| カンボジア | 187.21 | 39 | 81.06 | 115 |
| タイ | 172.48 | 46 | 363.84 | 16 |
| フィリピン | 99.97 | 78 | 187.77 | 73 |
| インドネシア | 80.33 | 83 | 81.71 | 113 |
| ラオス | 73.84 | 85 | 90.25 | 107 |
| ミャンマー | 未収載 | ─ | 51.38 | 137 |
モバイルはASEANで7位(世界78位)と明確に劣後。ベトナムは世界6位で、フィリピンの3.3倍の速度。一方、固定回線187.77 MbpsはASEAN5位で、カンボジア・インドネシア・ラオスより速い。「フィリピンのネットは遅い」は固定回線については既に古い認識だが、モバイルについては依然として当てはまる。
注 DataReportal『Digital 2026 Philippines』が引用するOoklaデータ(2025年10月時点)はモバイル59.64 Mbps/固定105.17 Mbpsであり、上表(2026年7月)と大きく違う。時点を必ず添えること。
普及率
| 国 | インターネット利用者比率 2024年(%) | 2023年(%) |
|---|---|---|
| マレーシア | 98.02 | 97.69 |
| ブルネイ | 96.30 | 98.97 |
| シンガポール | 94.38 | 94.29 |
| タイ | 90.87 | 89.54 |
| ベトナム | 84.15 | 78.08 |
| インドネシア | 72.78 | 69.21 |
| カンボジア | 68.48 | 68.93 |
| フィリピン | 67.26 | 77.87 |
| ラオス | 65.59 | 64.40 |
| ミャンマー | データなし | データなし |
出典:World Bank WDI(IT.NET.USER.ZS、ITU系)
注 フィリピンの普及率は出典によって20ポイント近く違う。 - World Bank / ITU:67.26%(2024年)。なお2023年77.87%からの「下落」は実態の悪化ではなく系列・調査法の変更による断絶と考えられる。 - DataReportal『Digital 2026 Philippines』(Kepios推計、ITU・GSMA・各国当局・大手テック企業のプランニングツールを合成):9,800万人・83.8%(2026年初頭時点)。 - 同レポートの他の数字:携帯接続数1億3,700万(人口比117%)、SNS利用者9,580万人(人口比81.9%)。
どちらを使ってもよいが、同じ表の中で出典を混ぜてはいけない。
5-7. 汚職認識指数(CPI)
| 世界順位(/182) | 国 | CPI 2025スコア | CPI 2024スコア | 2024年順位 |
|---|---|---|---|---|
| 3 | シンガポール | 84 | 84 | 3 |
| 31 | ブルネイ | 63 | ─(新規) | ─ |
| 54 | マレーシア | 52 | 50 | 57 |
| 81 | ベトナム | 41 | 40 | 88 |
| 109 | インドネシア | 34 | 37 | 99 |
| 109 | ラオス | 34 | 33 | 114 |
| 116 | タイ | 33 | 34 | 107 |
| 120 | フィリピン | 32 | 33 | 114 |
| 163 | カンボジア | 20 | 21 | 158 |
| 169 | ミャンマー | 16 | 16 | 168 |
出典:Transparency International『Corruption Perceptions Index 2025』(2026-02-10公表、182か国・地域)
フィリピンはASEAN8位、スコア32点で世界120位。2024年の33点・114位からスコア・順位ともに悪化。ベトナム(41点)に9点差をつけられ、インドネシア・ラオス・タイのいずれよりも低い。ASEANでフィリピンより下はカンボジアとミャンマーだけ。
注 CPIは「実際の汚職量」ではなく専門家・ビジネス関係者の認識の合成指標。フィリピンは9つのソースを合成しており、95%信頼区間は28.5〜35.5。1〜2点の変動を過大に読まないこと。
ADBは2026年7月、フィリピンの成長見通しにとって汚職リスクが「高まったリスク」であると指摘している(ADO、2026年7月)。
6. 事業環境:統一指標が存在しないことに注意
注 「ASEAN各国のビジネス環境ランキング」を一枚で示す公式指標は、2026年時点で存在しない。
| 指標 | 状況(2026-08-26時点) | フィリピンの扱い |
|---|---|---|
| World Bank『Doing Business』 | 2021年9月に廃止。以後更新なし | 旧版の順位が今も流通している 注 引用不可 |
| World Bank『B-READY(Business Ready)』 | 2024年版(初版・50経済)、2025年版(+52経済)。3版で約170経済をカバー予定 | 2024年版に収録。マレーシア・ラオスは2025年版、ブルネイは2026年版予定。タイ・ミャンマーは未収録 |
| IMD『World Competitiveness Ranking』 | 2026年版を2026年6月公表(70経済)。2026年からベトナムを新規収録 | 下表参照 |
注 B-READYは総合順位を公表しない(3つの柱=規制枠組み/公共サービス/業務効率、10トピックのスコアのみ)。「B-READYで◯位」という表現は原理的に誤り。
IMD World Competitiveness Ranking 2026(70経済、2026年6月公表)
| 国 | 2026年順位 | 備考 |
|---|---|---|
| シンガポール | 1 | 首位 |
| マレーシア | 15 | 8ランク上昇 |
| タイ | 26 | 上昇 |
| インドネシア | 48 | 21ランク下落 |
| フィリピン | 2025年51位から4ランク上昇と報道 | 注 具体的順位はIMD原典で未確認 |
| ベトナム | 2026年から新規収録 | 順位未取得 |
出典:IMD World Competitiveness Center(総経済数70・2026年6月公表は原典で確認)。各国順位は BusinessWorld(2026-06-19)、Manila Bulletin(2026-06-18)、Philstar(2026-06-20)、Free Malaysia Today(2026-06-18)、Nation Thailand(2026-06-18)、Jakarta Globe(2026-06-24)の報道による。フィリピンの2025年順位51位はBusinessWorld(2025-06-17)。
注 フィリピンの2026年順位について、複数の二次情報の間で数値が食い違ったため、本資料では確定値として記載しない。「2025年51位から4つ上昇」という報道内容のみを事実として扱う。IMD原典で確認してから使うこと。
7. 観光:フィリピンの明確な弱点
| 国 | 2025年 外国人訪問者数 | 出典・公表日 |
|---|---|---|
| マレーシア | 4,220万人(過去最高) | VnExpress International、2026-01-28 |
| タイ | 3,290万人(前年比 −7.23%) | Nation Thailand、2026-01-06 |
| ベトナム | 2,120万人(過去最高) | VnExpress International、2026-01-05 |
| フィリピン | 6,484,060人(前年比 +0.76%) | 観光省(DOT)/IAG 2026-01-25、ABS-CBN 2026-01-21 |
| インドネシア/シンガポール/カンボジア等 | 本調査では未取得 | ─ |
マレーシアの約6.5分の1、ベトナムの約3.3分の1(2026-08-26 検証で修正。旧記載「マレーシアの15分の1」は計算誤り。42,200,000 ÷ 6,484,060 = 6.51。ベトナムは 21,200,000 ÷ 6,484,060 = 3.27 で旧記載「3分の1」はおおむね正しい)。7,641島を持ち、英語が通じ、人件費も安い国の数字としては際立って低い。フィリピンの観光収入は2025年に6,940億ペソ(PNA、2026-01-20)。
2026年は1〜7月累計370万人(DOT/BusinessWorld、2026-08-10)で、通年600万人台の水準が続く見込み。
注 訪問者数の定義は国により異なる(フィリピンの数字は「バリクバヤン(帰国フィリピン系)」を含む)。単純比較には注意。
8. 「強み」と「弱み」の数字ダイジェスト(1枚まとめ)
フィリピンの強み(数字で言えること)
| 論点 | 数字 | 年・出典 |
|---|---|---|
| 若さ | 年齢中央値26.14歳(ASEANで下から2番目)。ベトナムと7.3歳差 | 2025・UN WPP 2024改訂 |
| 若さ | 65歳以上比率5.49%(ASEANで下から2番目)/0–14歳比率27.87%(上から3番目) | 2024・World Bank |
| 人口規模 | 1億1,679万人(ASEAN2位) | 2025・World Bank |
| 英語 | EF EPI 569点・世界28位。ASEANでHigh判定はマレーシアと2か国のみ | 2025・EF EPI |
| 送金 | 個人送金402.8億USD・対GDP比8.72%(データのある6か国中で最大。ベトナム等は欠落=2026-08-26 検証で母集団を明記) | 2024・World Bank |
| 送金 | 現金送金356.3億USD(過去最高) | 2025・BSP(2026-02-16) |
| IT-BPM | 売上400億USD超・従業員200万人近く(財輸出額の63%相当) | 2025・IBPAP |
| 固定回線 | 中央値187.77 Mbps(ASEAN5位、インドネシア・カンボジアより速い) | 2026年7月・Ookla |
| 報道自由 | 世界114位・ASEAN4位(シンガポール・インドネシア・ベトナムより上) | 2026・RSF |
| 内需耐性 | 輸出の対GDP比25.74%=関税ショックの直撃を受けにくい | 2024・World Bank |
フィリピンの弱み(数字で言えること)
| 論点 | 数字 | 年・出典 |
|---|---|---|
| 所得水準 | 一人当たりGDP 4,171USD(ASEAN7位)。ベトナムに895USDの差をつけられた | 2025・World Bank(筆者算出) |
| 製造業 | 製造業付加価値 対GDP比15.67%(ASEAN8位)。カンボジアより12ポイント低い | 2024・World Bank |
| 輸出 | 財輸出551億USD=ベトナム4,065億USDの約7.4分の1(人口はほぼ同規模) | 2024・World Bank |
| FDI | 2025年77.9億USD=5年ぶり低水準。2026年5月は11年ぶり低水準 | 2025–26・World Bank/BSP報道 |
| 電力 | 家庭用0.209 USD/kWh=ベトナムの2.7倍、マレーシアの4.2倍。2026年6月はASEAN最高 | 2023–26平均・GlobalPetrolPrices/DOE報道 |
| 汚職 | CPI 32点・世界120位・ASEAN8位。2024年から悪化 | 2025・Transparency International |
| 健康 | 平均寿命69.8年(ASEANで下から3番目) | 2023・UNDP HDR 2025 |
| 学力 | PISA数学352.6点=参加ASEAN国中最下位 | 2018・World Bank/OECD |
| 観光 | 6,484,060人=マレーシア(4,220万人)の約6.5分の1、ベトナム(2,120万人)の約3.3分の1(2026-08-26 検証で「15分の1」を修正) | 2025・DOT |
| モバイル | 中央値99.97 Mbps・世界78位(ASEAN7位)。ベトナムの3.3分の1 | 2026年7月・Ookla |
| 足元の景気 | 2026年Q2成長率2.3%(コロナ後最低)、7月インフレ6.2% | 2026・PSA |
9. 注 知らないと間違えるポイント(総まとめ)
| # | 誤りやすい点 | 正しい理解 |
|---|---|---|
| 1 | 「フィリピンはASEANで最も成長が速い」 | 2024年は3位、2025年は7位(4.4%)。2026年Q2は2.3%でコロナ後最低。ベトナム(2025年8.02%)とは倍近い差 |
| 2 | 「フィリピンはベトナムより豊か」 | 一人当たりGDPで2024年時点でベトナムに逆転済み(4,717 vs 3,985USD) |
| 3 | 「フィリピンの失業率は2%台」 | ILOモデル推計とPSA公式統計(2026年6月4.9%)は別物。混ぜない |
| 4 | 「フィリピンのインフレは低い」 | 2025年平均1.66%は過去。2026年7月は6.2%、上期平均4.8% |
| 5 | 「フィリピンはASEANで英語1位」 | EF EPI 2025ではマレーシアが上(581 vs 569)。シンガポール・ブルネイは未収載。EF EPIは自己選択標本 |
| 6 | 「Doing Businessで◯位」 | 2021年9月に廃止。後継のB-READYは総合順位を公表しない |
| 7 | 「B-READYでフィリピンは◯位」 | 原理的に存在しない表現。タイ・ミャンマーは未収録でもある |
| 8 | インターネット普及率 | ITU/世銀系67.26%(2024年)とKepios系83.8%(2026年初頭)で20ポイント近く違う |
| 9 | インターネット速度 | Ookla 2026年7月(モバイル99.97)とDataReportal引用の2025年10月値(59.64)で倍近く違う。時点必須 |
| 10 | 送金額 | 現金送金(BSP、2025年356.3億USD) と 個人送金(World Bank、2024年402.8億USD) は別概念 |
| 11 | 貧困率 | PSAの2025年9.7%は2023年15.5%からの急落。指標レビューが進行中(BusinessMirror 2026-08-25)。各国の国内貧困線どうしは比較不可 |
| 12 | 国際貧困線 | 2025年に2021年PPPベース(3.00/4.20/8.30ドル)へ改定。その直前は2017年PPPの2.15/3.65/6.85ドル、さらに前が2011年PPPの1.90/3.20/5.50ドル(2026-08-26 検証で修正。旧記載は2011年PPP線を「2017年PPP」と誤記していた)。3世代を混在させない |
| 13 | 電気料金 | 「ASEAN最高」か「シンガポールに次ぐ2位」かは時点と指標で変わる。複数年平均ではシンガポールが上、2026年6月の月次ではフィリピンが上 |
| 14 | 人口 | World Bank/国連推計(1億1,679万人)とPSAセンサス値は一致しない。基準日と出典を必ず添える |
| 15 | LPI | 2023年版が最新(2026-08-26時点で新版未確認)。3年前のデータ |
| 16 | HDI | HDR 2025が最新でデータ参照年は2023年。2026年版は未刊行 |
| 17 | CPI | 「実際の汚職量」ではなく認識の合成指標。フィリピンの95%信頼区間は28.5〜35.5 |
| 18 | 観光客数 | フィリピンの数字にはバリクバヤン(帰国フィリピン系)を含む。定義が国により異なる |
| 19 | 「BPOは安泰」 | 2026年7月、業界がAIと国際競争を理由に目標を下方修正(BusinessWorld 2026-07-15) |
| 20 | 「英語ができる=人材の質が高い」 | PISA数学352.6点は参加ASEAN国中最下位。英語力と基礎学力は別 |
10. 主要出典一覧
| 出典 | 版・時点 | 使用箇所 |
|---|---|---|
| World Bank World Development Indicators(API) | 2026年7月13日更新 | 人口・GDP・成長率・インフレ・失業・貧困・製造業比率・輸出・FDI・送金・ネット普及率・LPIスコア・PISA |
| UNDP『Human Development Report 2025』統計付属表1 | データ年2023 | HDI・平均寿命・就学年数 |
| UN World Population Prospects 2024年改訂(Our World in Data経由) | 中位推計・2025年 | 年齢中央値 |
| EF『English Proficiency Index 2025』 | 2025年11月、123か国 | 英語能力 |
| Transparency International『CPI 2025』 | 2026年2月10日公表、182か国 | 汚職認識指数 |
| RSF『World Press Freedom Index 2026』 | 180か国 | 報道自由度 |
| World Bank『Logistics Performance Index 2023』 | 2023年 | 物流 |
| World Bank『B-READY』 | 2024年版・2025年版 | 事業環境(カバレッジ) |
| IMD World Competitiveness Center | 2026年6月公表、70経済 | 競争力(順位は報道ベース) |
| Ookla Speedtest Global Index | 2026年7月 | 通信速度 |
| DataReportal『Digital 2026 Philippines』(Kepios) | 2026年初頭 | ネット利用者・SNS・携帯接続 |
| GlobalPetrolPrices.com | 2026年Q2掲載(2023–26平均) | 電気料金 |
| PSA(フィリピン統計庁) | 2026年各月 | GDP四半期・労働力調査・貧困統計・CPI |
| BSP(フィリピン中央銀行) | 2026年2月・8月 | 送金・FDI |
| ADB『Asian Development Outlook』 | 2026年7月 | 2026年成長見通し |
| UNCTAD『World Investment Report 2026』 | 2026年7月7日 | 東南アジアFDI動向 |
| フィリピン観光省(DOT)/各国観光当局 | 2025年通年・2026年途中 | 訪問者数 |
| IBPAP | 2025年実績・2026年見通し | IT-BPM |
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