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ASEAN内でのフィリピンの位置(指標別・実数併記)

情報基準日:2026-08-26 / 分野:外交・安全保障・南シナ海

ASEAN10か国(ブルネイ Brunei / カンボジア Cambodia / インドネシア Indonesia / ラオス Lao PDR / マレーシア Malaysia / ミャンマー Myanmar / フィリピン Philippines / シンガポール Singapore / タイ Thailand / ベトナム Viet Nam)の中で、フィリピンが各指標のどこに位置するかを一覧化した「引くための資料」。

順位だけを見ると誤解する。実数を必ずセットで見ること。「ASEAN第5位の経済規模」と「一人当たりGDPで下から4番目」は同時に成立する。


0. 全体サマリー(フィリピンのASEAN内順位・早見表)

指標 フィリピンの実数 ASEAN内順位 出典
人口 1億1,679万人(世銀推計)PSA 2024年センサス実測は 112,729,484人、IMF WEO系列は1億1,409万人 2位/10 2025 World Bank WDI/PSA POPCEN 2024
名目GDP(総額) 4,871億USD 5位/10(IMF WEO では4位。1-2節参照) 2025 World Bank WDI/IMF WEO
一人当たり名目GDP 約4,171USD(IMF系では約4,270、センサス人口では約4,321) 7位/10 2025 WB GDP÷WB人口(筆者算出)
実質GDP成長率 4.40% 7位/10 2025 World Bank WDI
インフレ率(CPI) 1.66% 低い方から4番目 2025 World Bank WDI
失業率(ILOモデル推計) 2.20% 低い方から5番目 2024 World Bank / ILO
貧困率(国内貧困線) 9.7%(速報値・確定値ではない ─(国際比較不可 2025 PSA(2026-08-21公表。OpenSTAT未収録)
人間開発指数 HDI 0.720(世界117位) 7位/10 2023 UNDP HDR 2025
英語能力 EF EPI 569点(世界28位) 2位(収載8か国中) 2025 EF EPI 2025
汚職認識指数 CPI 32点(世界120位/182) 8位/10 2025 Transparency International(2026-02-10公表)
報道自由度 46.79点(世界114位/180) 4位/10 2026 RSF World Press Freedom Index 2026
物流 LPI 3.3(世界43位) 4位(収載8か国中) 2023 World Bank LPI 2023
事業環境 下記6節参照(統一指標が消滅)
FDI純流入 77.9億USD 4位(データのある6か国中) 2025 World Bank WDI(BoPベース)
財輸出額 634億USD(BoPベース BX.GSR.MRCH.CDWTO系列837.2億/PSA公表844.1億と別物) 4位(データのある6か国中) 2025 World Bank WDI
外国人訪問者数 6,484,060人 主要国中最下位級(マレーシアの約6.5分の1) 2025 観光省(DOT)/報道
家庭用電気料金 0.209 USD/kWh 高い方から2位 2023–26平均 GlobalPetrolPrices(2026年Q2掲載)
インターネット普及率 67.26%(ITU系)/83.8%(Kepios系) 8位/9位(ITU系) 2024/2026 World Bank・DataReportal
固定回線速度(中央値) 187.77 Mbps(世界73位) 5位/10 2026年7月 Ookla Speedtest Global Index
モバイル速度(中央値) 99.97 Mbps(世界78位) 7位/9 2026年7月 Ookla Speedtest Global Index
年齢中央値 26.14歳 9位(=2番目に若い) 2025 UN WPP 2024改訂・中位推計

2026年の急変:フィリピンは「ASEANの高成長国」という2010年代の位置づけを2025–26年に失いつつある。2026年Q2の実質成長率は2.3%(コロナ後最低)、2026年7月のインフレ率は6.2%、FDIは5年ぶり低水準。詳細は7節。


1. 規模:人口・GDP

1-1. 人口(2025年、World Bank WDI)

順位 人口(2025年)
1 インドネシア 285,721,236
2 フィリピン 116,786,962
3 ベトナム 101,598,527
4 タイ 71,619,863
5 ミャンマー 54,850,648
6 マレーシア 35,977,838
7 カンボジア 17,847,982
8 ラオス 7,873,046
9 シンガポール 6,111,175
10 ブルネイ 466,330

フィリピン統計庁(PSA)の国勢調査(POPCEN)ベースの人口は、World Bank / 国連推計より小さく出る。「1億1,700万人」と「1億1,200万人台」が同時に流通しているのは、推計と実査(センサス)の違いであって、どちらかが間違いというわけではない。資料に書くときは必ず出典と基準日を添えること。

1-2. 名目GDP総額(current US$)

順位 2025年(億USD) 2024年(億USD)
1 インドネシア 14,456 13,963
2 シンガポール 6,039 5,729
3 タイ 5,770 5,294
4 ベトナム 5,147 4,763
5 フィリピン 4,871 4,617
6 マレーシア 4,722 4,222
7 ミャンマー 817 741
8 カンボジア 513 464
9 ラオス 183 165
10 ブルネイ 150 153

出典:World Bank WDI(NY.GDP.MKTP.CD、2026年7月更新版。2026-08-26 にAPI実測で全件再確認)

フィリピンはASEAN第5位。ただしマレーシア(人口3,598万人)とほぼ同じ総額を、3.2倍の人口で稼いでいる

(2026-08-26 検証で追記)「ASEAN第5位」は出典依存である。IMF WEO では第4位になる。IMF DataMapper API(NGDPD)を2026-08-26に実測したところ、2025年の名目GDP(十億USD)は次のとおりで、ベトナムがフィリピンの下に来る

【WDI】2025(十億USD) 【IMF WEO】2025(十億USD)
インドネシア 1,445.6 1,445.6 一致
シンガポール 603.9 (本環境の取得は不安定・要再確認)
タイ 577.0 (同上)
ベトナム 514.7 465.8 ▲48.9(約9.5%)
フィリピン 487.1 487.2 ほぼ一致
マレーシア 472.2 472.2 一致

つまり WDIでは「インドネシア→シンガポール→タイ→ベトナム→フィリピン(5位)」、IMF WEOでは「…→フィリピン(4位)→マレーシア→ベトナム」 となる。乖離はほぼベトナム1国に起因する(ベトナムのGDP系列改定の反映時期の差とみられるが、原因は未確認)。 どちらも消していない。「ASEAN第◯位」と書くときは必ず出典(World Bank WDI か IMF WEO か)と年を添えること。

1-3. 一人当たり名目GDP

順位 2025年(USD、筆者算出) 2024年(USD、WB公表値)
1 シンガポール 98,814 94,896.6
2 ブルネイ 32,235 33,153.5
3 マレーシア 13,125 11,874.4
4 タイ 8,057 7,386.6
5 ベトナム 5,066 4,716.7
6 インドネシア 5,060 4,925.4
7 フィリピン 4,171 3,985.3
8 カンボジア 2,872 2,627.9
9 ラオス 2,325 2,124.0
10 ミャンマー 1,489 1,359.1

出典:2024年はWorld Bank WDI(NY.GDP.PCAP.CD)。2025年は World Bank の2025年GDPを同2025年人口で除した筆者算出値。

ベトナムが一人当たりGDPでフィリピンを明確に追い抜いた(2024年:ベトナム4,717 vs フィリピン3,985、差732USD)。2025年は差が約895USDに拡大。1990年代には逆だった。この逆転を認識していないと、フィリピンの立ち位置を大きく読み違える。

(2026-08-26 検証で追記)「差895USD」はWDI系列に固有の数字である。IMF WEO(NGDPDPC、2026-08-26 実測)では 2025年がベトナム 4,281/フィリピン 3,945差は約336USDにとどまる。逆転が起きている点は両系列で一致するが、差の大きさは約2.7倍違う。「ベトナムに◯◯USDの差をつけられた」と書くときは系列名を必ず添えること。 どちらも消していない。 さらに、フィリピンの一人当たりGDP自体が 4,171(WDI人口で除算)/約4,270(IMFのGDP÷IMFの人口114.086百万人)/約4,321(2024年センサス人口112,729,484人で除算) の3通りある(分野「統計時系列」§4-3 参照)。

フィリピンの下はカンボジア・ラオス・ミャンマーのみ。ASEANの下から4番目


2. 景気:成長率・インフレ・雇用

2-1. 実質GDP成長率(%)

順位(2025年) 2025年 2024年
1 ベトナム 8.02 7.04
2 カンボジア 5.35 6.02
3 マレーシア 5.17 5.11
4 インドネシア 5.11 5.03
5 シンガポール 5.03 5.34
6 ラオス 4.54 4.13
7 フィリピン 4.40 5.71
8 タイ 2.44 2.95
9 ブルネイ 0.67 4.05
10 ミャンマー −2.01 −0.97

出典:World Bank WDI(NY.GDP.MKTP.KD.ZG)

2024年3位 → 2025年7位への転落。2025年通年4.4%は「5年ぶりの低水準」で、政府目標5.5〜6.5%を大きく下回った(PSA、2026-01-29公表/BusinessWorld 2026-01-30ほか)。

2026年はさらに悪化:Q1 2.8%(PSA、2026-05-07報道)、Q2 2.3%=コロナ後最低(PSA、報道日は本資料「2026-08-09」/分野「統計時系列」§2-2「2026-08-07」で食い違う=2026-08-26 検証で併記。数値2.3%自体は両資料で一致)。ADBは2026年7月にフィリピンの2026年成長率見通しを4.4%へ下方修正(世界的エネルギー危機と中東情勢を理由)。同時期にADBはアジア開発途上国全体を4.9%へ上方修正しており、フィリピンは域内で相対的に取り残された形。

(2026-08-26 検証で追記)ADBの「4.4%への引き下げ」の改定前の値について、分野間で記述が割れている。分野「統計時系列」§2-3 は「ADBが従来5.3%から4.4%へ」とし、分野「ASEAN各国との関係」§2-3 は「5.3%→4.4%→3.7% は世界銀行の2段階引き下げ」とする。一次資料(ADB Asian Development Outlook 2026年7月版/世界銀行 Philippines Economic Update)は本検証でも未照合=未確認。どちらも消さず、断定して引用しないこと。

2-2. インフレ率(CPI、年平均、%)

2025年 2024年
ラオス 7.74 23.13
ベトナム 3.31 3.62
カンボジア 2.35 0.81
インドネシア 1.91 2.18
フィリピン 1.66 3.21
マレーシア 1.38 1.83
シンガポール 0.90 2.39
タイ −0.13 0.40
ブルネイ −0.30 −0.39
ミャンマー データなし データなし

出典:World Bank WDI(FP.CPI.TOTL.ZG)

2025年の1.66%はもはや現状ではない。2026年7月のフィリピンのインフレ率は6.2%(6月6.4%)、2026年上半期平均4.8%(PSA、2026-08-05報道)。エネルギー価格高騰が主因。「フィリピンのインフレは落ち着いている」という2025年の記述をそのまま使うと誤りになる。

2-3. 失業率

ILOモデル推計 2024年(%)
カンボジア 0.25
タイ 0.78
ラオス 1.17
ベトナム 1.60
フィリピン 2.20
シンガポール 2.74
ミャンマー 2.89
インドネシア 3.30
マレーシア 3.85
ブルネイ 5.18

出典:World Bank WDI(SL.UEM.TOTL.ZS、ILOモデル推計)

この表を「フィリピンの失業率は2.2%」と読んではいけない。ILOモデル推計と各国公式統計は定義・調査方法が異なる。PSA(フィリピン統計庁)の労働力調査(LFS)による公式失業率は以下のとおりで、ILO推計の倍以上:

公式失業率(PSA) 失業者数
2026年1月 5.8%(3年超ぶりの高水準)
2026年2月 5.1% 266万人
2026年3月 5.0% 258万人
2026年4月 4.8% 250万人
2026年5月 4.8% 約250万人
2026年6月 4.9% 259万人

出典:PSA労働力調査(各月)、GMA / Philstar / BusinessWorld / SunStar 報道(2026年3〜8月)

国際比較の際は「ILOモデル推計どうし」か「各国公式統計どうし」で揃えること。混ぜると意味のない比較になる。


3. 貧困と生活水準

3-1. 国内貧困線ベースの貧困率(国際比較不可

貧困率(%)
フィリピン 9.7 2025
インドネシア 9.0 2024
ラオス 15.0 2024
タイ 5.4 2022
マレーシア 5.1 2023
ベトナム 4.2 2022
カンボジア/ミャンマー/シンガポール/ブルネイ データなし

出典:World Bank WDI(SI.POV.NAHC)。フィリピンの2025年値はPSA(2026-08-21公表)。

フィリピンの貧困率(人口ベース)は 2018年16.7% → 2021年18.1% → 2023年15.5% → 2025年9.7%。家族ベースは6.4%。貧困線は1日約96ペソ(PSA、2026-08-21。5人世帯月額14,634ペソからの換算値)。「約650万人が貧困から脱した」と発表された。

(2026-08-26 検証で追記)「650万人が脱貧困」「残る貧困者880万人」という報道値は、貧困率9.7%と整合しない。9.7% × 2024年センサス人口112,729,484人 = 約1,093万人 となり、報道の「880万人」と約200万人合わない。分野「統計時系列」§6-1 も同じ不整合を指摘している。貧困者の実数(人数)は【未確認】として扱い、率だけを引用するのが安全。 また 2025年の9.7%/6.4%はPSAの2026-08-21発表の速報値であり、OpenSTAT には未収録=確定値ではない(分野「統計時系列」§6-1)。「9.7%」を確定値として書かないこと。

この2年間で15.5%→9.7%という急落は極めて大きい。DepDev(経済開発省)が貧困指標のレビューを進めていると報じられており(BusinessMirror、2026-08-25)、数字の扱いには注意が要る。また各国の貧困線は水準も改定タイミングも異なるため、上表の国際比較はできない

3-2. 国際比較可能な貧困率:1日4.20ドル(2021年PPP)

貧困率(%)
ラオス 22.5 2024
インドネシア 19.8 2024
フィリピン 16.9 2023
ベトナム 4.2 2022
タイ 0.2 2024
マレーシア 0.1 2021
その他4か国 データなし

出典:World Bank WDI(SI.POV.LMIC、2021年PPPベースの下位中所得国ライン)

(2026-08-26 検証で修正)旧記載「2017年PPPベース(1.90/3.20/5.50ドル)」は誤り。1.90/3.20/5.50ドルは2011年PPPの3線であり、2017年PPPの3線は 2.15/3.65/6.85ドルである。正しい系譜は下表。

PPP基準年 極度の貧困 下位中所得国ライン 上位中所得国ライン
2011年PPP 1.90ドル/日 3.20ドル/日 5.50ドル/日
2017年PPP 2.15ドル/日 3.65ドル/日 6.85ドル/日
2021年PPP(現行) 3.00ドル/日 4.20ドル/日 8.30ドル/日

(出典:World Bank WDI API の指標メタデータ SI.POV.DDAYSI.POV.LMICSI.POV.UMIC を2026-08-26に実測取得し現行3線を確認。旧2基準は Our World in Data "From $1.90 to $2.15 a day: the updated international poverty line") 上表の16.9%(フィリピン2023年)は現行の4.20ドル線の値であり、旧「1日3.20ドル」「3.65ドル」の数字と混在させないこと。

3-3. 人間開発指数(HDI)と平均寿命

HDI順位(世界) HDI値 平均寿命(年) 平均就学年数(年)
13 シンガポール 0.946 83.7 11.99
60 ブルネイ 0.837 75.3 9.28
67 マレーシア 0.819 76.7 11.09
76 タイ 0.798 76.4 9.04
93 ベトナム 0.766 74.6 8.98
113 インドネシア 0.728 71.1 8.70
117 フィリピン 0.720 69.8 9.98
147 ラオス 0.617 69.0 6.06
150 ミャンマー 0.609 66.9 6.38
151 カンボジア 0.606 70.7 5.20

出典:UNDP『Human Development Report 2025』統計付属表1(データ参照年は2023年)。2026年版HDRは2026-08-26時点で未刊行。

(2026-08-26 検証)シンガポール13位0.946/ブルネイ60位0.837/マレーシア67位0.819 は英語版Wikipedia「List of countries by Human Development Index」(HDR 2025)と一致した。ただしタイは同記事で77位(本表76位)、ベトナムは同記事で94位・HDI 0.761〜0.765(本表93位・0.766)と食い違う。どちらも消していない。フィリピンのASEAN内7位という位置は、どちらの表記でも変わらない。UNDP原典(hdr.undp.org の統計付属表PDF)での再照合を推奨。

平均寿命69.8年はASEANで下から3番目(ミャンマー66.9、ラオス69.0に次ぐ)。フィリピンは平均就学年数9.98年でASEAN第4位と教育年数は比較的長いのに、HDIが7位に留まるのは平均寿命と所得の低さによる。

「教育年数が長い=学力が高い」ではない。OECD PISAの数学平均点(2018年)は下表のとおりで、フィリピンは参加ASEAN国中で最下位:

PISA数学平均点(2018年)
シンガポール 569.0
ベトナム 495.7
マレーシア 440.2
ブルネイ 430.1
タイ 418.6
インドネシア 378.7
フィリピン 352.6

出典:World Bank WDI(LO.PISA.MAT)。※2022年調査の値は同データベースに未収載。

これが「英語は話せるが基礎学力は低い」というフィリピンの構造的パラドックスの数値的裏づけ。英語力(次節)だけで人材の質を語るのは危険。


4. フィリピンの相対的な強み

4-1. 英語能力:EF EPI 2025

世界順位 スコア 判定
24 マレーシア 581 High
28 フィリピン(英語版Wikipediaはナイジェリアと同点28位タイと記載) 569 High
64 ベトナム 500 Moderate
80 インドネシア 471 Low
88 ラオス 461 Low
99 ミャンマー 444 Very Low
116 タイ 402 Very Low
123 カンボジア 390 Very Low
シンガポール/ブルネイ 未収載

出典:EF English Proficiency Index 2025(123か国・地域、成人220万人の受験結果、2025年11月公表)。世界平均488。(2026-08-26 検証)収載数123・フィリピン569点・マレーシア581点は英語版Wikipedia「EF English Proficiency Index」で一致を確認 ただしマレーシアの世界順位は本表「24位」に対し同記事は「23位」と表記しており、1つ食い違う。どちらも消していない(フィリピンがマレーシアの下=ASEAN2位という結論は両方で同じ)。EF原典(ef.com)で再照合のこと。

フィリピンの技能別内訳:ライティング603、リーディング(未取得)、スピーキング539。最も弱いのがスピーキングという点は「フィリピン人は英語が話せる」という一般イメージと逆で、覚えておくと役に立つ。国内首位はコルディリェラ行政地域(CAR)606、都市首位はマニラ603。

EF EPIは国民代表標本ではない。EFの無料オンラインテストを自発的に受けた人のスコア集計であり、受験者層は各国で偏る。シンガポールとブルネイは2025年版に収載されていない(=「ASEAN1位」とは言えない)。「フィリピンはASEANで英語1位」という表現は指標を明記しない限り不正確

とはいえ、EF EPI 2025で High 判定を得たASEAN国はマレーシアとフィリピンの2か国のみで、タイ・カンボジアとは160〜180点差がある。この差は本物。

4-2. 若さ:年齢中央値と人口構成

年齢中央値順位(高い順) 年齢中央値(2025年) 65歳以上比率(2024年、%) 0–14歳比率(2024年、%)
1 タイ 40.55 15.36 14.75
2 シンガポール 36.21 13.66 11.69
3 ベトナム 33.42 9.05 23.22
4 ブルネイ 32.71 6.87 20.83
5 マレーシア 30.95 7.74 21.79
6 インドネシア 30.38 7.29 24.60
7 ミャンマー 30.11 7.30 24.30
8 カンボジア 26.21 6.16 29.79
9 フィリピン 26.14 5.49 27.87
10 ラオス 24.94 4.67 30.20

出典:年齢中央値はUN World Population Prospects 2024年改訂・中位推計(Our World in Data経由)。年齢構成はWorld Bank WDI(2024年)。

人口1億人超のASEAN3か国(インドネシア・フィリピン・ベトナム)のうち、フィリピンが圧倒的に若い。ベトナム33.42歳 vs フィリピン26.14歳=7.3歳差。タイとは14.4歳差。65歳以上比率もフィリピン5.49%はASEANで下から2番目。

これは「人口ボーナス期の残存年数」の差である。ベトナムとタイは高齢化が先行しており、2030年代の労働力供給という一点では、ASEANでフィリピンは最も余裕がある大国

4-3. 海外送金(Remittances)

順位 個人送金受取額 2024年(億USD) 対GDP比 2024年(%)
1 フィリピン 402.8 8.72
2 インドネシア 160.4 1.15
3 タイ 94.6 1.79
4 カンボジア 28.3 6.10
5 マレーシア 16.1 0.38
6 ラオス 2.5 1.49
ベトナム/シンガポール/ミャンマー/ブルネイ データなし

出典:World Bank WDI(BX.TRF.PWKR.CD.DT / BX.TRF.PWKR.DT.GD.ZS)

金額でも対GDP比でも、WDIにデータのある6か国の中では最大(2026-08-26 検証で母集団を明記。旧記載「ASEAN最大」はベトナム・シンガポール・ミャンマー・ブルネイのデータ欠落を踏まえていなかった。 とくにベトナムは世界有数の送金受取国であり、欠落の影響が大きい。ベトナムを含めた確定順位は未確認)。マクロ的にはこれが経常収支とペソ相場の底を支え、ミクロ的には家計消費(=GDPの約4分の3)を支える。

「現金送金(cash remittances)」と「個人送金(personal remittances)」を混同しないこと。BSP(中央銀行)が発表する現金送金(cash remittances)は2025年通年で356.3億USD($35.63 billion)=過去最高(BSP公表、BusinessWorld / Philstar / ABS-CBN 2026-02-16〜17報道)。一方、World Bankの個人送金(2024年 402.8億USD)は現物移転等を含む広い概念で、数字が5〜6%ほど大きく出る。並記するときは必ず概念名を書く。

4-4. IT-BPM(BPO産業)

項目 数値 出典
IT-BPM売上高 400億USD超 2025 IBPAP/Philstar 2026-01-29
従業員数 200万人に迫る水準 2025 IBPAP/Daily Tribune 2026-01-01
2026年目標 420億USD 2026 IBPAP/Inquirer 2025-09-24

IT-BPMの売上高400億USDは、フィリピンの財(モノ)の輸出額に匹敵する規模である。サービス輸出がモノの輸出に匹敵するという産業構造は、ASEANでフィリピン特有。

(2026-08-26 検証で修正)旧記載「財の輸出額634億USDの約63%」は、比率が採用系列に完全に依存するため断定を外した。「フィリピンの2025年財輸出額」は3系列あり、どれを使うかで比率が 47%〜63% まで動く。

系列 2025年 財輸出額 IT-BPM 400億USD との比率
世界銀行WDI BoPベースBX.GSR.MRCH.CD)=本資料5-2の表 634.1億USD 約63%
世界銀行WDI WTO原統計ベースTX.VAL.MRCH.CD.WT 837.2億USD 約48%
PSA公表値(2026-01-27報道、過去最高) 844.1億USD 約47%

3系列の存在と乖離は分野「統計時系列」§7-1・§7-2 に詳述。「財輸出額の◯%」と書くときは必ず指標コードまたは発表主体を明記すること。(出典:World Bank WDI API を2026-08-26に実測。BoP 63,411,405,144 USD/WTO 83,723,000,000 USD)

2026年7月、業界はAIの普及と国際競争激化を理由に目標を下方修正した(BusinessWorld、2026-07-15)。「BPOは安泰」という前提は2026年時点でもう使えない。

4-5. 報道の自由(相対的な強み)

順位(世界/180) スコア
92 タイ 53.97
95 マレーシア 52.73
96 ブルネイ 52.58
114 フィリピン 46.79
123 シンガポール 44.57
129 インドネシア 43.02
151 カンボジア 33.28
154 ラオス 32.54
166 ミャンマー 26.38
174 ベトナム 21.15

出典:Reporters Without Borders(RSF)World Press Freedom Index 2026

フィリピンは2025年の116位から114位へ2つ上昇。世界順位は低いが、ASEAN内では4位でシンガポール・インドネシア・ベトナムより上。指標別では社会指標57.05(世界96位)が最も高く、経済指標34.50(世界131位)が最も低い=メディアの経済的自立が最大の弱点

「フィリピンはジャーナリストにとって危険な国」という一般認識と、この域内4位という位置は矛盾しない。RSFは政治・経済・法・社会・安全の5指標の合成であり、安全指標だけを見れば54.03(世界117位)と低い。


5. フィリピンの相対的な弱み

5-1. 製造業の薄さ

順位 製造業付加価値 対GDP比 2024年(%)
1 カンボジア 27.81
2 ミャンマー 25.10
3 ベトナム 24.33
4 タイ 24.24
5 マレーシア 22.50
6 インドネシア 18.98
7 シンガポール 16.26
8 フィリピン 15.67
9 ブルネイ 10.66
10 ラオス 9.05

出典:World Bank WDI(NV.IND.MANF.ZS)

フィリピンの製造業比率15.67%は、カンボジア(27.81%)より12ポイント低い。シンガポール(16.26%)と同水準だが、シンガポールは半導体・医薬品の超高付加価値製造であり、内容がまったく違う。

5-2. 輸出の小ささ

順位 財輸出額 2025年(億USD) 財輸出額 2024年(億USD) 財・サービス輸出 対GDP比 2024年(%)
1 シンガポール 6,516 6,011 174.66
2 タイ 3,351 2,973 69.67
3 インドネシア 2,804 2,631 22.31
4 フィリピン 634 551 25.74
5 カンボジア 314 268 71.36
6 ブルネイ 103 111 74.27
ベトナム データなし 4,065 90.17
マレーシア データなし 2,484 71.34
ラオス データなし 94
ミャンマー データなし データなし

出典:World Bank WDI(BX.GSR.MRCH.CD =国際収支(BoP)ベースの財輸出/NE.EXP.GNFS.ZS)。2025年はマレーシア・ベトナム等が未更新のため順位は「データのある6か国中」。

(2026-08-26 検証で追記)この表の「財輸出額」はBoPベースであり、フィリピンの通関統計とは別物である。同じ2025年について、WTO原統計ベース(TX.VAL.MRCH.CD.WT)は 837.2億USD、PSA公表値は 844.1億USD(過去最高、2026-01-27報道)で、本表の 634億USD とは約200億USD(約3割)違う。他国の値も同じBoPベースで揃えてあるため表内の比較は成立するが、「フィリピンの輸出は◯◯億ドル」と単独で引用してはならない。3系列の詳細は分野「統計時系列」§7-1・§7-2 を参照。

2024年で比較すると、ベトナムの財輸出4,065億USDはフィリピンの551億USDの約7.4倍。両国の人口はほぼ同規模(ベトナム1.02億人、フィリピン1.17億人)。これがASEAN内でのフィリピンの立ち位置を最も雄弁に示す1組の数字。

輸出のGDP比25.74%は、データのある8か国中インドネシア(22.31%)に次いで2番目に低い(2026-08-26 検証で母集団を明記。ラオス・ミャンマーは当該年のデータなし=ASEAN10か国での順位は確定できない)。フィリピンは「内需型」であり、輸出主導のASEAN経済モデルの例外。関税ショックへの耐性が相対的に高い反面、外需による成長の押し上げが効かない。

5-3. 対内直接投資(FDI)

FDI純流入 2025年(億USD) FDI純流入 2024年(億USD)
シンガポール 1,590.9 1,350.8
インドネシア 222.8 242.8
タイ 188.4 143.0
フィリピン 77.9 94.0
カンボジア 51.0 43.9
ブルネイ 0.62 0.29
ベトナム データなし 201.7
マレーシア データなし 155.9
ミャンマー データなし 11.0
ラオス データなし 9.9

出典:World Bank WDI(BX.KLT.DINV.CD.WD、BoPベース)

2024年ベースの順位ではフィリピンは6位(シンガポール→インドネシア→ベトナム→マレーシア→タイ→フィリピン)。人口2位・GDP5位の国が、FDIでは6位。

2025年の77.9億USDは5年ぶりの低水準(BusinessWorld / Philstar / GMA、2026-03-11〜12)。さらに2026年5月の月次FDIは11年ぶりの低水準、1〜4月累計は前年比26.5%減の20億USD(Manila Bulletin 2026-08-10、SunStar 2026-07-12)。UNCTAD『World Investment Report 2026』(2026-07-07公表)は東南アジアが開発途上地域のFDIを牽引したとしており、域内でフィリピンだけが逆行している構図。

5-4. 電気料金

家庭用(USD/kWh) 産業用(USD/kWh)
シンガポール 0.233 0.262
フィリピン 0.209 0.156
カンボジア 0.150 データなし
タイ 0.127 0.128
インドネシア 0.090 0.070
ベトナム 0.078 0.078
マレーシア 0.050 0.129
ラオス 0.034 データなし
ミャンマー 0.025 0.109
ブルネイ データなし データなし

出典:GlobalPetrolPrices.com(2026年Q2掲載、2023–2026年の平均値)

家庭用でベトナムの2.7倍、マレーシアの4.2倍。産業用でもベトナムの2倍。製造業立地の意思決定で、これが最も重い不利要因になる。

「フィリピンがASEANで最も電気が高い」か「シンガポールに次いで2番目か」は、時点と指標で答えが変わる。上表の複数年平均ではシンガポールが上だが、2026年6月の月次ではフィリピンがシンガポールを上回りASEAN最高になったとエネルギー省(DOE)が公表し、複数媒体が報じている(GMA 2026-07-20、Asian Power 2026-07-09)。世界銀行も2026年8月にフィリピンの電気料金がASEAN最高である旨を指摘したと報じられた(GMA、2026-08-06)。ある研究機関は2026年5月時点で「フィリピンの家庭用電気料金は東南アジアで最も高い」と結論づけている(BusinessMirror、2026-05-28)。※各報道の具体的なkWh単価は本調査では原典未取得。

高電気料金は屋根置き太陽光への急速なシフトを生んでおり、2026年6月にはロイターが「フィリピンが太陽光導入で世界を先導している」と報じている(2026-06-28)。弱みが別の産業機会になりつつある点は押さえておきたい。

5-5. 物流(LPI)

LPI 2023 世界順位 総合スコア(1–5)
1 シンガポール 4.3
26 マレーシア 3.6
34 タイ 3.5
43 ベトナム 3.3
43 フィリピン 3.3
61 インドネシア 3.0
順位未確認 カンボジア 2.4
順位未確認 ラオス 2.4
ミャンマー/ブルネイ 2023年版未収載

出典:World Bank Logistics Performance Index 2023(スコアはWorld Bank WDI「LP.LPI.OVRL.XQ」、順位はPhilippine News Agency 2023-04-24、The Star 2023-04-26等の報道)

43位はフィリピン史上最高順位(2018年の60位から17ランク上昇、PNA 2023-04-24)。ベトナムと同点。

LPIは2023年版が最新で、2026-08-26時点で新版は確認できない。3年前のデータであることを明記して使うこと。

5-6. インターネット速度と普及率

速度(Ookla Speedtest Global Index、2026年7月)

モバイル中央値(Mbps) 世界順位 固定回線中央値(Mbps) 世界順位
ブルネイ 344.30 5 120.70 94
ベトナム 326.68 6 349.18 22
シンガポール 238.94 20 641.61 1
マレーシア 206.05 33 244.67 49
カンボジア 187.21 39 81.06 115
タイ 172.48 46 363.84 16
フィリピン 99.97 78 187.77 73
インドネシア 80.33 83 81.71 113
ラオス 73.84 85 90.25 107
ミャンマー 未収載 51.38 137

モバイルはASEANで7位(世界78位)と明確に劣後。ベトナムは世界6位で、フィリピンの3.3倍の速度。一方、固定回線187.77 MbpsはASEAN5位で、カンボジア・インドネシア・ラオスより速い。「フィリピンのネットは遅い」は固定回線については既に古い認識だが、モバイルについては依然として当てはまる。

DataReportal『Digital 2026 Philippines』が引用するOoklaデータ(2025年10月時点)はモバイル59.64 Mbps/固定105.17 Mbpsであり、上表(2026年7月)と大きく違う。時点を必ず添えること

普及率

インターネット利用者比率 2024年(%) 2023年(%)
マレーシア 98.02 97.69
ブルネイ 96.30 98.97
シンガポール 94.38 94.29
タイ 90.87 89.54
ベトナム 84.15 78.08
インドネシア 72.78 69.21
カンボジア 68.48 68.93
フィリピン 67.26 77.87
ラオス 65.59 64.40
ミャンマー データなし データなし

出典:World Bank WDI(IT.NET.USER.ZS、ITU系)

フィリピンの普及率は出典によって20ポイント近く違う。 - World Bank / ITU:67.26%(2024年)。なお2023年77.87%からの「下落」は実態の悪化ではなく系列・調査法の変更による断絶と考えられる。 - DataReportal『Digital 2026 Philippines』(Kepios推計、ITU・GSMA・各国当局・大手テック企業のプランニングツールを合成):9,800万人・83.8%(2026年初頭時点)。 - 同レポートの他の数字:携帯接続数1億3,700万(人口比117%)、SNS利用者9,580万人(人口比81.9%)。

どちらを使ってもよいが、同じ表の中で出典を混ぜてはいけない

5-7. 汚職認識指数(CPI)

世界順位(/182) CPI 2025スコア CPI 2024スコア 2024年順位
3 シンガポール 84 84 3
31 ブルネイ 63 ─(新規)
54 マレーシア 52 50 57
81 ベトナム 41 40 88
109 インドネシア 34 37 99
109 ラオス 34 33 114
116 タイ 33 34 107
120 フィリピン 32 33 114
163 カンボジア 20 21 158
169 ミャンマー 16 16 168

出典:Transparency International『Corruption Perceptions Index 2025』(2026-02-10公表、182か国・地域)

フィリピンはASEAN8位、スコア32点で世界120位。2024年の33点・114位からスコア・順位ともに悪化。ベトナム(41点)に9点差をつけられ、インドネシア・ラオス・タイのいずれよりも低い。ASEANでフィリピンより下はカンボジアとミャンマーだけ。

CPIは「実際の汚職量」ではなく専門家・ビジネス関係者の認識の合成指標。フィリピンは9つのソースを合成しており、95%信頼区間は28.5〜35.5。1〜2点の変動を過大に読まないこと。

ADBは2026年7月、フィリピンの成長見通しにとって汚職リスクが「高まったリスク」であると指摘している(ADO、2026年7月)。


6. 事業環境:統一指標が存在しないことに注意

「ASEAN各国のビジネス環境ランキング」を一枚で示す公式指標は、2026年時点で存在しない。

指標 状況(2026-08-26時点) フィリピンの扱い
World Bank『Doing Business』 2021年9月に廃止。以後更新なし 旧版の順位が今も流通している 引用不可
World Bank『B-READY(Business Ready)』 2024年版(初版・50経済)、2025年版(+52経済)。3版で約170経済をカバー予定 2024年版に収録。マレーシア・ラオスは2025年版、ブルネイは2026年版予定。タイ・ミャンマーは未収録
IMD『World Competitiveness Ranking』 2026年版を2026年6月公表(70経済)。2026年からベトナムを新規収録 下表参照

B-READYは総合順位を公表しない(3つの柱=規制枠組み/公共サービス/業務効率、10トピックのスコアのみ)。「B-READYで◯位」という表現は原理的に誤り。

IMD World Competitiveness Ranking 2026(70経済、2026年6月公表)

2026年順位 備考
シンガポール 1 首位
マレーシア 15 8ランク上昇
タイ 26 上昇
インドネシア 48 21ランク下落
フィリピン 2025年51位から4ランク上昇と報道 具体的順位はIMD原典で未確認
ベトナム 2026年から新規収録 順位未取得

出典:IMD World Competitiveness Center(総経済数70・2026年6月公表は原典で確認)。各国順位は BusinessWorld(2026-06-19)、Manila Bulletin(2026-06-18)、Philstar(2026-06-20)、Free Malaysia Today(2026-06-18)、Nation Thailand(2026-06-18)、Jakarta Globe(2026-06-24)の報道による。フィリピンの2025年順位51位はBusinessWorld(2025-06-17)。

フィリピンの2026年順位について、複数の二次情報の間で数値が食い違ったため、本資料では確定値として記載しない。「2025年51位から4つ上昇」という報道内容のみを事実として扱う。IMD原典で確認してから使うこと。


7. 観光:フィリピンの明確な弱点

2025年 外国人訪問者数 出典・公表日
マレーシア 4,220万人(過去最高) VnExpress International、2026-01-28
タイ 3,290万人(前年比 −7.23%) Nation Thailand、2026-01-06
ベトナム 2,120万人(過去最高) VnExpress International、2026-01-05
フィリピン 6,484,060人(前年比 +0.76%) 観光省(DOT)/IAG 2026-01-25、ABS-CBN 2026-01-21
インドネシア/シンガポール/カンボジア等 本調査では未取得

マレーシアの約6.5分の1、ベトナムの約3.3分の1(2026-08-26 検証で修正。旧記載「マレーシアの15分の1」は計算誤り。42,200,000 ÷ 6,484,060 = 6.51。ベトナムは 21,200,000 ÷ 6,484,060 = 3.27 で旧記載「3分の1」はおおむね正しい)。7,641島を持ち、英語が通じ、人件費も安い国の数字としては際立って低い。フィリピンの観光収入は2025年に6,940億ペソ(PNA、2026-01-20)。

2026年は1〜7月累計370万人(DOT/BusinessWorld、2026-08-10)で、通年600万人台の水準が続く見込み。

訪問者数の定義は国により異なる(フィリピンの数字は「バリクバヤン(帰国フィリピン系)」を含む)。単純比較には注意。


8. 「強み」と「弱み」の数字ダイジェスト(1枚まとめ)

フィリピンの強み(数字で言えること)

論点 数字 年・出典
若さ 年齢中央値26.14歳(ASEANで下から2番目)。ベトナムと7.3歳差 2025・UN WPP 2024改訂
若さ 65歳以上比率5.49%(ASEANで下から2番目)/0–14歳比率27.87%(上から3番目) 2024・World Bank
人口規模 1億1,679万人(ASEAN2位) 2025・World Bank
英語 EF EPI 569点・世界28位。ASEANでHigh判定はマレーシアと2か国のみ 2025・EF EPI
送金 個人送金402.8億USD・対GDP比8.72%(データのある6か国中で最大。ベトナム等は欠落=2026-08-26 検証で母集団を明記) 2024・World Bank
送金 現金送金356.3億USD(過去最高) 2025・BSP(2026-02-16)
IT-BPM 売上400億USD超・従業員200万人近く(財輸出額の63%相当) 2025・IBPAP
固定回線 中央値187.77 Mbps(ASEAN5位、インドネシア・カンボジアより速い) 2026年7月・Ookla
報道自由 世界114位・ASEAN4位(シンガポール・インドネシア・ベトナムより上) 2026・RSF
内需耐性 輸出の対GDP比25.74%=関税ショックの直撃を受けにくい 2024・World Bank

フィリピンの弱み(数字で言えること)

論点 数字 年・出典
所得水準 一人当たりGDP 4,171USD(ASEAN7位)。ベトナムに895USDの差をつけられた 2025・World Bank(筆者算出)
製造業 製造業付加価値 対GDP比15.67%(ASEAN8位)。カンボジアより12ポイント低い 2024・World Bank
輸出 財輸出551億USD=ベトナム4,065億USDの約7.4分の1(人口はほぼ同規模) 2024・World Bank
FDI 2025年77.9億USD=5年ぶり低水準。2026年5月は11年ぶり低水準 2025–26・World Bank/BSP報道
電力 家庭用0.209 USD/kWh=ベトナムの2.7倍、マレーシアの4.2倍。2026年6月はASEAN最高 2023–26平均・GlobalPetrolPrices/DOE報道
汚職 CPI 32点・世界120位・ASEAN8位。2024年から悪化 2025・Transparency International
健康 平均寿命69.8年(ASEANで下から3番目) 2023・UNDP HDR 2025
学力 PISA数学352.6点=参加ASEAN国中最下位 2018・World Bank/OECD
観光 6,484,060人=マレーシア(4,220万人)の約6.5分の1、ベトナム(2,120万人)の約3.3分の1(2026-08-26 検証で「15分の1」を修正) 2025・DOT
モバイル 中央値99.97 Mbps・世界78位(ASEAN7位)。ベトナムの3.3分の1 2026年7月・Ookla
足元の景気 2026年Q2成長率2.3%(コロナ後最低)、7月インフレ6.2% 2026・PSA

9. 知らないと間違えるポイント(総まとめ)

# 誤りやすい点 正しい理解
1 「フィリピンはASEANで最も成長が速い」 2024年は3位、2025年は7位(4.4%)。2026年Q2は2.3%でコロナ後最低。ベトナム(2025年8.02%)とは倍近い差
2 「フィリピンはベトナムより豊か」 一人当たりGDPで2024年時点でベトナムに逆転済み(4,717 vs 3,985USD)
3 「フィリピンの失業率は2%台」 ILOモデル推計とPSA公式統計(2026年6月4.9%)は別物。混ぜない
4 「フィリピンのインフレは低い」 2025年平均1.66%は過去。2026年7月は6.2%、上期平均4.8%
5 「フィリピンはASEANで英語1位」 EF EPI 2025ではマレーシアが上(581 vs 569)。シンガポール・ブルネイは未収載。EF EPIは自己選択標本
6 「Doing Businessで◯位」 2021年9月に廃止。後継のB-READYは総合順位を公表しない
7 「B-READYでフィリピンは◯位」 原理的に存在しない表現。タイ・ミャンマーは未収録でもある
8 インターネット普及率 ITU/世銀系67.26%(2024年)とKepios系83.8%(2026年初頭)で20ポイント近く違う
9 インターネット速度 Ookla 2026年7月(モバイル99.97)とDataReportal引用の2025年10月値(59.64)で倍近く違う。時点必須
10 送金額 現金送金(BSP、2025年356.3億USD)個人送金(World Bank、2024年402.8億USD) は別概念
11 貧困率 PSAの2025年9.7%は2023年15.5%からの急落。指標レビューが進行中(BusinessMirror 2026-08-25)。各国の国内貧困線どうしは比較不可
12 国際貧困線 2025年に2021年PPPベース(3.00/4.20/8.30ドル)へ改定。その直前は2017年PPPの2.15/3.65/6.85ドル、さらに前が2011年PPPの1.90/3.20/5.50ドル(2026-08-26 検証で修正。旧記載は2011年PPP線を「2017年PPP」と誤記していた)。3世代を混在させない
13 電気料金 「ASEAN最高」か「シンガポールに次ぐ2位」かは時点と指標で変わる。複数年平均ではシンガポールが上、2026年6月の月次ではフィリピンが上
14 人口 World Bank/国連推計(1億1,679万人)とPSAセンサス値は一致しない。基準日と出典を必ず添える
15 LPI 2023年版が最新(2026-08-26時点で新版未確認)。3年前のデータ
16 HDI HDR 2025が最新でデータ参照年は2023年。2026年版は未刊行
17 CPI 「実際の汚職量」ではなく認識の合成指標。フィリピンの95%信頼区間は28.5〜35.5
18 観光客数 フィリピンの数字にはバリクバヤン(帰国フィリピン系)を含む。定義が国により異なる
19 「BPOは安泰」 2026年7月、業界がAIと国際競争を理由に目標を下方修正(BusinessWorld 2026-07-15)
20 「英語ができる=人材の質が高い」 PISA数学352.6点は参加ASEAN国中最下位。英語力と基礎学力は別

10. 主要出典一覧

出典 版・時点 使用箇所
World Bank World Development Indicators(API) 2026年7月13日更新 人口・GDP・成長率・インフレ・失業・貧困・製造業比率・輸出・FDI・送金・ネット普及率・LPIスコア・PISA
UNDP『Human Development Report 2025』統計付属表1 データ年2023 HDI・平均寿命・就学年数
UN World Population Prospects 2024年改訂(Our World in Data経由) 中位推計・2025年 年齢中央値
EF『English Proficiency Index 2025』 2025年11月、123か国 英語能力
Transparency International『CPI 2025』 2026年2月10日公表、182か国 汚職認識指数
RSF『World Press Freedom Index 2026』 180か国 報道自由度
World Bank『Logistics Performance Index 2023』 2023年 物流
World Bank『B-READY』 2024年版・2025年版 事業環境(カバレッジ)
IMD World Competitiveness Center 2026年6月公表、70経済 競争力(順位は報道ベース)
Ookla Speedtest Global Index 2026年7月 通信速度
DataReportal『Digital 2026 Philippines』(Kepios) 2026年初頭 ネット利用者・SNS・携帯接続
GlobalPetrolPrices.com 2026年Q2掲載(2023–26平均) 電気料金
PSA(フィリピン統計庁) 2026年各月 GDP四半期・労働力調査・貧困統計・CPI
BSP(フィリピン中央銀行) 2026年2月・8月 送金・FDI
ADB『Asian Development Outlook』 2026年7月 2026年成長見通し
UNCTAD『World Investment Report 2026』 2026年7月7日 東南アジアFDI動向
フィリピン観光省(DOT)/各国観光当局 2025年通年・2026年途中 訪問者数
IBPAP 2025年実績・2026年見通し IT-BPM

本資料では、DENR/EMB/NSWMC/DOTr のドメインには一切アクセスしていない(robots.txt でのAI利用拒否を尊重)。


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