フィリピンの地理と行政区画 情報基準日:2026-08-26 / 分野:地方・地域とバンサモロ
目次
0. 先に押さえる「7つの数字」 1. 位置・領域・海域 2. 7,641島 ── 2016年の改訂経緯 3. 3つの島嶼群(Island Groups) 4. 地形 ── 火山・断層・平野 5. 気候 ── コロナス4類型 6. 台風常襲地帯 7. 生物地理区(Biogeography) 8. 行政区画の全体像 ── 4層+1 9. 18地方(Region) 10. 州(Province)── 82 11. 市(City)── 3種類の違いが実務で効く 12. 町(Municipality)── 1,493 13. バランガイ(Barangay)── 42,010の最小単位 14. 地方自治法(RA 7160/1991年地方自治法)と地方分権 15. Mandanas-Garcia 判決と財源移譲 16. PSGC コードの体系 17. 人口 ── 2024年センサスが最新の確定値 18. 知らないと間違える点 ── まとめ
0. 先に押さえる「7つの数字」
項目
現在の数字
出典・基準日
島の数
7,641島
NAMRIA(国家地図資源情報庁)2016年発表
国土面積
約300,000 km²
CIA World Factbook(米政府刊行物)
地方(Region)
18
RA 12000(2024年)でネグロス島地方が新設され17→18
州(Province)
82
PSA(フィリピン統計庁)PSGC
市(City)
149 (HUC 33/ICC 5/構成市 111)
PSA、2024年6月30日基準
町(Municipality)
1,493
PSA、2024年6月30日基準
バランガイ(Barangay)
42,010
PSA PSGC、2026年4月時点(2025年7月8日時点は42,011)
注 v1.0(初稿)からの主な訂正・追加
・スールー州(Sulu)はBARMMではなく Region IX(サンボアンガ半島)に属する (2025年7月30日、大統領令91号)。初稿はこの点に触れていなかった。BARMM=5州とする古い記述は誤り。
・人口の基準が古い。2020年センサス(1億904万人)ではなく、2024年センサス(1億1,272万9,484人)が最新の確定値 である。
・「Region IV-B(ミマロパ)」という呼称は、RA 10879(2016年)で「ミマロパ地方/南西タガログ地方」に改称され、"IV-B" の呼称は廃止 された(実務では今も併用)。
・市の内訳(HUC/ICC/構成市)、地方自治法、PSGCコード、気候区分、生物地理区が初稿には欠落していた。
1. 位置・領域・海域
項目
内容
緯度・経度
北緯 4°40′〜21°10′/東経 116°40′〜126°34′
接する海
東=フィリピン海、西=南シナ海(政府呼称では西フィリピン海/West Philippine Sea )、南=セレベス海
総面積
約300,000 km²(うち陸地99.38%)
海岸線
36,289 km ─ CIA World Factbook では世界第5位 。ただし World Resources Institute のデータでは33,900 kmで世界第8位 。注 「海岸線の長さ」は測定単位で結果が変わる(海岸線パラドックス)ため、順位は出典を必ず添えること
EEZ(排他的経済水域)
2,263,816 km² (RA 9522/2009年の群島基線法にもとづく)
最高地点
アポ山(Mount Apo)2,954 m (ミンダナオ島)
最深部
エムデン海淵(Emden Deep) 。注 深さは資料により 10,430 m〜10,540 m と幅がある。フィリピン海溝内
最長河川
カガヤン川(Cagayan River)約520 km (北部ルソン、アパリで注ぐ)
最大の湖
ラグナ・デ・バイ(Laguna de Bay)911〜949 km² (平均水深わずか2.5 m)
海に近い国 :国内のどの地点も海から200 km以上離れていない。82州のうち沿岸州は66州(約81%)。
「世界第2位の群島国家」という表現をよく見るが、何を基準にした順位かは未確認 。「陸地面積で世界第5位の島嶼国」という順位も注 一次資料未到達(2026-08-26時点) であり(2026-08-26 の出典衛生工程で、典拠だったWikipediaを出典から除外)、裏が取れているのは上記の海岸線順位のみ。
2024年に成立した2つの海洋法(地理を法的に確定させた)
2024年11月7日 、マルコス大統領が署名(同年11月28日施行)。(2026-08-25 相互照合で修正。初稿は「11月8日」としていたが、Lawphil 掲載の RA 12064 原文の "Approved: NOV 07 2024" により11月7日が正。「パラワンと海洋環境」の記述と一致させた。出典:lawphil.net/statutes/repacts/ra2024/ra_12064_2024.html)
法律
内容
RA 12064 フィリピン海域法 (Philippine Maritime Zones Act)
内水・群島水域・領海・接続水域・EEZ・大陸棚の範囲をUNCLOS基準で明文化
RA 12065 群島航路帯法 (Archipelagic Sea Lanes Act)
外国船舶・航空機が通航できる3本の航路帯 とその上空の航空路を指定(うち1本はフィリピン海—バリンタン海峡—西フィリピン海を結ぶ)
両法は国連にも通報され、UNCLOSおよび2016年仲裁判断との整合を国内法で担保した。フィリピンの「地理」を語るとき、2024年以降は法定の海域が前提になる 。
2. 7,641島 ── 2016年の改訂経緯
旧来の数字
7,107島 (長年の公式値。教科書・観光資料に今も残る)
現在の数字
7,641島
改訂の主体
NAMRIA (National Mapping and Resource Information Authority/環境天然資源省DENR傘下)
発表
2016年2月、フィリピン環境サミットにてパヘ環境長官(当時)が公表。2019年のPhilippine Geomatics Symposiumで再確認
手法
IFSAR(干渉合成開口レーダー) による高分解能測量+ルソン・ビサヤ・ミンダナオ全域での現地検証
注 新旧を必ず並記すること。 増えた500島余りは大半が無人の小島・岩礁で、「新しい島ができた」のではなく測量技術の向上で検出できるようになった もの。
有人島は約2,000島にとどまり、5,000島以上が正式な地名を持たない (Inquirer 2019年報道/NAMRIA)。
上位11島で国土面積の95% を占める(ルソン島 109,965 km²=世界第15位の島 、ミンダナオ島 97,530 km² )。(2026-08-25 相互照合で修正。初稿の「約105,000 km²/約95,000 km²」は出典不明の丸め値で、実測値より4〜5%小さかった。注 ミンダナオ島97,530 km²と「ミンダナオ島嶼群」の面積は別物 である点にも注意。注 (2026-08-26 出典衛生工程)109,965 km²/97,530 km² は一次資料未到達(2026-08-26時点) 。島別面積の官製原典は NAMRIA だが到達できず、従来典拠のWikipediaは出典から除外した。数値は残すが単独引用しないこと)
3. 3つの島嶼群(Island Groups)
憲法や地方自治法上の行政単位ではなく、慣用的・統計的な区分 である点に注意。ただし国旗の3つの星が象徴し、統計・報道・企業の営業区分で普遍的に使われる。
島嶼群
主要な島
含まれる地方
ルソン(Luzon)
ルソン島、パラワン 、ミンドロ、マスバテ、カタンドゥアネス、マリンドゥケ
NCR・CAR・I・II・III・IV-A・ミマロパ・V の8地方
ビサヤ(Visayas)
サマール、ネグロス 、パナイ、レイテ、セブ 、ボホール、シキホール
VI・NIR・VII・VIII の4地方
ミンダナオ(Mindanao)
ミンダナオ島、バシラン、ホロ、タウィタウィ、ディナガット、カミギン
IX・X・XI・XII・XIII・BARMM の6地方
4. 地形 ── 火山・断層・平野
4-1. 環太平洋火山帯(Ring of Fire)の上にある
項目
数値・内容
出典
火山の総数
約300
PHIVOLCS(フィリピン火山地震研究所)
活火山
約24 (「過去500年以内に噴火」を活火山と定義)
PHIVOLCS。注 スミソニアン協会Global Volcanism Programは完新世活動確認23で、定義により数が変わる
地震発生
1日平均約20回 (有感・無感合計)
PHIVOLCS
主な火山:マヨン山(Mayon) =記録上最も頻繁に噴火/タール火山(Taal) =マニラ南方、カルデラ湖の中の火山/アポ山 =最高峰/ピナトゥボ山 =1991年の20世紀最大級の噴火。
4-2. 主な山脈と平野
地形
位置・規模
シエラマドレ山脈(Sierra Madre)
国内最長。南北約540 km、面積約16,260 km²。カガヤン州〜ケソン州。「台風の壁」と呼ばれるが、防風・減雨効果が明確なのはカガヤン・バレー側で、注 首都圏では地形性上昇でむしろ降雨が増える
コルディリェラ・セントラル(Cordillera Central)
北部ルソン。南北約320 km、面積約22,500 km²、ルソン島の約1/6 。最高峰プラグ山 2,928 m。国内で最も標高の高い山塊
サンバレス山脈(Zambales Mountains)
西部ルソン。ピナトゥボ山を含む。オフィオライト(海洋地殻由来)で構成
カラバリョ山脈(Caraballo)
上記2山脈を南東で連結。カガヤン川の水源
中部ルソン平野(Central Luzon Plain)
国内最大の平野。米作の中心地で「フィリピンの米蔵」
カガヤン・バレー
コルディリェラとシエラマドレに挟まれた縦谷。トウモロコシ・タバコ
アグサン・バレー
ミンダナオ北東部の低地・湿地帯
4-3. 活断層 ──「The Big One」
項目
内容
西バレー断層(West Valley Fault)
全長約100 km。ブラカン・リサール・ラグナ・カビテ、およびケソン市・パシッグ・マリキナ・タギッグ・ムンティンルパを縦断する横ずれ断層
最後の活動
1658年 。平均再来間隔400〜600年 → すでに活動期に入っている
発生確率
今後50年で30〜37% (PHIVOLCS)
想定被害
JICA・MMDA・PHIVOLCS共同のMMEIRSで死者約34,000人+火災による死者18,000人、全壊約17万棟 。より新しいGMMA-RAPでは死者最大48,000人、経済損失480億ドル
2026年1月にはマニラ市が全市一斉の地震訓練を実施(Manila Bulletin系報道)。2025年10月の一連の地震について、PHIVOLCSのバコルコル所長は「西バレー断層を誘発するものではない 」と明言している(GMA News)。
5. 気候 ── コロナス4類型
PAGASA(フィリピン大気地球物理天文局)は、降雨の季節配分 にもとづく修正コロナス分類(Modified Coronas Classification) で全国を4類型に分ける。1920年にコロナス神父が考案した分類で、気温や植生は考慮しない のが特徴。
類型
特徴
おおよその該当地域
Type I
乾季と雨季が明瞭。雨季6〜11月、他は乾季
西部ルソン(首都圏・中部ルソン西部・イロコス・サンバレス)、パラワン西岸など南西モンスーンに直接さらされる西側
Type II
乾季がない 。11〜2月に降雨が集中
ルソン東岸、ビコール東部、東サマール、東部ミンダナオなど太平洋側
Type III
短い乾季(おおむね2〜4月または3〜5月)
中部ルソンの一部、西ビサヤ、ミンダナオ北部・中部
Type IV
年間を通じて降雨がほぼ均等
ボホール、東ネグロスの一部、ミンダナオ中南部
注 「乾季/雨季」は全国共通ではない。 マニラで乾季(1〜4月)でも、ダバオやセブでは事情が違う。出張・視察の日程を「フィリピンの乾季」で決めると失敗する。
注 各類型の月境界は資料により1〜2か月ずれる。「Type Iの乾季は12〜5月」とする資料と「11〜4月」とする資料がある。
「乾月」の定義も出典により50 mm未満 と100 mm未満 が混在する。
6. 台風常襲地帯
項目
数値
出典
PAR(フィリピン責任海域)進入数
年平均約20個
PAGASA
うち上陸・通過
年8〜9個
PAGASA
ピーク期
7〜10月 (全体の約70%)
PAGASA
PARの範囲
おおむね北緯5〜25度、東経115〜135度
PAGASA/WMOが付与
PARに入る熱帯低気圧の数は世界のどの海域より多い (PAGASA)。フィリピンでは国際名とは別に現地名(ローカル名) が付き、報道は現地名で行われる。
2025〜2026年の状況
時期
事象
被害(出典:OCHA/NDRRMC)
2025年11月4日〜
台風ティノ(Tino/国際名 Kalmaegi) ─ 南レイテ初上陸後、セブ・西ネグロス・イロイロ・パラワンに連続上陸
死者269人・負傷523人・行方不明113人 、被災者350万人超 (注 旧記載「540万人超」は出所不明の別系列として残置)、家屋被害637,263棟(うち全壊75,681棟) (注 旧記載「全壊42,780棟」は集計途中の速報値)、被害額32.6億ペソ超
2025年11月9日
スーパー台風ウワン(Uwan/Fung-wong) ─ アウロラ州ディナルンガンに上陸、最大風速185 km/h(PAGASA。注 JMAは175 km/h、JTWCは1分平均215 km/hと機関で異なる)、直径1,800 km
18地方のうち16地方に影響 、死者33人・負傷52人・行方不明2人、被災者約750万人 、事前避難者1,315,739人(13地方)/家を追われた人482,614人 、被害額約49.2億ペソ、停電約1,700万人(NDRRMC)
2026年
PAGASAの見通し(2026年4月の気候フォーラム)
5〜10月にPAR進入 9〜17個 。「個数は平年並みだが、発生したものは台風・スーパー台風まで発達しやすい 」
(2026-08-25 相互照合で修正。ウワンの避難者数は本稿が「事前避難150万人超」、「北部ルソンとコルディリェラ」資料が「全国で約140万人が避難」と食い違っていた。注 (2026-08-26 出典衛生工程で再訂正) :「13地方・1,315,739人」はWikipedia経由の値で、NDRRMC発表を直接報じた一次〜準一次資料では再現できなかった 。確認できたNDRRMC集計は以下のとおり。
- 2025-11-12 時点 :16地方66州で1,499,979人が避難 (うち9,014か所の避難所に919,345人)、影響人口約360万人(Rappler「Uwan displaced nearly 1.5 million people in 66 provinces – NDRRMC」)
- 2025-11-19 時点 :死者33人 、被災 7,539,110人/2,139,837世帯・16地方14,854バランガイ 、避難所3,169か所に80,720世帯、住家損壊271,023棟・全壊25,764棟(PNA「Uwan death toll hits 33, affected population over 7.5 million」)
したがって「約750万人」は裏づけあり だが、避難者数は「13地方・1,315,739人」ではなく「16地方・約150万人(11/12時点)」を採るべき である。注 最大風速は機関により175(JMA)/185(PAGASA)/215(JTWC)km/h と異なるため、必ず出典を添えること。出典:PNA/Rappler(いずれもNDRRMC状況報告の報道)。注 ndrrmc.gov.ph 本体は2026-08-26時点で403のため原本Sitrepには未到達 。)
(2026-08-25 第2次相互照合で追加修正 。 2026-08-26 の出典衛生工程で出典を一次資料へ差し替え :PNA「Uwan death toll hits 33, affected population over 7.5 million」 /PNA「Combined deaths due to Tino, Uwan near 300」 /Inquirer「Tino causes 232 deaths…NDRRMC」/Rappler(2025-11-12 NDRRMC状況報告)。台風ティノ(カルマエギ)の死者269人の内訳=セブ150/ネグロス・オクシデンタル77/ネグロス・オリエンタル23/アグサン・デル・スル6/カピス3/レイテ・南レイテ・ディナガット各2/アンティケ・ボホール・イロイロ・グイマラス各1 、行方不明113人・負傷523人、被災4,164,358人/1,186,673世帯・8地方。2台風の合計死者297人。注 ndrrmc.gov.ph は403のため原本Sitrepには未到達)
- 注 「1,315,739人」は "preemptively evacuated"(上陸前の事前避難者)そのものの数 である。初稿・第1次照合稿の「避難者1,315,739人(うち事前避難は110万人超)」という入れ子の書き方は原典と対応しないため改めた。家を追われた人(displaced)は別系列の 482,614人 である。
- 注 ティノ(Kalmaegi)の被害数値はすべて速報値の残置だった。 死者「250人超」→269人 、行方不明「100人超」→113人 、家屋全壊「42,780棟」→75,681棟(被害総数637,263棟) 。被災者数は本稿の「540万人超」とNDRRMC最終系列の「350万人超 」が食い違うため、どちらも消さずに併記 する。分野「気候変動と適応」§7-2 は初稿で「約70.6万人(初期値)」としており、同じ台風に3つの被災者数が流通していた。
- 教訓:災害統計は「NDRRMC」とだけ書いても特定できない。必ず「何月何日付のsitrepか」を書く。
2025〜2026年の大地震(台風と併せて「複合災害」化)
日付
地震
被害
2025年9月30日
セブ島北部沖 Mw 6.9 (ボゴ市北東19 km、深さ約5 km)
死者79人、負傷1,271人、被害額約162.3億ペソ 、被災者約74.8万人。余震12,000回超(PHIVOLCS/NDRRMC)(2026-08-25 相互照合で修正。初稿「163億ペソ」を、「ビサヤ諸島」「主要都市とビジネス地区」両資料と一致する162.3億ペソへ統一)
2025年10月10日
東ダバオ沖 Mw 7.4 (マナイ北東48 km)+ Mw 6.7 の双子地震
死者10人前後、負傷1,000人超、家屋4万棟被害。津波警報(実測約30 cm)
2026年6月8日
サランガニ州マアシム沖 M7.8 (07:37 PST。USGS/EMSC。PHIVOLCS当初M7.0→上方修正)、深さ 57 km(USGS)/33 km(PHIVOLCS)
死者106人・負傷1,316人・行方不明7人 (2026年7月21日時点)、被害額約710億ペソ(約14.4億米ドル) 、津波最大 2.5 m (スルタン・クダラット州レバク)。ヘネラル・サントス市で最大震度VII
2026年6月の地震についてPHIVOLCSは「これは The Big One ではない」 と明言(BusinessWorld 2026年6月11日)。震源はコタバト海溝で、首都圏の西バレー断層とは別系統。
注 (2026-08-25 相互照合で修正。初稿は「死者41人以上・負傷480人以上、津波最大1.4 m、深さ約55 km」としていたが、これは発災直後の暫定値。「ミンダナオ地方」資料の記述と照合し確定系の数値へ更新した。発災直後の速報値を最終値として残さないこと。
注 (2026-08-26 出典衛生工程で再検証)従来の「NDRRMC 2026年7月21日集計」はWikipedia経由の記述であり、一次〜準一次資料で再現できなかった。 NDRRMC発表を直接報じた資料で確認できた最大値は次のとおり。
- 2026-06-21 Sitrep No. 13 :死者77人・負傷1,339人・行方不明31人
- 2026-06-26 :死者81人(確認9人=いずれもDavao Region、82人は検証中)・負傷1,315人・行方不明31人
- 2026-07-01 :死者88人・負傷1,316人・行方不明24人
- 2026年7月上旬(最新確認) :死者92人 (確認9人/検証中83人)・負傷1,316人 ・行方不明20人 、被災 391,231世帯=1,678,932人 (Region 9・11・12・BARMM の625バランガイ)、住家損壊113,370棟(半壊94,988/全壊18,382)、インフラ被害 約13億5,600万ペソ+農業被害 約2,984万ペソ
震源は2026-06-08 07:37(現地時間)、サランガニ州マアシムの南約32 km、深さ33 km (コタバト海溝)。津波は約1 m(キアンバで最大約1.4 m)。ヘネラル・サントス市で震度VII、マラパタンで計測震度VIII。
「死者106人」「被害額約710億ペソ」「遡上高2.5 m」「深さ57 km(USGS)」は一次〜準一次資料で確認できなかった=注 一次資料未到達(2026-08-26時点)。これらの数値を単独で引かないこと。
出典:PNA「NDRRMC: Sarangani quake deaths now at 92」/同「Sarangani quake deaths climb to 81 - NDRRMC」/同「Sarangani quake death toll now at 88 – NDRRMC」/GMA News「Nearly 1.6M persons affected by M7.8 Mindanao earthquake — NDRRMC」/ADRC 災害報告書(PDF)。注 ndrrmc.gov.ph・phivolcs は本工程では未取得)
注 「フィリピンのリスク=台風」だけで語ると不十分 。2025年後半以降、地震・津波の被害が台風と同程度に議論されている。
7. 生物地理区(Biogeography)
概念
内容
PAIC モデル (Pleistocene Aggregate Island Complex)
フィリピン生物地理の標準的枠組み。氷期の海面低下時に、水深150 m以浅の海で隔てられた島々が一つの大きな島に合体した という考え方。現在は別々の島でも、当時つながっていた島々は生物相を共有する
主なPAIC
大ルソン/大ビサヤ(ネグロス-パナイ)/大ミンダナオ/大パラワン/ミンドロ/スールー
パラワンだけ別
パラワンはスンダ陸棚(Sunda Shelf)上 にあり、氷期にボルネオ=スンダランドと陸続きだった。他の島群はアジア大陸と一度もつながっていない
境界線
ハクスリー線(Huxley's Line/ウォレス線の修正版) がパラワンと他のフィリピンを分ける。注 「ウォレス線」の位置は論者により異なり、「フィリピンはウォレス線の東」と単純化すると誤り (パラワンは西側)
生物多様性
項目
数値
出典
メガダイバース国
世界の17か国 の一つ
一般的な国際区分。注 DENR(環境天然資源省)は「18か国」と表記 しており、出典により異なる
記載種数
52,000種超 、うち半分以上が固有種
Philippine Clearing House Mechanism
脊椎動物の固有率
60%超
同上
保護区
244か所・約776万ha(国土の15.4%) (2020年時点)。2018年の拡大NIPAS法(ENIPAS法) は248か所を法定
DENR-BMB。注 244と248の差は基準の違い
重要生物多様性地域(KBA)
228か所 、855の世界的重要種
DENR-BMB
法的枠組み
NIPAS法(1992年)→ ENIPAS法(RA 11038/2018年)
フィリピンはコーラル・トライアングル の一角でもあり、海洋生物多様性の世界的中心。
8. 行政区画の全体像 ── 4層+1
(地方 Region)※原則、行政の調整単位であって自治体ではない
└ 州 Province(82)
├ 構成市 Component City(111)
└ 町 Municipality(1,493)
└ 高度都市化市 HUC(33)/独立構成市 ICC(5)※州から独立
└ バランガイ Barangay(42,010)
LGU(Local Government Unit=地方自治体)は「州・市・町・バランガイ」の4種類 。地方(Region)はLGUではない(BARMMのみ例外)。
9. 18地方(Region)
9-1. 法的位置づけ
項目
内容
根拠
1972年9月24日、大統領令第1号(Presidential Decree No. 1) (マルコス政権)で導入
性格
選挙で選ばれる地方政府は存在しない 。中央省庁の出先(Regional Office)を束ね、計画・予算・統計を調整する単位。審議機関は地域開発協議会(RDC/Regional Development Council)
例外
BARMM のみ、議会(Bangsamoro Parliament)と首相(Chief Minister)を持つ自治政府
9-2. 一覧(人口は2024年センサス/PSA)
#
地方
呼称
地方中心地
面積 km²
人口(2024)
1
首都圏
NCR
マニラ
636.00
14,001,751
2
コルディリェラ行政地域
CAR
バギオ
19,422.03
1,808,985
3
イロコス地方
I
サンフェルナンド(ラウニオン)
13,012.60
5,342,453
4
カガヤン・バレー
II
トゥゲガラオ
28,228.83
3,777,608
5
中部ルソン(スービック・クラーク)
III
サンフェルナンド(パンパンガ)
22,014.63
12,989,074
6
カラバルソン(CALABARZON)
IV-A
カランバ
16,873.31
16,933,234 (全国最大)
7
ミマロパ(MIMAROPA/パラワンを含む)
─
カラパン
29,620.90
3,245,446
8
ビコール地方
V
レガスピ
18,155.82
6,064,426
9
西ビサヤ
VI
イロイロ市
12,750.63
4,861,911
10
ネグロス島地方(NIR)
─
バコロド
13,525.56
4,904,944
11
中部ビサヤ(セブ)
VII
セブ市
10,114.52
6,640,875
12
東ビサヤ
VIII
タクロバン
23,251.10
4,625,929
13
サンボアンガ半島(スールー州を編入)
IX
パガディアン
17,056.73
5,089,934
14
北ミンダナオ
X
カガヤン・デ・オロ
20,496.02
5,178,326
15
ダバオ地方
XI
ダバオ市
20,357.42
5,389,422
16
ソクサージェン(SOCCSKSARGEN)
XII
コロナダル
22,513.30
4,462,776
17
カラガ
XIII
ブトゥアン
21,478.35
2,865,196
18
BARMM
─
コタバト市
11,935.70
4,545,486
注 NIRの中心地は資料によりバコロド市/ドゥマゲテ市 が併記される。注 面積・人口は地方再編(NIR新設・スールー移管)の反映時点により出典間でずれが出る。
注 スールー州の扱いで「同じ2024年センサス」から2つの数字が出る(2026-08-25 相互照合で追記)
2024年センサスの基準日(2024年7月1日)は EO 91(2025年7月30日)より前のため、PSAが公表した原表ではスールーはまだBARMMに計上されている 。一方、2026年時点の行政区画(スールー=Region IX)に組み替えると数字が動く。
地方
PSA原表(スールーをBARMMに算入)
2026年の行政区画ベース(本稿の表)
BARMM
5,691,583
4,545,486
Region IX(サンボアンガ半島)
3,943,837
5,089,934
差はいずれも スールー州 1,146,097人 (2024年センサス)で、合計 9,635,420人は両方で一致する 。
注 どちらも「間違い」ではないが、出典を書かずに並べると1,146,097人が消えたり二重計上されたりする。 本稿は2026年の行政区画に合わせた後者を採用。「ミンダナオ地方」資料は前者(PSA原表)を採用しており、両資料を突き合わせる際は必ずこの注を参照すること。
(出典:PSA 2024 POPCEN〈全国値は Proclamation No. 973, 2025-07-11 =LawPhil proc_973_2025.html 原文〉/スールー州のRegion IX編入は EO 91, s. 2025 第3条 =LawPhil eo_91_2025/BARMM構成は RA 11054 および RA 11550 =LawPhil。注 地方別の人口・面積の内訳はPSA原本が403のため一次資料未到達(2026-08-26時点) 。2026-08-26 の出典衛生工程でWikipediaを出典から除外)
9-3. 2024年:ネグロス島地方(NIR)の新設
項目
内容
根拠法
共和国法12000号(Negros Island Region Act) 、2024年6月11日マルコス大統領署名
構成
西ネグロス州(バコロド市を含む)+東ネグロス州+シキホール州
移管元
西ネグロスは Region VI(西ビサヤ)から、東ネグロス・シキホールは Region VII(中部ビサヤ)から
地方コード
18
影響
西ビサヤは5州+HUC1、中部ビサヤは2州+HUC3に縮小
前史
2015年に大統領令183号でNIRが創設されたが、2017年に大統領令38号で廃止 。今回は法律による再設置 で、行政命令より安定
実務
2025年前半は西ビサヤ・中部ビサヤの予算を流用して暫定運営。独自予算がGAA(一般歳出法)に計上されて本格稼働 (Negros Now Daily は「2026年に完全稼働」と報道)
9-4. 2025年:スールー州の Region IX 移管(最も間違えやすい点)
時系列
出来事
2019年
バンサモロ基本法(RA 11054)の住民投票で、スールー州は反対多数 。しかし州は「地域全体の賛成多数」としてBARMMに編入された
2024年9月
最高裁が「スールー州はBARMMの一部ではない」と判断し、確定
2025年7月30日
大統領令第91号(EO 91, s. 2025) 署名。「スールー州を Region IX(サンボアンガ半島)の一部と宣言」。全国の省庁に対し、地域行政・開発計画・投資計画・予算編成上、スールーをRegion IXに含めるよう指示
統計上の処理
PSAはスールー州のPSGCコードを 0906600000 に変更(地方コードを「19」→「09」に。市町・バランガイのコードはそのまま)
議席処理
スールーの7議席が宙に浮き、BARMM議会が2026年1月に新選挙区法を可決して選挙区議席を25→32に再配分
注 BARMMの州数は、スールーを除いた現在も「5州」である (マギンダナオ・デル・ノルテ、マギンダナオ・デル・スール、ラナオ・デル・スール、バシラン、タウィタウィ + コタバト市 + 特別地理区域)。スールー離脱で1州減った一方、2022年のマギンダナオ分割(RA 11550)で1州増えているため、結果として5州のまま。注 2024年以前の資料はほぼ全て古い(旧5州=バシラン・ラナオデルスール・マギンダナオ・スールー・タウィタウィ)。
(2026-08-25 相互照合で修正。初稿は「4州+α」と書きながら5州名を列挙しており自己矛盾していた。また「離島と辺境」資料も「バシラン、ラナオ・デル・スル、マギンダナオ、タウィタウィの4州構成」と記していたが、これはマギンダナオ分割を反映していない。 出典(2026-08-26 の出典衛生工程で一次資料へ差し替え):LawPhil ra_11550_2021 原文 ="An Act Dividing the Province of Maguindanao into Two (2) Provinces…"、承認2021-05-27/住民投票による批准2022-09-17 。あわせて EO 91, s. 2025 第3条 (スールーのRegion IX編入)と最高裁 G.R. No. 242255(2024-09-09、スールーのBARMM離脱)により現在5州 )
9-5. BARMM ── 2026年9月に初の議会選挙
項目
内容
現状
暫定機構(BTA) が統治。暫定首相はアブドゥルラウフ・マカクア (前任は MILF 議長のムラド・エブラヒム)
議会選挙
2026年9月14日 に初のバンサモロ議会選挙。4回延期 (2022年5月→2025年5月→2025年10月→2026年3月→2026年9月)された
根拠
RA 12317 (条文末尾は "Approved: March 24, 2026"、LawPhil索引・報道は3月25日)。改正されたのは RA 11054 の「第16編(Article XVI)第13条(Section 13)」 であって「第16条第13項」ではない(2026-08-26 改正確認。改正法=RA 12317 第1条、改正先=RA 11054 Art. XVI, Sec. 13。出典:LawPhil ra_12317_2026.html 原文の題名 "Amending for the Purpose Section 13, Article XVI of Republic Act No. 11054, as Amended")
規模
定数80のうち72議席を選出 、過半数41。登録有権者約230万人
就任
2026年10月30日正午〜2031年6月11日
特別地理区域(SGA)
北コタバト州の63バランガイ が2019年住民投票でBARMM編入。バンサモロ自治法41〜48号(2023年9月)で8つの新設町 を創設し、2024年4月13日の住民投票で承認 (賛成72,358/反対273)。新町名=Pahamuddin, Kadayangan, Nabalawag, Tugunan, Ligawasan, Malidegao, Old Kabakan, Kapalawan
10. 州(Province)── 82
項目
内容
数
82 。2022年9月17日の住民投票でマギンダナオ州がマギンダナオ・デル・ノルテとマギンダナオ・デル・スールに分割 (RA 11550)され81→82になった。賛成99.27%、投票率86.93%
首長
知事(Governor)、副知事、州議会(Sangguniang Panlalawigan)
任期
3年 、同一ポスト連続3期まで (1987年憲法第10編第8条/RA 7160 第43条(b))。注 旧記載「4年」は誤り (2026-08-26 改正確認で修正)。任期が4年になったのはバランガイ職・SK職だけ =RA 12232(2025-08-13)第1条。州・市・町の首長/議員は3年のまま
最小人口
バタネス州 18,937人 (2024年センサス)。注 よく引用される「17,246人」は2015年の値 、18,831人は2020年の値
最大人口
カビテ州 4,573,884人 (2024年センサス)。注 「4,344,829人」は2020年の値
最小面積
バタネス州 219.01 km²
最大面積
パラワン州 17,030.75 km²
内陸州
15州(うち12州がルソン、3州がミンダナオ)
注 NCR(首都圏)には州が存在しない。 首都圏の市は州に属さない。
注 州の人口・面積の最小最大は census 年で入れ替わる。(2026-08-25 相互照合で修正。初稿の人口欄は2015年値(バタネス17,246人)と2020年値(カビテ4,344,829人)が混在していたため、2024年センサス値に統一した。「離島と辺境」資料が「17,246人は2015年の数字で現在値ではない」と正しく指摘しており、そちらを採用。出典:PSA 2024 POPCEN(全国値は Proclamation No. 973=LawPhil 原文で確認)。注 州別内訳(バタネス18,937/カビテ4,573,884)はPSA原本が403のため一次資料未到達(2026-08-26時点) 。citypopulation.de(PSA由来)で照合したにとどまる。2026-08-26 の出典衛生工程でWikipediaを出典から除外)
11. 市(City)── 3種類の違いが実務で効く
合計149市 (2024年6月30日、PSA)。
種別
数
州との関係
州知事選への投票
備考
高度都市化市(HUC)
33
州から完全に独立 。州の監督下にない
投票できない
要件=人口20万人以上+年収5,000万ペソ以上(1991年不変価格)。大統領の宣言+住民投票 で成立。うち16市が首都圏
独立構成市(ICC)
5
州から独立しているが HUC 要件は未達
市により異なる (下記)
ダグパン/ナガ/オルモック/サンティアゴ/コタバト市
構成市(Component City)
111
州の一部 。州の監督を受ける
投票できる
議会制定法+住民投票で成立
ICC 5市の内訳(ここが特に間違えやすい)
市
地理上の州
州選挙への参加
ダグパン(Dagupan)
パンガシナン
参加できる (憲章の規定による)
ナガ(Naga)
カマリネス・スール
参加できる
オルモック(Ormoc)
レイテ
参加できない
サンティアゴ(Santiago)
イサベラ
参加できない
コタバト市(Cotabato City)
(BARMM)
参加できない
注 「HUC 33/ICC 5」と「HUC 34/ICC 4」の2系統の数字が流通している。 PSAのPSGCは 33/5 (2024年6月11日基準)。2026-08-26 の出典衛生工程で「34/4」説の実体が判明 :これは 2026-05-26 の Proclamation No. 1267 でHUCと宣言されたナガ市(カマリネス・スル)を先取りして数えたもので、同市の批准住民投票は2026年11月2日(バランガイ・SK選挙と同日)に予定されている段階 であり、2026年8月時点の法的分類はICC=すなわち33/5 が正しい 。出典:PIA「PBBM proclaims Naga City as highly-urbanized city」/ナガ市公式 www2.naga.gov.ph/PNA(COMELEC Minute Resolution No. 26-0526)。注 必ず出典と基準日を添えること。
HUC+ICC=独立市38市 。これらは州の税収・行政から切り離される。進出時に「どこの許認可窓口か」を左右する最重要の区別 。
市への昇格要件(RA 9009 )=自主財源1億ペソ以上(2000年不変価格)が2年連続、かつ「人口15万人以上」または「面積100 km²以上」。RA 11683(2022年) により、年4億ペソ以上を2年連続で稼ぐ町は人口・面積要件を免除。
2023年10月30日、サンホセ・デル・モンテ市のHUC昇格は住民投票で否決 された。
参考:主要都市の人口(2024年センサス/PSA)
順位
都市
2024年
2020年
増減
1
ケソン市
3,084,270
2,960,048
+4.20%
2
マニラ市
1,902,590
1,846,513
+3.04%
3
ダバオ市
1,848,947
1,776,949
+4.05%
4
カロオカン市
1,712,945
1,661,584
+3.09%
5
タギッグ市
1,308,085
886,722
+47.52%
6
サンボアンガ市
1,018,849
977,234
+4.26%
7
セブ市
965,332
964,169
+0.12%
8
アンティポロ市
913,712
887,399
+2.97%
タギッグの+47.5%は人口増ではなく境界変更 。最高裁判決によりマカティ市のEMBO(フォート・ボニファシオ)諸バランガイがタギッグに移管 された結果。注 「タギッグが爆発的に成長した」と読むのは誤り。
セブ市はほぼ横ばい(+0.12%) 。都市圏(メトロ・セブ)としての成長は周辺市町に出ている。
首都はマニラ市だが、最大の都市はケソン市 。ダバオ市は面積2,443.61 km² で国内最大の市 (最小のサンフアン市は5.95 km²)。
12. 町(Municipality)── 1,493
項目
内容
数
1,493 (2024年6月30日、PSA)
首長
町長(Mayor)、副町長、町議会(Sangguniang Bayan)
州との関係
必ず州に属する (例外=パテロス町。首都圏所属で、どの州にも属さない唯一の「独立町」)
中心地区
ポブラシオン(Poblacion) =役場・教会・市場のある中心バランガイ
首都圏(Metro Manila)=16市+パテロス町の17 LGU、バランガイ1,715 (2024年センサス)。調整機関はMMDA(首都圏開発庁/RA 7924、1995年) 。最高意思決定機関であるMetro Manila Council は17自治体の首長+副市長連盟・市議会議員連盟の代表で構成 され、長官のみ大統領任命。近年、最高裁は「首都圏の交通規則の執行権限はMMDAが排他的に持つ」 と判断した(Supreme Court)。
13. バランガイ(Barangay)── 42,010の最小単位
項目
内容
数
42,010 (2026年4月時点/PSA PSGC)。2025年7月8日時点は42,011で、2026年第1四半期に2つのバランガイが統合 され1減
語源
植民地以前の政体および船「バランガイ(balangay) 」に由来
人口幅
1人〜215,035人 。最大はケソン市コモンウェルス(Commonwealth)215,035人 、次いでパシッグ市ピナグブハタン173,576人
首長
バランガイ・キャプテン(Punong Barangay)
議会
Sangguniang Barangay =キャプテン1+カガワッド(councilor)7+SK(青年評議会)議長1 の計9
下位区分
プロク(Purok/区) とシティオ(Sitio/中心集落から離れた小集落) 。注 法的な行政単位ではなく非公式 。ただし住所表記には頻出
財源
NTA(国税配分)の一部が人口と面積の按分で配分される
バランガイが果たす実務上の役割(日本人が最も見落とす)
機能
内容
バランガイ証明書(Barangay Clearance)
事業許可・就職・各種申請の前提 となる。RA 7160第152条(c)がバランガイに手数料徴収権を与える
カタルンガン・パンバランガイ(Katarungang Pambarangay/バランガイ司法制度)
RA 7160 第399〜422条 。同一市町の住民間の一定の紛争は、まずバランガイの調停を経なければ裁判所に提訴できない (提訴要件)。調停機関はルポン・タガパマヤパ(Lupong Tagapamayapa) =キャプテンを長とする10〜20人、3年ごとに構成
対象外
1年超の懲役または5,000ペソ超の罰金に当たる犯罪、当事者が異なる市町の住民である場合(合意すれば可)など
先住民
先住民族が多数を占めるバランガイでは、ダトゥや長老の評議会による在来の紛争解決が法的に認められる
基礎サービス
農業支援(種苗配布・集荷所)、保健所・保育所、衛生、道路・橋の維持、情報センター(RA 7160第17条(b)(1))
2026年11月に予定されるバランガイ選挙 ── ただし再延期の動きあり
時期
内容
2023年10月30日
直近のバランガイ・SK選挙(BSKE)
2025年8月13日
RA 12232 署名。BSKEを2025年12月→2026年11月2日 に延期し、任期を4年 に設定(以後4年ごと、12月1日就任)。バランガイ職は連続3期まで、SK職は1期のみ
2026年8月現在
さらに2028年への再延期法案(下院法案10376号、2026年8月1日提出) が審議中。「エネルギー非常事態」を理由に約60人の下院議員が支持。エスクデロ上院議員は任期5年化 の上院法案2387号を提出。選挙監視団体NAMFRELは反対を表明
注 2026年8月25日時点では「2026年11月2日実施」が法定だが、再延期のリスクがある 。確定情報として扱わないこと。
14. 地方自治法(RA 7160/1991年地方自治法)と地方分権
項目
内容
正式名
Republic Act No. 7160 — Local Government Code of 1991 (1991年10月10日成立、1992年1月1日施行)
背景
1987年憲法第10条が地方自治(local autonomy)を明記したことを受けた実施法
中核
第17条「基礎サービスと施設」 =保健・社会福祉・農業普及・環境・公共事業などを国から自治体へ移譲(devolution)
階層別の役割
バランガイ/町/州にそれぞれ列挙。市は「町の機能+州の機能」を併せ持つ (第17条(b)(4))。列挙は "include, but are not limited to" =例示列挙 であり限定列挙ではない
財源
第284条=国税の40%を自治体の「正当な取り分」として自動配分 。第286条・第293条=自動交付(automatic release)
外部資金
第23条=首長は議会の授権があれば、中央省庁の許可なく国内外の援助機関から資金・現物寄付を受けられる
経済事業
第22条(d)=自治体は財産的機能・公営企業の運営で完全な自治を享受
15. Mandanas-Garcia 判決と財源移譲
15-1. 判決
項目
内容
判決
2018年(2019年確定)最高裁判決 。原告=バタンガス州の Hermilando Mandanas 副知事ら
争点
RA 7160第284条は「national internal revenue taxes(BIRが徴収する内国税) 」の40%と規定。しかし1987年憲法第10条第6項は「national taxes(国税) 」と規定
判断
「正当な取り分」は関税を含む全国税を基礎に計算すべき 。BIR徴収分に限定するのは違憲
効果
2022会計年度から IRA(内国歳入配分)→ NTA(国税配分/National Tax Allotment)へ名称・算定基礎が変更 。注 「IRA」は古い用語 であり、2022年以降の文書では NTA が正しい
15-2. 金額の推移
年度
LGU への NTA 総額
出典
2025年
1兆0,300億ペソ
DBM
2026年
1兆1,900億ペソ (前年比 +15% )。地方予算メモ第92B号で確定
DBM/BusinessMirror 2025年12月29日
項目
内容
実効配分率
2025年の約32%から2026年に約35%へ上昇 (DOF/LCP試算)。理由=TRAIN法およびユニバーサルヘルスケア法の罪科税(sin tax)目的税化の期限切れ
注 40%との差
憲法上の40%と実効35%の差は控除項目による 。レクト財務長官によれば「目的税化された全項目、特別目的基金、BARMM向けなどの特別配分」が除外される
2026年3月の動き
2026年3月3日、Mandanas副知事とフィリピン市議会議員連盟が最高裁に、NTAの自動交付を命じるよう申立て 。「NTAをGAA(一般歳出法)に計上すること自体が不要であり、交付は純粋に事務的行為であるべき」と主張
15-3. 移譲の実務 ── 期限が2度延びている
命令
内容
大統領令138号(EO 138, s. 2021/2021年6月1日)
Mandanas判決を受け、RA 7160第17条の機能を2024会計年度末までに完全移譲 。省庁は段階的に縮小・廃止。移譲移行計画(DTP) の策定、成長公平基金(Growth Equity Fund) の創設、移譲委員会(ComDev)の設置
大統領令103号(EO 103, s. 2025/2025年11月官報公示)
移行期間を延長 。市は2027会計年度まで、州と町は2028会計年度まで に完全移譲。第4・5級所得階層および貧困率の高い自治体、地理的に隔絶した自治体を優先支援 。全省庁に所管・機能の戦略的見直しを義務づけ
この2度の延長が意味すること :Mandanas判決で自治体の財源は劇的に増えたが、受け皿となる自治体の実施能力が追いついていない 。事業を計画する際、「その許認可・サービスは国の出先か自治体か」が2026〜2028年にかけて動き続ける 。注 古い所管一覧に頼らないこと。
15-4. 所得階層(RA 11964/2023年)
項目
内容
法律
RA 11964 — Automatic Income Classification of Local Government Units Act (2023年10月26日署名)
内容
州・市・町を平均年間経常収入にもとづき5階層 に自動分類。基準は直前3会計年度の平均 。3年ごとに再分類
町の基準例
1級=2億ペソ以上/2級=1.6億〜2億/3級=1.3億〜1.6億/4級=0.9億〜1.3億/5級=0.9億未満
用途
交付金・補助金の算定、新LGU創設要件、州議会・町議会の議員定数 、家事労働者の最低賃金、農地転用可能面積の上限、給与標準化法の適用
16. PSGC コードの体系
PSGC(Philippine Standard Geographic Code/フィリピン標準地理コード) は、PSAが管理する行政区域の標準コード。住所データベース、統計、政府調達、KYC実務のすべての基礎 になる。
16-1. 構造
形式
桁構成
説明
現行10桁
RR + PPP + MM + BBB
地方2桁 + 州(またはHUC/ICC・首都圏の区)3桁 + 市町2桁 + バランガイ3桁
旧9桁(correspondence code)
RR + PP + MM + BBB
地方2+州2+市町2+バランガイ3。州の桁が2→3に拡張されたのが主な違い
16-2. 実例
コード
対象
0100000000
Region I(イロコス地方)※下位が全て0
0102800000
イロコス・ノルテ州
0200900000
バタネス州
0906600000
スールー州(2025年に地方コードを19→09へ変更)
1380100168
首都圏カロオカン市 バランガイ168
1381100168
首都圏パサイ市 バランガイ168
16-3. 実務上の注意
注意点
内容
階層が内包される
バランガイの10桁コードだけ保存すれば、市町・州・地方まで復元できる 。DB設計上これが最重要
HUC/ICCの扱い
HUCとICCは「疑似州」として州レベルに置かれる 。したがってHUC内のバランガイにも「州」の値が入る
州が無いケース
首都圏のパテロス町、イサベラ市(バシラン)、BARMMの特別地理区域 などは州の値が NA になる
コードは変わる
PSAは四半期ごとにPSGCを更新 。最新版は「2026年6月30日現在」(2026年7月13日公表) 。前版は「2026年3月31日現在」
更新内容の例
・2026年Q1(4月13日公表)=バランガイ2件の統合(最高裁が1998年の住民投票による San Rafael の廃止を有効と判断、Dacanlao に統合)+名称訂正 ・2026年Q2(7月13日公表)=RA 11814 の住民投票(2026年4月11日)批准により、ダバオ・デル・ノルテ州サンイシドロ町が「サワタ町(Sawata)」に改称 、バランガイSawataは「Poblacion」に改称
訂正主体
省庁間の地理コード技術作業部会(TWGGC)
注 PSGCコードを社内マスタに焼き込むと、四半期ごとにずれる。 更新ルーチンを前提に設計すること。
注 PSAの公式サイト(psa.gov.ph/classification/psgc)は外部からの自動取得を拒否する場合がある 。ダウンロードはブラウザ経由で行うのが確実。
17. 人口 ── 2024年センサスが最新の確定値
項目
数値
備考
総人口(確定値)
112,729,484人
2024年人口センサス(POPCEN) 、基準日2024年7月1日。2025年7月11日付の大統領布告973号(Proclamation No. 973) で公式化。(2026-08-26 出典衛生工程で再訂正:2026-08-25 に「7月17日」へ書き換えたのは誤りで、原文の日付は7月11日。旧記載の「7月11日」が正しかった。) LawPhil 収録の布告原文は末尾に "this 11th day of July, in the year of Our Lord, Two Thousand and Twenty-Five" と記し、大統領府長官 Lucas P. Bersamin が大統領の権限により署名 している。根拠法は RA 10625(2013年フィリピン統計法)および EO 87, s. 2025。出典:LawPhil proc_973_2025.html 原文 /大統領府PCO「PBBM declares 112.7M Philippine population count as official」/PIA 同題
前回
109,035,343人(約1億904万人)
2020年人口住宅センサス
増加
+369万人(4年間)
年平均人口増加率
0.80% (2020→2024)
注 2015→2020 の 1.63%から半減 。PSAは出生率低下、コロナ禍の死亡増、移動の停滞を要因に挙げる
世帯人口
112,330,000人
施設人口
402,483人(0.4%)
2026年の推計
1億1,400万人前後
注 推計値であって確定値ではない 。出典を明示すること
地方別の上位・下位(2024年センサス)
地方
人口
1位
カラバルソン(IV-A)
16,933,234
2位
首都圏(NCR)
14,001,751
3位
中部ルソン(III)
12,989,074
最下位
コルディリェラ(CAR)
1,808,985
島嶼群別(2024年センサス)
島嶼群
2024年
割合
(参考)2020年
ルソン
64,301,558
57.04%
62,196,942
ミンダナオ
27,384,138
24.29%
26,252,442
ビサヤ
21,033,659
18.66%
20,583,861
(2026-08-25 相互照合で修正。初稿は2020年センサス値のみを掲げ、「2024年センサスによる島嶼群別の公式再集計は確認できていない」と注記していたが、これは誤り だった。3つの島嶼群は18地方を過不足なく分割しているため(ルソン8+ビサヤ4+ミンダナオ6=18/本稿§3)、§9-2の地方別2024年人口を足し上げれば島嶼群別の2024年値が確定する 。実際「ビサヤ諸島」資料は§1で既に「2024年人口 約2,103万人」を採用しており、本稿だけが2020年値を残していた。 出典(2026-08-26 の出典衛生工程で差し替え):本資料§9-2の地方別2024年人口の足し上げ=本資料内計算 。地方別内訳の裏づけは citypopulation.de(PSA由来)。注 PSAの島嶼群別公表値そのものは psa.gov.ph が403のため一次資料未到達(2026-08-26時点) )
注 3群の合計 112,719,355 は全国確定値 112,729,484 と約1万人ずれる。 島嶼群への帰属が地方境界と一致しない小島(ロンブロン・マスバテ等の扱い)による差であり、「島嶼群別の合計=全国人口」として使わないこと。
注 初稿にあった「ミンダナオ1.79%>ルソン1.68%」という増加率比較は2015→2020年の値 であり、2020→2024年で全国が0.80%に減速した以上、そのまま使うべきではない。2020→2024年の伸びはルソン+3.38%/ミンダナオ+4.31%/ビサヤ+2.19% で、注 「人口の重心が南へ動いている」という表現はミンダナオ内でもBARMM(年3.43%)に偏っており (「ミンダナオ地方」資料§3)、島嶼群単位の粗い比較で語らないこと。
18. 知らないと間違える点 ── まとめ
#
よくある誤り
正しい理解
1
島の数は7,107
7,641 (NAMRIA 2016年)。7,107は旧値
2
地方は17
18 (2024年6月、RA 12000でNIR新設)
3
スールー州はBARMM
Region IX (2024年最高裁確定+2025年7月30日 EO 91)
4
Region IV-B=ミマロパ
RA 10879(2016年)で「ミマロパ地方/南西タガログ地方」に改称 、"IV-B" は廃止(実務では併用)
5
市はどれも州の一部
HUC 33市+ICC 5市=38市は州から独立 。州知事の管轄外
6
「IRA」で通じる
2022年以降は NTA (Mandanas-Garcia判決による)
7
移譲は2024年に完了
EO 103(2025年)で市は2027年度、州・町は2028年度まで延長
8
人口は1億900万人
2024年センサスで1億1,272万9,484人 (2025年7月公式化)
9
タギッグ市が急成長
+47.5%は境界変更(マカティのEMBOバランガイ移管) であって自然増ではない
10
マニラ=首都=最大都市
首都はマニラ市、最大はケソン市 。「マニラ」は「マニラ市」と「首都圏17自治体」の両義
11
フィリピンの乾季は1〜4月
気候は4類型 。Type II・IVの地域に乾季は無い
12
ウォレス線の東=フィリピン
パラワンはスンダ陸棚上 で線の西側。生物相が他島と根本的に異なる
13
バランガイは単なる町内会
LGUであり、証明書発行と裁判前置の調停権限(Katarungang Pambarangay)を持つ
14
HUCは34市
注 PSAは33市 (2024年6月基準)。34/4という数え方も流通しており、出典と基準日を必ず添える
15
PSGCコードは固定
四半期ごとに更新 。最新は2026年6月30日現在版
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